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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(4)

「……で? お前は何処からやって来た?」

 旧意思は不思議そうな口調で尋ねた。

 旧意思からすれば、新意思は異端な存在だった。

 同じ、宇宙から生まれた意思の仲間である事だけは、なんとなく理解する事が出来るのだが……分かる事と言えばこれだけだった。

 果たして、新意思は答えた。

「ここではない宇宙……終焉を迎える宇宙から、ブラックホール経由でここに来た。不本意な事にも、だ」

 新意思の言葉に、旧意思は更に不思議そうな声を返してみせる。

「不本意? お前はお前の意思でここに来たんじゃないのか?」

「言い方と言うか、ニュアンスが悪かったな……自分の意思でここに来た訳じゃない……そう言いたい」

「つまり、誰かの力によって、強引にこの宇宙へと紛れ込んだ……そう言いたいのか?」

「簡単に言うとそうだ。私は終焉を迎える宇宙に居たままでも全く問題はなかった」

「……なるほど」

 新意思の言葉に旧意思は一定の納得をする様な形で頷きを返してみせる。

 言いたい事は分からなくもない。

 新意思は自分の生まれた宇宙で生まれ……そして終焉を迎える宇宙と一緒に消滅したかった。

 ここに意味を持たせる事は簡単な様で難しいが、単純に考えるのであれば自然の成り行きのまま消滅して行く事を望んだ……そう、解釈する事が出来る。

 そして、この解釈であれば一定の理解も納得もする事が出来たからだ。

「それなら、お前は元の世界に戻りたいか?……早々遠くない内に滅んで行く宇宙へ」

「可能ならそうしてくれ。この無意味な世界に疲れて来た所だ」

 旧意思の問いに素早く頷く新意思。

 そんな新意思に、旧意思は少し頭を捻らせた。

 程なくして、旧意思は新意思へと言う。

「どんな物であっても無意味な物はない。例えどんなにささやかな事であろうと……だ?」

「何が言いたい?」

「お前の意思は空虚だと言いたいんだ」

 キョトンとした口調の新意思に、旧意思は真面目な声を返した。

 この時、旧意思は思った。

「お前の言いたい事は分かる。この世界にある、あらゆる物に意味を持たせた所で、それが何かに繋がるのか? 何か意義のある事なのか?……答えはこうだ。そんな物はない」

「分かってるじゃないか」

 旧意思の言葉に新意思は即座に頷いた。

 実際問題、これが新意思の考えだ。

 例えば宇宙。

 この宇宙はどうして生まれた?

 誰かが、何かの目的を持って生み出したのか?

 答えはノーだ。

 様々な偶然と偶然が大きく交わり……確率的に言うのなら、限りなくゼロに近い可能性の壁を超越して生み出された、まさに偶発性の塊みたいな物だ。

 そこに必然性を持たせる事は皆無。

 仮に必然的な物があったとするのなら、一体何処にどんな必然がもたらされていると言うのだろうか?

 つまり、この宇宙とは、なんの目的もなく……理由もなく、偶然ポンと生まれただけの存在でしかなく、それ以上でも以下にもならない。

 そんなポンと出た宇宙から生み出された宇宙の意思もまた同じで、必然的に目的があって生まれた訳ではなく、限りなくゼロの……無限大にも近い希薄過ぎる偶然から生み出された偶然の集大成みたいな存在だ。

 よって、目的がある訳でもなく、ただただ宇宙を漂う事しかしない。

 故に、新意思は思う。

「存在する理由が分からない。目的がある訳でもなく、存在意義がある訳でもない。宇宙に浮いてるだけの……なんだか良くわからない謎の存在、それが私だからだ」

「まぁ、否定は出来ないな。誕生と言う概念の根底を突き詰めると、全てが偶然だ。目的はいつも後からやって来る……だが、な?」

 そう答えた所で旧意思は言葉を区切ってから少し間を開けて……再び尋ねた。

「目的がなければ生きては行けないと言うルールだってないだろう?」

「………」

 旧意思の言葉に新意思は無言だ。

 事実その通りと言える。

 そもそも、目的がないと生きて行けないのであれば、この宇宙は既に消滅しているだろう。

 生まれた目的なんてないし、生まれて幾年が過ぎたであろう現状でも尚、この宇宙が宇宙でいる為の理由も目的もないのだから。

「存在する理由がないからと言って、消滅しなければならない……なんて事もない。この宇宙は自由だ。何かに縛られる必要もない」

「……自由? それは違うな? 何故なら、私は消滅する事が出来ない。これは束縛だろう?」

「消滅したいのなら好きに消滅しろ。特に止めはしない……しないが……そうだな」

 抑揚の欠片すら感じさせない声音で言う新意思に対し、旧意思はここで少し考える。

 暫くしてから、考えが纏まったと言わんばかりの声で新意思へと答えた。

「消滅する前に、少しだけ俺に付き合え。なぁに、大した時間は取らせない……そうだな? 良い所、そこの青い星が中心の恒星を100周した程度の時間で良い。この程度時間……お前にとって些細な時間だろう?」

 言ってから、旧意思は近くにある青い星を指した。

 水と大地に育まれた惑星……地球を。

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