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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(16)

「そして、そこの平たい娘……もとい、へこみ胸のアナタは守ってくれますか? 私との口約束を?」

「一度言い直しているのにも関わらず、余計酷い事をのたまってるアンタに肯定的な事を言いたくはないけれど……肯定してあげる。さっきも言ったけど……私は本当に世界大戦の回避が目的で、それ以上の事は考えていない。目的が同じであるのなら味方にさえなろうと考えてる。信じて貰えないでしょうけど」

「いいえ、信じます」

「……え?」

 ソッコーで頷く亜明に、銀髪の少女は思わず面食らった。

 ハッキリ言って信じて貰える要素が全くない。

 なんなら、裏切る要素の方が多過ぎて困る程だった。

 しかし、亜明はきっぱりハッキリ言って来る。

「アナタの真意は「世界大戦の回避」である事は認めます。むしろ強い意志さえ感じます」

 答えた亜明は、そこでやんわりと微笑んだ。

「その上で、お兄様も世界大戦の回避を望むでしょう。そして、お兄様が望む物は私も望む物……目的は同じです」

 そこまで答えた亜明は、柔和に笑った状態のまま、ゆっくりと右手を銀髪の少女へと向けた。

「目的が同じであれば味方になってくれるのでしょう?……ならば私は所望します。あなたの良き友人である事を」

「……変わった人だね。私の胸を悪く言う事以外は気に入ったよ」

 手を向けた亜明の右上を見て、銀髪の少女もまたゆっくりと右腕を向けた。

 まもなくガッチリと握手。

 その一瞬後、リリアとセシアの二人の腕が加わり……更に遅れる形で雄太の右手がちょこんと乗った。

「世界大戦の回避か。また偉くデカい話になってるな? 気に入ったよ銀髪のお嬢ちゃん。その原因はあたしも一枚絡んでいるみたいだし、迷惑も掛けてる! 助力してやろうじゃないか」

 握手の上に腕を重ねたリリアは、快活に笑って言う。

 どうやら、リリアもまた銀髪の少女が口にした言葉を信じた模様だ。

 そして、それはセシアもまた右習え。

「東西大陸の全てを巻き込んだ戦争なんて始まったら、向こう十年は戦乱の渦が収まりそうにありません……ここ、プラムも大なり小なり戦争に巻き込まれてしまう事は間違いないでしょう……それなら私も貴女に協力を惜しみません」

 慈愛に満ちた淑やかな微笑をやんわりと作りつつ、セシアは銀髪の少女へと穏やかに答えた。

 銀髪の少女の瞳に、ひとしずくの涙がじんわりと生まれる。

「本当に信じてくれるなんて思わなかった……です」

 言い、うつむいた。

 ジンのやった事は、確実に敵に回す様な行為以外の何物でもなかったからだ。

 もっと言うのであれば、それはジンなりに模索した世界大戦の回避であった為、止めるつもりもなかった。

 結果はどうあれ、世界大戦の回避と言う大前提が覆らないのであれば、彼女は愚兄の行動に口を挟むつもりもなかったからだ。

 つまるに、リリアが奴隷になっても……彼女は至極当然の様に見捨てたのだ。

 しかし、そんな彼女の思惑があるとしても、尚。

 結果としてそうならなかった「だけ」であったとしても……尚。

 リリアは笑みまで作って協力者として名乗り出た。

 そして、それはセシアや雄太もまた同じだった。

 それが……銀髪の少女の心に強く大きく響いた。

「赤髪の英雄様……か」

 誰に言う訳でもなく呟いた。

 全く以て、物凄いお人好しだ。

 こんなお人好しで、海千山千の世を渡って行けるのか不安になってしまうまでに。

 否、そうじゃない。

 海千山千の世を愚直に渡って行けるだけの実力があるからこそ、赤髪の英雄なんて呼ばれているのだろう……そう思えた。

 故に一抹の不安を抱きつつも、それ以上の頼もしさを感じた。

「自己紹介をしてなかった……私の名前はライカ・ミナハ・リル。リル公爵家の長女で、アンデッド風味の奴隷に成り下がった愚兄の妹だ……それと、私は「口約束は守るタイプ」だと思っている。もし、破った場合は殺してくれて結構。なんなら腕輪なり首輪なりを付けてくれても構わないぞ?」

「私の名前は三橋亜明と申します。アナタを……ライカを友人として歓迎致します。その上で申しましょう? 友達に変な拘束物を取り付ける趣味なんてありません。ただ、お互いの目的としての味方以外に、お兄様に関わる恋模様の味方をして下さるのであれば、私の加護をプレゼントしたいと思うのですが、どうです?」

「は? 恋模様の味方?……ま、まぁ……良く分からないけど、私は友人の恋はなるべく応援したいと思ってはいるぞ? だって友達だもの」

 ニコニコ笑顔で答える亜明に、銀髪の少女ことライカは、少し考える様な仕草を作ってから答えた。

 この言葉に亜明の顔は「ぱぁぁぁっ!」っと明るくなる。

 直後、リリアが少しアセアセした状態のままライカの前にやって来ると、

「そ、それならあたしもアンタの友達だ! 雄太との仲を取り持ってくれたら、あたしもライカになんらかのお礼をしようと思う!」

 素早くライカへと友達アピールをして来た。

 どうやら、少しでも味方を増やしたいらしい。

 他方、セシアも同じ事をして来るのかと思いきや……違った。

 積極的に雄太へと愛情表現を向ける亜明……そして、リリアが居た所で少し躊躇してしまった。

 厳密に言うのなら、リリアの姿がセシアにとって強いブレーキになっていた。

 この時、セシアは思ってしまった。

 果たして雄太は、リリアと同程度のピンチになった時、セシアに対しても同じ様な感情を抱いてくれる物なのだろうか?……と。  

 無意識レベルではあったが、思ったのだ。

 きっと……同等またはそれ以上の感情を抱くまでには至らない……と。

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