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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(21)

 しかし、反面で思った。

 雄太は「大切な人」と言った。

 好きな人とは言ってない!

 ……いや、もう、それはこじつけだろうよ? 流石に現実見なさいよあなた? とかって言いたくなる謎の言い訳を始める里奈が居る中、

「はい……その、とっても大切な……女性です」


 女なのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!


 里奈は卒倒しそうになっていた!


 もう、号泣所の話しなんかじゃない!

 本当なら、その場から居なくなりたいレベルだ!

 しかしながら、ここで泣きながら走り去ってしまう訳には行かない。

 何故なら、雄太的におかしな人になってしまうからだ!

 仮に大切な女性が居たとして、その人への誕生日プレゼントを贈る相談をしただけなのに、いきなり泣かれて走り去ってしまったら……雄太的に里奈をどう考えるだろう。

 控えめに考えておかしな人である。

 里奈は好きな異性に対し、自分から率先しておかしな人と見られたくはなかった。

「そ、そうですか……へぇ……なるほど。三橋君も隅に置けませんねぇ」

「……あ、いや……彼女とか、そう言う人ではないんですけどね」

 必死で泣くのを我慢する里奈に対し、雄太はちょっとアセアセした顔になって声を返す。

 ここに来て雄太も自覚した。

 遠まわしに言った結果、なんちゃって告白していると言う事実に!

 しかも不特定多数過ぎる単語を選んでしまった結果、その対象が里奈である事実に、里奈本人が全く気付いていないと言う悲劇にっ!

 

 ああああ! やべー! これマジでどうすんのっ!

 大切な女の人の誕生日プレゼントを相談する……だけだと、俺が他の女友達とかに告白とかしようとしてるみたいになってるじゃないかぁぁぁっっ!


 ハッキリ言って、もう少し早く気付けよと言いたくなる。

 そして、自分なりに大ポカをかましている事に気付いた瞬間、


「八代里奈さん! あなたの欲しい物を教えてください!」


 完全に混乱状態になってしまった雄太は、自分でも馬鹿だと思えるレベルで、ドストレートな台詞を思わず口走ってしまった!


「…………………………………へ?」


 里奈は呆気に取られた。

 目は点。

 口はあっぱ口。

 きっと、今の似顔絵をイラストタッチで書けと言われたら、三分で書けそうな顔になってた。


 そこから暫く沈黙。

 沈黙は数分に及んだ。

 この数分で里奈は考える。


 大切な人がいる。

 大切な女性がいる。

 その人に誕生日プレゼントを贈りたい。

  

 大好きなアナタにとって、大切な女性……八代里奈に!


 あたしかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!


 雄太も大概だが、里奈も大概である。

 はよ気付けと言いたい。


「えぇと…………そ、そう、ですね……」

 暫くして、里奈は呼吸を整えてから口を動かした。

 そんな中、雄太は一人……内心でひたすら後悔しまくっていた。

 理由は簡素な物である。

 勢い余って告白してしまったからだ!

 直接ではないかも知れないが、遠まわしながらも確実に伝わったに違いない。

 アナタが好きです……と!

 そして、この答えは知っているのだ。

 ごめんなさいと言う返事がやって来るに違いない!

 せめて、振られるにしても「友達なら良いですよ」的な物なら良いんだけどなぁ……なんぞと、微妙に未練漲る事を女々しく考える雄太がいた。

 キングオブ凡人の雄太からすれば、彼女と友達であるだけでも十分光栄だ!

 よって、友達関係を構築する事が出来れば、バイト中少しだけ気まずくなる程度の事は甘んじて受け入れても良い!

 何より、ちゃんと告白までこぎ着けた!

 ……と、まぁ。

 こんな事をひたすらひたすら考える雄太がいる中、里奈はゆっくりと口を開いた。

 不思議と心が安定した。

 否、違う。

 ホッとした。

 今まで、ここまで安心した事はなかった。

 ここまで嬉しいと思った事もなかった。

 

 好きな人に、好きと言って貰えたのだから。


「あたしの誕生日プレゼントは……少し前借りして貰っても良いですか?」

「前借り?」

「はい、そうです。まだ一週間ぐらいありますよね? それを、ここで直ぐ下さい。いま直ぐです」

「……へ?」

 雄太は大きく面食った!

 彼女が心から欲しいと願うプレゼントが分からず、とうとう本人に聞いている雄太が、いま直ぐ用意する事が出来る訳がないからだ!

 けれど、里奈は言った。

 もう、涙はない。

 あたかも通り雨が去って間もなくに訪れる、虹が掛かった快晴を彷彿させる笑みだ。


 心から来る、満面の笑みだ。


 雄太は思う。

 ああ、そうだ。

 この笑顔だ。

 俺は、彼女にこの笑顔をして貰いたくて、必死に誕生日プレゼントを贈ろうとしていた。

 期せずして彼女は満面の笑みを心から作ってくれた。

 果たして、里奈は答えた。


「あたしの誕生日プレゼントは「あなたと付き合う権利」にして下さい」 








 気付けば今年も終わろうとしていた。

 辺りはクリスマス一色である。

「雄太ぁ! これ凄いよ~? なんか立体的に光ってる! やっぱり東京のイルミネーションって凄いねぇ~! 地元じゃ、こうは行かないよ」

 クリスマス一色ムードの商店街を軽く見まわしながら、陽気にはしゃぐ里奈がいる。

 雄太の自宅から徒歩五分程度の所にある商店街へと二人で買出しに来た時の出来事だ。

「いや、里奈の地元って愛知の方だろ? あっちもあっちで十分都会だよ。本当の田舎者だった俺に謝れ」

「何言ってんの! 名古屋とかは街中かもだけど、他はそこまでじゃないからね! 少なくても都内と比べたら…………………………ねぇ」

 それ以上言ってはいけない!

 なにはともあれ、眉間に皺を寄せた状態で田舎者のなんたるかを語る東北人と、東京に微妙な劣等感を口にする里奈の闇色チックな側面が見え隠れする中……しかし、和気藹々と買い物をしていた。

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