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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(5)

「確かに大した時間じゃないが……それをして、何がどうなると言うんだ? こんな、ちっぽけな銀河の外れにある小さな星に行って、どんな意味があると言うのだ?」

 新意思は、全く解せないと言わんばかりだ。

「意味はない……が、意味はあるんだよ。広い宇宙にとって、それは無意味かつ無価値でちっぽけな事に過ぎない。けれど、誰かが何かの理解を示し、何かが誰かの意思を尊重する事で、そこに価値が生まれる。意味が出来る……存在する意義も出来る」 

「意味不明過ぎるんだが?」

 更に答えた旧意思の言葉に、新意思は呆れにも似た口調で言う。

 本当に訳が分からない。

 意味はないのに……意味がある。

 これは、どんな謎かけだろう?

 すると、旧意思は答えた。

「つい最近まで……この世界を創った一部始終を見るまでは、俺もお前と似た様な思考を持っていた。違いがあるとすれば、消滅したいと考えた事はなかったと言う事だけだ。それ以外は変わらない……自分が存在している意味なんてないし、理由だってないと思えたし、それ以上の何かを考えた事すらなかった……が、だ?」

 そこまで旧意思は新意思に伝え……語気を真剣な物にする。

「今ある青い星……俺の分身が作り出した世界を見て思った。生きる理由なんてちっぽけで良いのだ……と。宇宙に関係する大きな意味とか言う大仰な考えなんて、最初から必要ない。存在している意味や意義を作るのに大層な目的なんて必要なかったんだ」

「何が言いたいんだ?」

「お前がお前である事の理由なんて、徹頭徹尾些末で良いと言う事だ」

「………」

 旧意思の言葉に、新意思は再び無言になってしまった。

「お前は、無意味かつ目的もないこの宇宙からさっさと消滅したいんだろう? それなら、目的を持てば良い。存在している意味や意義を持ちたいのなら持てば良い」

 そして、その意味や意義……生きる為の目的なんて物は、実に些末な物で構わない。

「じゃあ、お前は……私に生きる意義を教えてくれると言うのか?」

「正確には少し違う。その意義を教えるのではなく、見付ける為のきっかけを作ってやろうと言うんだ。最終的に見付けるのはお前次第であって、俺の出来る所ではない」

「……ふむ、なるほど」

 旧意思の言葉に、新意思は少し思案する。

 今の自分が空虚で無気力で、思考を半分以上停止した状態のまま久遠の世界を漂っているのは、目的がないからだ。

 思考を生み出す為の原動力がないからだ。

 それなら……その原動力が見付けられたのなら、自分はどう考えるのだろう?

 これまで、何をしても「宇宙から見れば細やかな事」と考え、そこで思考を止めていた。

 けれど旧意思は言った。

 意味はなくても、意味にはなる。

 不明瞭極まる台詞だが……つまり、意味として成すかどうかは分からないまでに些末な事でも、やった以上はなんらかの意味にはなる。

 そこに一定の理解が加われば良い。

 誰か一人でも納得できれば良い。

 否、違う。

 例え、誰彼の了承を得る事が出来なかったとしても……尚。

 自分が認めれば良い。

 そうすれば、そこに意味を見出す事が出来る。

 生きる理由が見つかる。

 極めて極端な事を述べてはいるのだが……生きる存在意義とは、それだけ単純で明快で、ちっぽけで良いのだ。

 複雑に考える必要はないし、難しく考えてしまうからこそ、目的を持つ事が出来ず、無気力になってしまうのだ。

「それなら、私は存在意義を求めよう。必要があるとは到底思えないが……しかし、興味はある。宇宙から生まれてかなり経つが、終ぞ空虚な心を埋めるだけの意思は持ち合わせていなかった」

 そうと答えた新意思は軽く周囲を見渡した。

 周囲は、遠く離れた場所ながらも……煌びやかな星々が見える。

 陽子すらも寿命を迎え、周囲にはブラックホールしかなかった自分の故郷とは大違いだ。

 物質も崩壊し、何も生まれなかった……なんなら周囲のブラックホールすらも瓦解して行くだけしかなかった、あの終焉を迎える宇宙とは違い、この世界には沢山の光が飛び交っている。

 だから思う。

 自分の知る……あの、何も生まれない、ただ壊れて行くだけの空虚な宇宙ではなく、これから沢山の何かが生まれて行くのだろう若い宇宙には、何か自分が生きる興味に繋がる物が存在している……かも知れない、と。

 こうして、新意思は旧意思に案内される形で、青い星……地球へと向かった。







「ここは何処なんだ?」

 そう答えたのは新意思だ。

 地球へと降り立った関係もあり、姿は人間の女性風味になっている。

 特に今の恰好になりたかった訳ではない。

 単純に旧意思が気紛れで新意思の姿を美しい女性の姿に変えただけだ。

 ……そう。

 それは見目麗しいと表現出来た。

 長い黒髪の乙女と表現出来る、雅やかな女性。

 凛として咲く花の如く、淑やかさが際立つ優美な姿を無言で表現していた。

 ……まぁ、色々な意味で「無言で」と言う枕言葉を必要としていたのだが。

 そこはともかく。

 少し釣り目がちながらも円らと呼べる瞳を持ち、睫毛も自然で長く……端整な鼻立ちに艶やかな頬と、その顔に非の打ち所がない。

 体躯もまた同じく……二の腕からウエスト、太ももに至る全てに置いて無駄肉がないと言うのに胸元は女性らしさを強調し、世の男達を振り向かせるだけの魅力をあらん限り誇示していた。   

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