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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(19)

「私なりに、かなり譲歩した言い回しをしたつもりでしたが……理解しかねると来ますか……参りましたね。猿にでも分かる様に砕いた説明をしていると言うのに」

「悪かったな! 猿以下の脳味噌で!」

 顔で「やれやれ……」って感じのニュアンスを色濃く作って言う亜明を前に、リリアは苦々しい顔のまま、喧嘩腰でがなり声を上げてみせた。

 そこまで考えた所で、ふと気付く。

「そう言えば、雄太のヤツは何処に行ったんだ? さっきから顔が見えないみたいだけど……?」

「お兄様は、セシアさんと一緒に散歩です」

「……はぁ?」

 亜明の言葉を聞いて、リリアは眉を大きく釣り上げた。

「なんだよそれ! お前……お姫様と二人きりにさせるとか、お前らしくねーぞ! つか、あたし的にもナシだ!」

 言うなり立ち上がって、ホテルの廊下へと向かうリリアが居た所で、

「……待ちなさい」

 亜明に止められた。

 リリアの眉間に皺が寄る。

「なんで止めるんだよ?」

「これは大事な事だからです……あなたにとっても……いいえ、むしろ貴方のアドバンテージが広がる話です。私もあんまり本意ではないのですが」

「……どう言う事だ?」

「そうですね? お兄様はセシアへと言う筈です「恋人はもうリリアで決まっている」と」

「……っ!」

 軽く考える様な仕草を見せながら言う亜明の言葉に、リリアは思わず面食らう。

 同時に顔が真っ赤になってしまった。

 年甲斐もない話ではあるのかも知れないが、面と向かって恋人宣言されてしまうと……やっぱり赤面してしまう。

 こう言う物には、年齢制限なんて代物はないのかも知れない。

「なんでお前には分かるんだよ! そんな事が!」

「私はあなた方で言う所の邪神ですからね。人間ではありません……つまるに、人の本心を見抜く事なんて造作もない事なんですよ」

「……そ、そうなんだな」

 ニコニコ笑顔のまま答える亜明を前に、リリアは口元をヒクヒクさせながらも返答した。

 とどのつまり、相手の思考を読み取る事なんて簡単だ……と、言っている。

 普通の人間にこんな台詞を叩かれた所で、ハッタリにもならない軽口だと一蹴している所だが、相手が亜明であるのなら一笑するだけで終わる訳にも行かないだろう。

「まぁ、正確にはお兄様の心を覗く事だけは難しいんですけどね……ぼんやりと曖昧な事しか分からないと言うのが正直な所でしょうか? それでも、多少は分かるのですよ?」

「本当、お前ってなんでもアリだな」

「いいえ、違います。私は全知でもなければ全能でもありません。不可能な事は十分ありますし、限界だって存在しております。限界や不可能の範囲が、人間より少し狭いと言うだけの話です。そこまで大きく変わる訳ではありません」

「それでも人間からすれば、お前は全知全能に限りなく近い存在だよ……ったく」

 朗らかな微笑を浮かべて答える亜明に、リリアは両腕を組んで膨れ面になって答えた。

「さて、話を戻しましょう? セシアさんは無謀極まる事にもお兄様へと淡い恋情を抱きました。この私がいると言うのに愚かしくも下劣な情熱を抱いてしまいまいた」

「お前、妹だろ? 下劣だとぬかすのなら、お前の劣情をどうにかしたらどうだ?」

「失敬な! この私が抱く感情は、例え扇情的な物であろうと清廉としております! 何故ならお兄様を愛して良いのは、この私だけなのだから!」

「妹が扇情的な妄想を抱いてる時点で下劣だと言う事に気付けブラコン」

 仰々しいばかりに両腕を虚空に掲げて断言する亜明を前に、リリアは心底呆れた表情を作ってぼやきを返した。

「しかしながら、セシアはお兄様の心情をそこはかとなく知る事になります。素因はリリアがジンとか言ういけ好かない銀髪の男に拉致され、そのまま性奴隷になってしまう危機があったからです」

「性奴隷ではなかっただろう!……てか、ない、よね? もしかして可能性あった?」

 リリアの問いに、亜明は(無駄に)自信を持ってコクコクと頷いていた。

「ありがとう亜明! そこだけ心底ありがとう! そしてありがとう!」

「ふっふっふっ! そこは心から感謝して欲しいですね? あのジンとか言う男は「いっそコイツの子供を作って育てれば、リル家は世界の覇権を握る覇王にさえなれるかも知れない!」とか、大真面目に考えてましたからね? ついでに手籠めにして妊娠させれば、流石にリル家の人間になるしかないと……」

 思ってましたから!

 そうと亜明が言おうとした辺りで、

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 リリアが発狂していた。

 あまりにも精神的に考えたくないレベルでおぞましい内容だったので、思わず暴れたくなってしまった。

「なぁ? アイツ、これから殺しに行っていい? 百回殺しても足りないまでに殺意が漲って仕方ないんだが?」

「流石に殺すのは厳しいですね? リル公爵家から勘当されて社会的に抹殺する程度なら可能でしょうけど?」

「よし、それで行こう! さぁやろう! マジでやろう! アイツは絶対にロクな死に方をさせない! このあたしがさせないっ!」

 軽い提案をする感じで言った亜明の言葉に、リリアは身体から暗黒闘気を漲らせて言う。

 怒りで我を忘れている状態だった。

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