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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(2)




 また、長い時間が過ぎた。

 分身と二人になっていた意思は、やっぱり目的もなく宇宙を漂っていた。

 そこが何処であろうと大した意味などないのだが、気付けば辺鄙な所に来てしまった。

 どんな場所なのか?

 一言で言い表すのは難しい。

 ただ、それでも可能な限りザックリ言うのであるのなら……大きな銀河団の中に小さな銀河団があって、その中にある小さな銀河の集合体があって……更に更に集合体の中にある小さな銀河の……更に更に更に外れの方にある、なんだか良く分からない恒星がある場所だ。

 恒星は比較的若い恒星なのだろうか? 

 規模はそこまで大きくもなく、既に爆発した超新星と比較すればまだ80億年程度は持つんじゃないかと思われる。

 惑星の数は八つ程度だろうか? 彗星染みたのを含めれば九つと言った所だった。

 意思は、その惑星の三番目に降り立ち、いつもの様に世界を創る事に決めた。

 ただ、創る方法は普段とはちょっと違った。

 一緒について来た分身に創って貰おうと考えたからだ。

 普段であるのなら、分身に任せて自分は再び宇宙へと漂うと言う流れになるのだが……残念ながら、今回はその限りではない。

 寂しがり屋の分身は「お兄様が居ないと嫌だ」と嘆き、自分から離れてはくれない。

 意思に性別と言う概念はなかったし、兄と言うよりも親と言う立ち位置ではあったのだが、変わり者の寂しがり屋な分身は、何故か意思の事を兄と呼び、自分を妹と名乗った。

 いずれにせよ、自分と同じ意思を持つコピー体の様な存在な挙句、これと言って呼ばれ方に一定のこだわりがあった訳でもなかったのでヨシとする。

 でも、お父様が良かったかな。

 ……閑話休題。

 寂しがり屋の分身に世界を構築させて見たくなった意思は、暫く一緒に居てやろうと考える。

 こうしないと、分身は寂しくて一緒について来てしまうから。

 一人ぼっちになって、泣いてしまうかも知れないから。

 寂しいと言う概念について、意思も色々と考えてみた。

 結論から言うと、完全に理解するまでには至らなかった物の……なんとなく、自分なりに一定の答えが纏まった。

 一人ぼっちになりたくないと言う、衝動的な感情から来る、一定の恐怖。

 なんとも不思議な感情だ。

 一人でいるだけの事に、どんな恐怖が生まれるのだろう?

 ……終ぞ、寂しいの真意を知る事は叶わなかったが……しかしながら、解決策に繋がる一計を案じる程度の考えは生まれた。

 寂しいのなら、寂しくない状態にすれば良いのではないか?

 一人ぼっちではないのなら、寂しくはないのではないか?……と。

 そう思った意思は、分身に世界を創らせる事にした。

 こうすれば、最終的には「一人ではなくなる」と思ったのだ。

 果たして、意思は暫くの間……分身と一緒に辺鄙な銀河の外れに留まった。

 時間にして……恐らく二十数億年。

 あるいはそれ以上。

 途中、恐竜と言う巨大生物が生まれた事により、沢山の仲間達に囲まれる姿をみて「そろそろ俺は違う所に行こうか」と言ったら、分身が怒って巨大隕石を降らせて恐竜を絶滅させてしまったので、更に6500万年程度ばかり長く滞在した。

 ……メテオストライクは流石にビックリした。

    





 悠久の時を経て、とうとう知的生命体が誕生した。

 火を使い、言葉を話し、道具を使い……色々な発明がなされる。

 田畑を耕し、文明が生まれて集落が出来、町が出来……国が生まれる。

 やがて文字が発明され、紙が生まれると、文明は急速に発展して行き……たった1000年程度で星の重力を凌駕するまでの道具を生み出した。

 とんでもない進歩だ。

 数億年かけて色々やって来たと言うのに、誕生からわずか数万年程度で目まぐるしく発展し、気付けば星の至る所に何十億と言う生命体を生み出しては、好きに移動まで可能にしている。

 これは凄い。

 最終的に、世界はこんなにも華やかな物になると言うのか。

 意思は驚いた。

 今の今まで、意思は自分で世界を構築した事がない。

 ただ、気紛れで分身を星に置いては、そのまま宇宙へと旅立っていたからだ。

 ある意味、初めて世界が構築される一連の流れを自分の目で見た。

 世界と言うのは……凄いな。

 こんなにも色々な物や者が生まれるんだな。

 意思は、ここに来て寂しがり屋の分身が作った世界に興味を持った。

 思わぬハプニングが発生したのは、ここから間もなくの事であった。






 その宇宙は終焉を迎えようとしていた。

 膨張した宇宙は、逆に凝縮を初め……最終的に一つの小さな何かになろうとしていた。

 ああ、この世界は寿命を迎えるんだな。

 ……そして、自分も。

 宇宙の終焉が自分の終焉だと思った。

 特に悔いはない。

 そもそも、生まれて来た事に理由なんてなく……気付けば、宇宙を漂うだけの、なんだか良く分からない意思として存在していただけなのだから。

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