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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(17)

 これは、セシアと雄太が出会って間もないから……と言う理由もある。

 しかし、それは単なる一つの要素に過ぎない。

 一番のポイントは……やはり、雄太の気持ちだ。

 セシアは知っている。

 想っている相手が既に存在している人物へと片思いをする事が、どんなに不毛であるかを。

 いつかは逆転出来ると信じた末にあった……自分の悲恋の顛末を。

 セシアは数年やって来た。

 叶う筈もない片思いの失恋劇を。

 完全なる一人芝居に過ぎなかった空しい日々を。

 最終的には姉が成就してしまった恋愛劇の顛末……それはそれで良い。

 姉とナーザスはお似合いの二人だ。

 きっと、これからも楽しい毎日を幸せに送る事が出来るだろう。

 自分は、その姿を遠くで見る事になったとしても……それでも良いのだ。

 自分も自分で、新しい恋を見付ければ良いだけの話なのだから。

 だが、この経験が……セシアの心に新しい感情のブレーキを掛ける切っ掛けとなってしまった。

 ある意味、臆病になってしまったのかも知れない。

 けれど……でも……それでも思う。

 あの経験は大事だった。

 もし、かつての経験がなかったのなら、確実にここでもムキになってリリアに対抗したかも知れない。

 そして、リリアと不毛な恋情合戦をしたかも知れない。

 けれど、その先に見える恋模様は既に決まっていて。

 出来レースにも等しい、甚だおかしい結末が待っている。

 これは予測ではない……確実だ!

 そう……それは確実だ。

 でも……それでも……なんだろう?

 心の中が苦しい。

 切ない気持ちがセシアの中をうごめいている。

 こんなに簡単に諦めて良い物なの?

 それは違うんじゃない?

 まだ、もう少し頑張ってみようよ?

 もしかしたら、雄太が自分に気持ちが揺らぐ瞬間があるかも知れないでしょう?

 ……こんな事を考えてしまう。

 なんて優柔不断かつあきらめの悪い人間なんだろう?

 そうと自己嫌悪すら抱くセシアがいたが……反面で思う。

 これは、確たる何かを、雄太の口から聞いて居ないからだ!

 ナーザスへの想いが、完全なる悲恋と終わってしまった確定事項は、ナーザスが姉であるルフレへと告白した事が決定打となった。

 それなら雄太はどうだろう?

 一応、リリアを恋人だと言う事は間々あれど、確たる何かをセシアに見せた事があったろうか?

 セシアの視点からすれば、いつも一緒に寝食を共にしては、スマートフォン張りにべったりとくっ付いている亜明の方が、余程恋人らしく見える。

 二人で歩いている時は必ず手を繋いでいるし、食事の時は雄太の膝に収まっているし、風呂にすら平気で雄太に付いて行く始末。

 ベットも一緒に寝ていて……朝、起こしに行った時に雄太が亜明を抱きかかえる様に寝ていたのを見た時は、余りの衝撃に悲鳴を上げてしまった程だ。

 ハッキリ言って、こんな事はおしどり夫婦だってやらない。

 兄妹云々以前の問題として、もはや二人は一心同体なのではないか?……そうとさえ思えてしまうレベルだ。

 こんな調子なのだから、恋人はリリアだと言われても、やっぱり何処かピンと来ない。

 だから……セシアは思った。

 ここは、しっかりと雄太の口から聞いておくべきだ……と。

 思い、後で雄太の気持ちを聞いて置こうと考える。

 自分がリスタートを切る為の踏ん切りを付ける為に。

「よし……そうしよう」

 セシアは誰に言う訳でもなく呟いた。

 他方その頃、亜明とリリアの二人はライカと雑談めいた話を続けていた。

 見れば、結構打ち解け合っている模様である。

 余談だが、口を封じられた挙句、アンデッド紛いの奴隷と化してしまったジンは、一足先に空間転移魔法で実家へと戻って行った模様だ。

 厳密には逃げる様に去って行った感じである。 

 きっと、亜明の魔法によって絶対服従を余儀なくされたのが、精神的な打撃になってしまったのだろう。

 変なトラウマになってないと良いが。

 そこはさておき。

「……では、東側には敵意はないと言う事と、新たな不可侵条約案をショーチクプラム帝国の皇帝へと促す方向で動く様に致します。私としてもライハさんの縁を大事にして行きたいと思いますから」

「それは素晴らしい提案だ。本当に私の胸を馬鹿にする以外は優秀で素晴らしい友人だよ、亜明は」

 和やかな雰囲気のまま会話を続ける亜明とライハの二人がいた。

 そして、穏便に話がまとまっている流れを軽く見据えるリリアと雄太の姿があった。

 そんな雄太とリリアの二人は、仲良く隣同士で座っている。

 にこやかに微笑を浮かべ……落ち着いた雰囲気の中、あたかも隣にいるのが当然であるかの様に。

「………」

 セシアは無言のまま二人を見据えた。

 同時に思える。

 やっぱり、自分はこのポジションに収まってしまうのか。

 仲の良い二人から少し離れた所で見ているだけの……切ないポジションに。 

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