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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(20)

 一生に一度級の大チャンスを有効活用する為……まずは、心から喜んで貰える誕プレを用意しよう!

 そうと意気込んでは見た物の……やっぱり、最適解を見付けるには至らない雄太。

 余りにもプレゼントを見付けられず、それとなく千春に相談した時もあった。

 その答えは「プレゼント? 別にアンタからの誕プレであれば石ころだって喜ぶよ? アレは」とかなんとか、テキトースペシャルな事を言われただけで終わった。

 何所の世界に石ころ貰って、心から喜ぶ馬鹿が居るんだよ! と、胸中で悪態を吐く雄太がいる中……千春はこうとも雄太に助言した。

 それなら直接本人に聞いてみたら良いじゃないの。

 ミラクルド直球だった!

 それが出来たら一昼夜頭フル回転で身悶えてねぇぇぇぇぇんだよぉぉぉぉぉっっ!……とか、マジで思う雄太がいたのだが、千春としては大真面目だったらしく「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言うでしょう?」なんて台詞を神妙な顔付きと声音で雄太に言って来た。

 そして思ったのだ。

 確かにこれは一生モノだ!

 常日頃から「これは一生レベルの大チャンス!」なんて事を考えていた雄太は、一生の恥と言う言葉に思わず反応してしまった。

 里奈が欲しい物は里奈本人が一番良く知っている!

 知っている人が分かるのなら、率直に聞けば良いだけ。

 ここで聞かなかったら……一生後悔する!

 かくして……雄太は、この花火大会でそれとなく里奈から欲しいプレゼントを聞き出す方法を全力で考える事にするのだった。



 



 二時間後。

 花火大会も無事にフィナーレを迎え、周囲にいた観覧客もかなりまばらになって来た。

 完全に「これから帰宅します」と言う空気が辺り一面に漲っている中……里奈は心で滝の様な涙を流していた。


 何も出来なかった!


 一応、色々とアクションを起こすチャンスは点在していた。

 隣に雄太がずっと居たのだから、当然と言えば当然だ。

 だが、実際になんらかのアピールをしようとすると……どうにも口が動かない。

 身体も動かないし、頭もボーっとしてしまう!

 何より花火の音が邪魔!

 あなたは花火大会で花火を見に来たのではないのですか?……と、ツッコミを入れたくなる様な話しである。

 何にせよ自分が目標としていた二つの内の一つの欠片の塵の芥も達成する事が出来なかった里奈は、ガックリと肩を落とし……胸中でバケツ一杯分の涙を流しながらも、最寄り駅へと向かおうを足を向けた。

 雄太が一生分の気力と勇気を振り絞って声を紡いだのは、この直後だった。

「あの……良かったら、そこの公園で休んで行きませんか?」

「………え?」

 里奈はポカンとなってしまう。

 もう、今日はこれでおしまいだと思っていたからだ。

 果たして。

「……あ、その……疲れてたりしないかなぁ?……なんて……はは」

 言い訳をするにしても、もう少しクールに出来ない物かな? と言いたくなるまでにぎこちない動きで口にする雄太の申し出に、

「そうですね! 疲れてます。もう歩きたくないでござる!」

 ござるってなんだよ? とツッコミたくなる返事を(可能な限り)満面の笑みを作って答える里奈の姿があった。

 こうして、少し歩いた先にある公園のベンチに軽く座り、

「………」

「………」

 二人は沈黙した。

 内心では互いに言いたい事がある。

 雄太は誕生日プレゼント。

 里奈は二つの目標を。

 しかし、上手に切り出す事が出来ない!

 結果、ベンチに座ったまでは良かった物の……互いに隣に座って沈黙すると言う……何をやっているのかな? あなた達は? と表現したくなる謎の沈黙カップル現象が発生してしまった。

 実に気まずい。

 取り敢えず主目的は別として、何か会話しないとまずい!

 沈黙が重い!

 激烈な緊張感が、見えない重圧として自分の精神にズシッ! っと伸し掛かる!

 ヨシ! 話しを切り出そう!

「……あの!」

「……あのっ!」

 同時に声が出た。

 尚、前者が雄太で後者が里奈だ。

「…………えぇと」

 互いに声が被ってしまった事で、雄太はなんとも気まずい気持ちになって目線を明後日の方角に向けてしまう。

 そこから暫くして、苦笑交じりに声を向けた。

「何か言いたい事があるなら、八代さんからどうぞ」

「あ、いえ……三橋君からで大丈夫です。あたしのは大した事ないんで……はは」

 本当は大した事あると思っていたけど、口走る形で雄太の言葉に答える里奈がいた。

 三秒後「なんで大した事ないとか言うんだ? あたしわぁぁぁっっ!」って感じで、微妙に錯乱状態になってしまうが余談として置こう。

 何より、完全なる錯乱状態になってしまう前に、

「そ、そうですか……じゃあ……その、恥ずかしい話ではあるんですけど、ちょっとご相談したい事がありまして」

「相談ですか?」

 ちょっと気になるワードを雄太の口から耳にした事で、里奈の精神は一気に現実へと回帰していた。

 

 え? なんの相談?


 真面目に気になる。

 どんな相談をすると言うのだろう?

 生活費の相談とかだろうか?

 結構苦しいらしいし。

 あたしもちょっと大変ではあるけど、少しぐらいなら工面出来るかなぁ……?


「実は、その……大切な人のプレゼントを……ちょっと」

 

 ……は?

 大切な人?

 いや、それ誰!


「そ、そそそそ、そうですか! 大切な人がいらっしゃるんですねぇ……はは」

 苦笑交じりに言う雄太に、里奈は内心で涙目だった。

 なんなら、その場で号泣したい。

 理由は簡素な物だ。

 大切な人のプレゼントに対しての相談!

 それすなわち、好きな人がいると言う事になる。

 この時の里奈は、その大切な人が自分であると言う答えには至らなかった。

 そりゃそうだろう。

 だって、本人に直接聞くなんて、普通は思わない物。

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