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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(27)

 今では信じられない話しかも知れないが、2000年代初頭の頃は結構若い人間もパチ屋にやって来る事が多かったのである。

 しかも、当時は消費者金融の金利もかなり高く……多くの若人が借金返済に苦労すると言う残念な時代でもあった。

 まぁ、現代でもリポ払いで酷い目に遭ってる人がいるとは思うけど。

 ………。

 閑話休題。

 高校時代の悪友にして、なんだかんだでセピア色の三年間を共に歩んだ四本高尚と一緒にパチ屋へとやって来ていた雄太は、後に四号機の黄金時代を支える大花火の前身に当たる花火で三連花火を打ち上げてヒャッハーしていた。

 ちなみにこの時の雄太は22歳。

 普通にパチ屋で遊べる年齢だったりもする。

 だからと言うのも変な話しなのだが、

「来たぁぁっ! 来たぜ、ビッグ! 投資2000円! もう俺、これで帰っても良いかも!」

 無駄にはしゃぐ雄太と、

「はぁ? 馬鹿じゃねーの? たかが1ビック来ただけで帰るとか? これからだろ? せめて三連かまして100ぐらいは回せよ? 常識だろ!」

 少し小馬鹿にする感じで言う悪友の姿があった。

 多少やかましいのはご愛敬である。

 当時はそれなりに客入りの良いホールが多かった為、多少声を荒げても問題はなかった。

 周囲の音がやかましいからだ。

 はてさて。

 そろそろ雄太の話しをしよう。

 里奈と別れた雄太は、まず近所にある漫画喫茶で一泊する。

 この当時は「ネカフェ」と言うより「漫喫」と言う愛称の方が一般的だった。

 ネットがなかった訳ではないし、実際に今のネカフェと同じ内容になっていたが、主目的がネットよりも漫画である割合が高かったからだ。

 ビジネスホテルで一泊するよりもリーズナブルで、ドリンクも付いて来る為、結果的にここで一泊と相成った。

 翌日、雄太は通っている大学へと向かい、休学届を提出……取り敢えず向こう一年の休学と言う形を取った。

 程なくして京浜東北線から東北本線に乗り……鈍行列車の旅をする。

 新幹線は高かったのだ!

 最初は夜行バスにしようと考えたのだが、手元の時間は午前十時を少し過ぎた所。

 余りにも時間があり過ぎた。

 そこで、特急料金をケチって通常の列車で里帰りをしようと試みた。

 金はないけど時間はある!

 コンビニのバイトも辞めたし、七篠子供ピアノ教室のバイトも……まぁ、電話で千春さんに「すいません、里奈と別れたんでバイト辞めます」って言ったので大丈夫だろう、多分! と言う事にして置いた。

 正直、里奈の叔母でもある千春と面と向かって会話するのが微妙に気まずかった雄太は、電話だけで辞める事を伝えるだけにして置いた。

 途中、千春が「冗談は顔だけにしときなさいって! あはははははっ!」と高笑いしている声が、携帯越しからデッカく響いて来たけど、聞かなかった事にして置いた。

 ムカつくので。

 赤羽から東北本線に乗り……乗り換えも合わせて七時間!

 新幹線なら一時間チョイで到着する地元がやたら遠かった!

 この時の雄太は思った物である。

 絶対に鈍行では帰らんっっ!

 尚、黒磯から先にあった列車のドアが手動式である事に気付かず、ずっと開くのを待っていた所、近くの優しいおじさんが開けてくれたのは余談である。

 地味に恥ずかしくて、座席で見悶えそうになったのも余談だ!

 ……まぁ、そこはともかく。

 気付けばどっぷりと日が暮れた頃にようやく地元へと戻って来た雄太は、高校時代までは麗しの我が家だった実家へと帰郷した。

 果たして、自室は見事な物置と化しており……ちゃんと自分の部屋として機能するまでに丸一日を要するとか言うアホな状態に至りつつ、翌日からハローワークへと向かった。

 足は親父殿が愛用している軽トラである。

 兼業農家であった父親は、通勤用の自家用車とは別に軽トラを持っていたりもする。

 農家には有難い一台と言えた。

 尚、母親の買出しにも一役買っている模様。

 田舎に住む者は、基本的に18歳イコール車の免許だった。

 田舎で普通車の免許を持たない者は、独り暮らしすら困窮するレベルである。

 都会では信じられない話しだろうけどねぇ。

 東京暮らしが長過ぎて、車の運転を半分程度忘れていた雄太が地味に恐々としつつも、どうにかハンドルを握ってハローワークへと向かい、程良い仕事先を詮索する。

 半年程度は実家に住み、向こうで生活する為のお金(敷金礼金と生活費)を貯めたら、再び上京して向こうでの生活をやり直そうとしていたのだ。

 ついでに、半年程度ではあるのだが地元に戻って来た事を悪友に伝えた結果、現在に至る。

 自宅からそこまで遠くもない所にあるパチ屋がそれだ。

 正直、友人の人選を間違えた気がする。

 たまになら良いのだが、これがしょっちゅうになってしまったら、貯まるお金も貯まる訳がないからだ。

 まさにたまった物ではないだろう。

 ……と、下らない駄洒落はともかく。

「お? これ2確か? 連チャン来たんじゃね?」

「ああ、当たりだな? バケだけど」

「マジ? バケかよ!……ったく、喜んで損した」

 雄太と悪友の高尚が、特有の雰囲気で和気藹々とスロを打っていた……その時。

「うぁ……マジでバケだ! チッ! これがビッグならマジで帰ってもよか……おぅわぁぁぁっっ!」

 後ろから思い切り抱きしめられた。

 スロットのリールに全神経を集中していた雄太にとって、今年最大級のサプライズだった!  

 突発的な衝撃と同時に、いきなり首元をギュゥゥゥゥゥゥッッ! っと!

「って、いきなり誰だ! アホなのかっ!」

 突発的に後ろから抱き着かれ、更に首元へと両腕を絡めて来ては力強く抱きしめて来た人物に思い切り驚きながらも、雄太は思い切りふためきながらも叫んで見せる。

 辛うじて窒息しなかった事だけが幸いだった。

 果たして、後ろから突発的に抱きしめて来た人物は……里奈だった。

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