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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(9)






 ……と、そんなこんなで十年が経過する。

 気付けば北欧メインで旅をしてしまったが、いい加減違う国も見てみたくなったのでイタリアを経由してからチュニジア、アルジェリア方面へと向かう事に。

 つまるにアフリカの旅でもしようと考えた。

 ……以後、更に八年掛けてガーナからギニア、ナミビアから南アフリカを経由して……以下略。

 最終的にエジプト、中東のアチコチを無駄に右往左往してトルコに向かい、ギリシャの辺りで地球旅の十八年周年を迎えてしまった。

 もう行ってないのは、アメリカ大陸と東南アジア諸国……そしてオーストラリアぐらいだ。

「やっぱりヨーロッパは華やかよねぇ……雄太? そう思わない?」

「まぁ……エーゲ海を渡っただけで、かなり違う気はしてるけど……なんてか、複雑な心境になるな」

 少し年季の入ったキャンピングカーもどきのトラックからアテネの街を軽く一望しながら言う里奈に、雄太も軽い相づちを返した。

 1978年当時……まだまだ欧州とアジアとの格差は埋まっていなかった。

 特にギリシャは経済的にも好調だった。

 活気に満ちた街並みは、他国も羨むまでに富で溢れかえっていた。

 こんな状態だって言うのに、ここからそう遠くもない未来にギリシャ国債が債務超過起こして経済破綻するんだから……世の中、どうなるか分かった物じゃないね。

 そこはさて置き。

 旅の十八周年を迎えたその日。

 二人の間に、未だかつてない驚異的な事件が発生した。

「見ぃ~つぅ~けましたわよぉ~……お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 おどろおどろしい声。

 声の主は女の子だと言う事だけは分かるのだが、妙に怨嗟の感じる声音だった。

「ひぃぃぃぇえぇぇっ!」

 声の主にビビったのは里奈だった。

 郊外にある寂れたショッピングモールの駐車場をちょいと拝借する形で車を止め、そのまま一泊と言う……アフリカや中東に居た時は割と良くやっていた(駐車場ではなく、なんとなく止められそうな場所に止めていた)のだが、この日は日常から180度は異なる珍事が発生した。

「ちょっ! なんなのアンタ?……こら馬鹿亭主! 起きろ! なんか出た! デーモンっぽいのが出た! こら! 起きろぉぉぉぉぉっっ!」

 突発的にやって来た声に、里奈は遮二無二焦りながらも隣に寝ていた雄太を叩き起こしていた。

 余談だが、車内にあるベッドはセミダブルが一つのみ。

 そこそこ広いトラックベースのキャンピングカーもどきではあるが、寝るスペースはあんまり確保してなかった。

 二人で一緒に、くっ付いて寝るのが習慣化していた為、特に問題なかったのだ。

 余談だが、喧嘩した時だけ雄太は助手席で寝る羽目に。

 エコノミー症候群に掛かりそうで怖かった。

「あああああっ! 私の! 私のお兄様が! 他のなんか良く分からない女と! 一緒にぃぃぃぃっっっ!」

 しかしながら、ここ数か月は嫁と喧嘩をしておらず、なんなら仲睦まじい夫婦像をベットでひょうげ……ゲフンゲフン! まぁ、そこはともかくとして、エコノミー症候群の危機を感じる事なく生活していた雄太は、至極当然の様に里奈の間隣に半密着状態で眠っていた。

 その様子を見た瞬間、少女はムンクの様な叫び声を上げていた。

 果たして、彼女は叫んだ!

 額にデッカイ怒りマークを作って叫んだ!

「そこのアナタ! 何所の馬の骨か分かりませんがね? この私……妹である亜明を差し置いて、何を破廉恥な醜態をかましているのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 黒髪の少女……亜明は、喉がはち切れそうな勢いでがなり散らしてみせた。

 尚、亜明は亜明である。

 本編を読んでくれた人なら分かるよね?

 ……多分、分かってくれると思うので、紹介は割愛。

「知らないから! むしろアンタの方が、どこの馬の骨だよ! 妹? なら、なに? アンタは私の義妹だとでも言いたいの?」

「私がアナタの義妹?……なら、義姉とでも言いたいのですか? いやいや! そもそも人間ごときにお兄様の嫁なんか務まりませんから! 残念でしたね!」

「いや、私……元々、宇宙で生まれた意思なんだけど?」

「はぁぁぁぁぁぁっっ!」

 軽い口調で言う里奈の言葉に、亜明はこれでもかと言わんばかりに驚いていた。

 もう、眼前で見ていた里奈も軽く引いてしまう大仰さだった。

「……なんだよ里奈ぁ……もう朝か?……ふぁぁ……」

 そこで、雄太の目が覚める。

 ちなみに、現在時刻はギリシャ時間で午前3時。

 目を覚ますには、ちょいとばかり早い時間だった。

 だからと言うのも変な話なのだが、

「……まだ夜じゃないかよ? オイオイ、もしかして寝ぼけてたのかぁ?」

 雄太は生欠伸そのままに、かったるそうな口調で口を動かしてから、

「………は? 亜明?」

 ポカーンっとなってしまった。

 ハッキリ言って、驚きで開いた口が塞がらなかった。 

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