そうだ! 助け合おう!(7)
顔は可愛い系だけど、オツムは割と残念系なのかも知れない。
「よぉ~し、これで自己紹介はおしまいだな? それじゃハチミツ! 少しの間だけかも知れないけど、よろしくな!」
「よろしく?……と、言いますと?」
それと、三橋なのですが?
「この先のゲートを目指しているって言う事は、アンタも狩るんだろ? 岩狼王・ゼネト=ミギアノスを」
言ってる事がサッパリ分からないのですが!
「……えぇと」
東から昇っては西へと沈む太陽の姿を説明するかの様なナチュラルさで言ってくるリリアに色々と申してやりたい気持ちはあるのだが、きっと彼女の中では当たり前の事なんだろうから……泣いて良いですか? と言いたくなる。
しかしながら、彼女が答えた情報を元に考えれば、ダンジョンから脱出可能なゲートとやらはゼネト何某を倒さなければダメっぽい。
厳密にはその可能性が濃厚だと言うだけで、もしかしたら倒さなくても帰れる方法はあるのかも知れないけれど、話の流れ的には倒す事を前提として話が進んでいる様にしか思えなかった。
「どうしてこんな事になるんだよ……」
雄太は黄昏た。
脱サラして旅に出ようとは思っていたけど、まさか画面越しではなくリアルに巨大モンスターと戦う羽目になるとは思いもよらなかった。
「いや、待て……まだ、確実に巨大モンスターと決まった訳じゃないよな?」
「ん? 巨大だぞ? 体長五メートルはあるんじゃないのか?」
雄太の中にあった細やかな希望は三秒で潰えた。
実は独り言だったんだけど、自分に対しての質問だと思ったリリアの返答によって、かくも無残にアッサリと。
……これは完全に詰んでいる。
ゲートとか言う良く分からない所から脱出しない限り、三日以上歩き続けなければならない。
飲まず食わずの三々七拍子で、最低でも三日以上ダンジョンを彷徨う羽目になる。
当然、野垂れ死には免れない。
だからと言って、ゲートとやらに向かえば、今度はゼネト=ミギアノスとか言う大仰な名前を持っている、いかにも強そうな巨大モンスターと戦わないと行けない。
行くも地獄、戻るも地獄とは良く言った物だ。
「まぁ、大丈夫だろ? アンタは私より先にここまで来て、ゼネト・クラノスをアッサリ沈めてたし」
さぁ、またも新しい単語が飛び出て来ましたよ!
「ゼネト・クラノスって何です?」
「……オイオイ、勘弁してくれよ。アンタがさっき倒した魔物じゃないか」
どうやら、さっきの狼男はゼネト・クラノスと言う名前らしい。
続けて説明してくれたリリアの話によると「ゼネト」と言う単語には、ここの世界で言う狼に値する意味を持っているらしく、クラノスは岩を投げる強者……と言う様な意味合いがあるらしい。
それらを加味すれば、まさにそのまんまの名前と言えた。
「ゼネト・クラノスは、Aランク帯の冒険者が数人掛かりで戦って、漸く勝てるかどうかの化け物だ。別のモンスターで言うのなら、ストーンゴーレムやワイバーン辺りと同程度の強さって事になるな!」
「え? アイツって、そんなにヤバイ奴だったの!」
リリアの説明に、雄太は今更ながら顔面蒼白になっていた。
ゼネト・なんちゃら~……の様な、この世界でしか通じない名前ではピンと来ない話だが、ストーンゴーレムやワイバーンと聞けば雄太としても理解しやすい。
それらはゲームでも割と馴染みのあるモンスターだからだ。