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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(20)

「まぁ、あの程度の小童など、いつでも1フェムト秒を必要とする事なく抹殺する事が出来ます。ともかく今はお兄様とセシアさんですね。一体、どんな事になるのやら」

「お前も詳細が分からない……と?」

 リリアの問いに、亜明はゆっくりと頷きを返した。

「さっきも言いましたが……お兄様の心だけはしっかりと覗く事が出来ないのです。よって、正確には私にも分かりません……分かりませんが、確実なのは……」

 そこまで答えると、亜明はスッ……っと、軽くリリアを指差し……言った。

「あなたと言う恋人が、魂が揺れるレベルで愛情を抱くに値する相手だと言う事です」

 そうと答えた亜明は、心底嫌な顔をアリアリと作っていた。







「魂が揺れる?」

 そうと答えたのはセシアだった。

 プラムの中心市街地にある、比較的大きな公園のベンチに雄太と二人で座っていたセシアは、少し驚いた顔になって声を吐き出していた。

 この言葉に、雄太は微笑を浮かべたまま、コクリと頷いてみせる。

「おかしな話をしているのは分かってるんです……でも、この気持ちは「俺の経験上」アリだと確信してます。前にも一度ありましたが……その気持ちに従って良かったと、今でも思ってますから」

「経験上……ですか」

 雄太の言葉に、セシアは少し納得加減の声音を吐き出す。

 きっと、前に話してくれた雄太なりの恋愛話だろう。

 最終的には死別してしまった……最愛の女性の、だ。

「実は、三年付き合ってた彼女は……里奈は、俺の一目惚れでした。コンビニで店員してた俺が、客としてコーヒーを買いに来た彼女のレジを担当した時……魂が揺れました」

「それと、同じ事が起こった……そう言う事ですか?」

「恥ずかしい話が、そう言う事です。まさかこの年になって若い時と同じ様な事が起きるなんて思いませんでしたよ……はは」

 セシアの言葉に雄太は頷き、気恥ずかしさを誤魔化す様に笑った。

「なるほど……大昔にも感じた、結婚すらも考えてた恋人と同じ感覚を、リリアさんにも同等に感じたのですね」

 セシアはニッコリと答えつつ……心の中でのみ呟いた。

 これは勝てないな……と。

 どう言う理屈なのかは分からない。

 そもそも「魂が震える」と言う概念すら、どう理解して良いのか苦しむ。

 けれど、逆に言えばそれは本能すらも凌駕した、別次元の純粋な思考なのかも知れない。

 そもそも、恋情を端的に言い表せば、脳内性思考の科学反応。

 つまるに三大欲求の中から枝分かれした、本能的な物だ。

 他の生物と違って、種を残す為に視点から色々な情報を得る事が出来たり、考えたりする事が出来る分だけ、相手を選ぶ為の選別をより複雑に出来る……ただそれだけの事だ。

 最終的には他の動物と、やってる事は変わらない。

 種の存続。

 その為に生まれた過程として恋情がある。

 あってもなくても構わないのだが、あればより自分の理想に近い種が残せる。

 それだけに、一目見た瞬間……一瞬で心が奪われる事はある。

 主に男が。

 女はあんまりない。

 身体の構造上、仕方ないんだけどね。

 女性とは違い、男性はより広く複数の女性へと種を広げる事が可能なので、本能的な上で行くと男の方が積極的に一目惚れしやすい……しやすいんだけど、とりまそこは置いといて。

 この様に「心が揺れる」事はあるのだ。

 だが、魂が揺れる事はない。

 あろう筈がない。

 そもそも、魂を感じてる時点でおかしい。

 だが、おかしい事に目を瞑った上で、本当に魂が揺れたとしよう?

 仮に魂が揺れていたのであれば……根本的に生まれる前から決めていた代物ではないのか?

 恋をすると言う、純然たる後天的な物を……先天的に生み出していたのであれば、どうだろう?

 生まれる前から、既に決めていた。

 だから魂が揺れた。

 実に不可思議極まる話ではある。

 そもそも、最初から目的を持って生まれて来る人間は居ない。

 人が人として生まれて来るのに理由などないからだ。

 生まれて来て、色々な事を経験して……そして、生きる目的を持つのが一般的だ。

 最初から目的があって、生まれて来る事その物になんらかの意図や意味が存在する人間など、世界に何億と言う人間が居ても尚、一人だって居ないのだ。

 だが、もし魂が教えてくれたとすれば……そのシグナルとして魂が揺れたとするのなら。

 世にも奇妙な事に、目的を持って生まれて来たのかも知れない。

 飽くまでも「そうなのかも知れない」ではあるのだが。

「そう言うのを「運命の人」と呼ぶのかも知れませんね」

 セシアは答えた。

 うっすらと涙が出そうになった。

 参った……これは勝敗云々の問題だ。

 言ってる事が非現実過ぎて、ちょっと電波な話にすら感じてしまいかねないレベルではある……あるが、真実であればリリアから雄太の心を奪う事は不可能と述べて差し支えない。

 果たして雄太は答えた。

「そうですね。きっとこう言う相手の事を運命の人……って言うのかも知れません」

「あはは……言いきっちゃいましたか」

 少し気恥ずかしい顔をしつつ……しかし、断言した雄太に、セシアも苦笑する事しか出来なかった。

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