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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(23)

「あ、そう言えばさぁ? クリスマス・プレゼントなんだけど? 雄太、何が欲しい?……ちなみにあたしは、アンタの部屋に居座る権利」

「……それはプレゼントと言えるのか?」

 暫く後、買い物を終わらせて帰路についた所で答えた里奈に、雄太が苦い顔になって返答した。

 なんともエキセントリックなプレゼントなのだが、本気で言っている事だけは分かる。

 理由は実に簡単。

 誕生日プレゼントが「恋人になる権利」だったからだ。

 ここから考慮しても、里奈が冗談で言っているとは思えない。

「良いじゃない。あたしも学校と職場が近くなるし? 月々の家賃も雄太の方が安いし? 光熱費だって安くなるしさ?」

 つまるに、一定額を里奈も負担する為、雄太的にもメリットがあると言いたい。

「何なら家計簿をあたしが付けても良いよ~?……こう見えて、あたし天才だから!」

 更に我が家の経済状態を好転させてくれる!

 自分で言ってるのはどうかと思うが、確かに里奈は色々と気転が利く上に抜け目がない!

「ま、そうなったら、雄太はお小遣い制になるけど」

「その話しは無しで!」

 雄太はソッコーで却下した。

 真面目に仕事した金は、やっぱり自由に使いたいのが学生のサガと言えた。

 結婚もしてないのに、早くもお金の自由を奪われるのは嫌だった。

 しかし里奈も引き下がらない!

「月三万! 昼食はちゃんとあたしが弁当を作る!」

「………よ、四万で」

「もっと稼げる様になってから言え」

 現実は厳しかった!

 余談だが、物価は平成九年当時の額だ。

「三万でもかなり譲歩してるからね? あたしは多分、自分のお金が一万あるかないかになるし……あ、服と化粧品は含まれてないけどね?」

 それって、実は月三万より使っているのでは?

 しれっと言葉のマジックをそれとなく披露していた里奈がいる中、

「服に関してはアンタも同じ条件だから良いでしょ? むしろ好待遇! 優しい嫁が出来て良かったねぇ~っ!」

 雄太の肩を陽気にバシバシ叩きながら答えた。

 ……かくして。

「それじゃ、あたしのクリスマス・プレゼントは「雄太と同棲する権利」って事で! よぉ~し、これでプレゼント代が浮いた! 我が家の家計に優しいプレゼント!」

 早くも三橋家の家計を預かる大蔵大臣に就任する気でいた里奈は、

「じゃ、浮いたプレゼント代でペアリングでも買おう!」

 更に婚約指輪代わりの何かまでねだって来るのだった。

「……むしろテキトーなプレゼントを買った方が安くついたかも知れない」

 微妙に哀愁漂う背中が出来上がる雄太が居る中……それでも、二人の仲は順当に深まって行った。

 

  





 春が来た。

 時は1999年(平成11年)。

 Y2K問題が騒がれた時代。

 里奈と付き合い始めて二年が過ぎた。

 厳密に言うと、彼女と出会って三度目の春を迎えていた。

 途中、少し際どい所も間々あったが、どうにか三年に進級する事が出来た雄太と、全く危な気なく四学年へと進級した里奈の二人が居る中……それは起こった。


 ピンポーン♪


 自宅の呼び鈴が鳴る。

 安さ自慢の明るい我が家と言えたボロアパートの一室には、インターホンなどと言うご丁寧な代物は設置されていない。

 少し前までは自宅の電話が備わっていたのだが……余りにも使わな過ぎた為、綺麗に梱包してハード・〇フ行きに。

 最近はADSLの為にしか使っていない。

 ダイアルアップ方式であった関係上、電話回線がないと使えないので一応は電話回線の使い道もあったりする。

 きっと光回線があったのなら、電話回線はソッコーで解約していただろう。

 その光回線も、5Gが主流になったらシェアリングだけで良くなるかもね。

 ……そこはともかく。

「? 誰だろ?」

 呼び鈴を耳にした雄太は、何気ない顔のまま玄関へと足を向けた。

 素直に誰なのか分からない。

 雄太の自宅に知人や学友が来る可能性は極めて低いからだ。

 それは、雄太の人脈が極めて狭く浅いから……と言う悲しい実情もあるのだが、それとは別に同居人が里奈である事が大きい。

 厳密に言うと同棲相手……と言うべきか。

 どちらにせよ、雄太からすれば秘匿性の高い相手だと考えていたのだ。

 理由は言うまでもないだろう。

 里奈の知名度が、とてつもないからだ。

 特にここ最近は、ちょっとしたニュースやワイドショーなんかにも顔を出している。

 つまるにお茶の間で割と良く見る顔になっていた。

 関連雑誌に至っては、もはや常連である。  

 華の音大生も佳境を迎え……いよいよ就職活動がメインとなって来た里奈は、色々なコンクールに手を出す様になっていた。

 これは就職活動の一環であると同時に、現在の家計を支える助けにもなっている。 

 多少なりとも家計の足しになる、アマチュア主体のコンサートに出る事が多かったからだ。

 実入りが良い訳ではないのだが、入場料を取る本格的なコンサートである為、多少はギャラが貰えた。

 そして、一定の知名度を得る事が出来たのなら、コンサート会場の入場者にも拍車が掛かる。

 果たして、己のコスメ用品を充実させると言う……実は切実な理由も絡んでいた里奈は、こうしてさり気なく音楽活動を活発に行っていた。


 この行動が、思わぬ事件の始まりになるとも知らずに。


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