そうだ! 助け合おう!(9)
御多分に漏れる事なく、ここも洞窟の一部である事は分かるのだが、岩肌が大きく異なる。
このフロア全体に言える事なのだが、岩肌は白く透き通っていた。
更に特徴的と言えたのは、床がタイルの様な物でしっかりと施工されていると言う事だ。
これまでは、岩肌の延長線上に存在した土剥き出しの通路が、お世辞にも立派とは言えない状態のまま続いていた。
お粗末と言う表現は的確ではないのかも知れないが、少なからず「立派」と言う言葉を引き出す事は到底出来ないだろう。
しかし、今ある広間は違った。
実に大掛かりな、とても立派な……驚くまでに立派な大広間だ。
広さ的に言うのなら、大広間と言うにしてもデカ過ぎる様な気もするのだが、逆に言うのならそれだけ大規模かつ絢爛豪華な佇まいと言えた。
「最下層のど真ん中に、こんな凄いのを作るなんて……これは凄いな! ハチミツ!」
リリアは周囲を見渡しながら、瞳をキラキラさせて雄太へと答えていた。
ハチミツと言うあだ名に関しては……もう、何も言うまい。
「ほう?……最初に来るのが何者かと思えば、驚く程美しいお嬢さんではないか」
声がした。
見れば、いつの間にか大広間の最奥に、玉座の様な物がいきなり出現する。
「……なぬ?」
雄太は眉をひそめた。
明らかに降ってわいたかの様な勢いで、突然それは出現したのだ。
煌びやかな玉座の出現と同時に、天井から目映いばかりの光が降り注ぐ。
気付けばそこに、キラキラ輝くシャンデリアの様な物がぶら下がっているのが分かった。
この世界には質量保存の法則がないのだろうか?
どちらにせよ、豪奢な玉座と煌びやかなシャンデリア……更には、玉座へと繋がっている真紅の絨毯が何処からともなく現れ、銀髪の青年と思われる男がその玉座に鎮座していた。
風格のある落ち着いた面持ちで、悠々と玉座に腰を据えながらも、雄太とリリアの二人へと視線を送っていた。
とても妖艶かつ、不気味な微笑みを作りながら。
「お前が岩狼王だな? そうだろう? 仰々しく玉座に座ってるんだ。違うとは言わせないぞ?」
ストレートと言うか、まんまその通り過ぎる台詞をドヤ顔で答えながら、リリアはゆっくりと玉座へと向かって行く。
「見て分からないか? この私以外、誰がこの格式ある玉座に座れると思う?」
玉座へと進むリリアを前に、青年は依然として気品ある振舞いを優雅に保ちながら声を返した。
見ると結構な男前だ。
乙女ゲーとかだと、主人公クラスのキャラまでは行かずとも、攻略対象キャラ程度にはなって居そうだ。