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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(15)

「このまま行けば、赤髪の英雄様……リリアは戦争の神輿になって担がれるのは間違いなくて……いまだかつてない未曾有の世界戦争が始まってしまう」

 淡々と答えた銀髪の少女。

 そう言えば、ちゃんと名前を紹介してなかったね。

「だから、世界大戦を防ぐ為にリリアを拉致って、自分達の手駒にしようとした……と?」

 銀髪の少女に対し、ゆっくりと声を返したのは亜明だった。

 この言葉に銀髪の少女は苦笑いする。

「違うと否定したい所ではあるけど……否定は出来ないね……ただ、手駒にしようと考えていたのは私の意思じゃない……そうだなぁ?……隣で口を封じられている愚兄であれば、あるいはそう言った野望を抱いていてもおかしくなかったと思う」

「……なるほど」

 銀髪の少女の言葉に、亜明は一応の相づちを打っていた。

 亜明的には、こう思ったのだ。

「私の言葉に言い訳をするつもりはない……と言う事かしら? 赤髪の英雄様を手懐けたら、今度は自分達が世界大戦を勃発させる意思があった……と、私が言っても貴女は申し開きをしない? そうおっしゃっているのかしら?」

「………」

 亜明の言葉に銀髪の少女は無言だ。

 返答をしなかったと言うよりは、黙秘している……そんな感じだった。

 その直後、銀髪の青年……ジンが何か申し開きをしたそうな顔で声を発していたのだが、言っている言葉はちゃんとした単語になっておらず「うごこごぉっ! もごぅ!」みたいな調子で、何を言ってるのかサッパリ分からない状態だった。

 きっと、苦し紛れの言い訳を口にしたかったのだろう。

 そして、亜明にアッサリ論破されてしまったに違いない。

 だからと言うのも変な話ではあるのだが。

「きっと、アンタの事だ……色々な物が見えてるんだろう? 例えば、そう……リリアに対して空間転移魔法と催眠魔法を同時に掛けていた事なんかも……さ?」

 自分から暴露する様な形で、銀髪の少女は答えた。

 この言葉に、リリアの眉間がよじれる。

 本意ではなかった物の……しかし、同行する事に応じたのであれば、催眠魔法を発動させる必要性はない筈だった。

 催眠魔法をかけるまでもなく、ちゃんと自分の意思でジンと一緒に西側大陸へと向かうとしていたからだ。

 しかし、そんな素振りをみせるリリアにすら、それでも催眠魔法を発動させようとした。

 どうしてか?

 答えは、間もなく亜明の口から出た。

「リリアに催眠魔法を掛ければ、後は自由に出来ますからねぇ? 例えば奴隷紋をリリアに埋め込んで絶対服従させたり、あるいは同等の呪い……例えば、主の行動に少しでも反したら、その場で惨たらしく死んで行く呪いを付与するとか……ともかく、方法は幾らでもあります」

「……っ! なんて卑劣な真似を!」

 亜明の言葉を耳にし、瞬時に頭が沸騰したのは雄太だった。

 ハッキリ言って愚劣極まった。

 今回は色々と失敗に終わったが……もし、リリアが西側大陸へと同行していたのであれば、リリアはいつジンの奴隷になっていたか分からないと言う事になる。

 可能性として、そう言った事があるだろうと曖昧に危惧していた雄太ではあったが……亜明の口からしっかり言われてしまうと、危惧していた物がより鮮明に頭の中へと浮かび出てしまう。

 当然ながら、雄太の中に生み出された怒りの度合いも比例する形で爆増して行った。

「アンタら……運が良かったな? 亜明が止めてなかったら、俺は確実にアンタらを殺す手立てを真面目に考えていた所だ」

 雄太は建前を出す事なく答える。

 無意識に浮かべてしまうだろう愛想笑いすら、彼の顔から消えた。

「信じては貰えないでしょうけど「私の意思は」世界大戦の回避。愚兄が何をしようとしていたのかまでは知らないし、止めるつもりもなかったから、結果として赤髪の英雄様が愚兄の奴隷になっていた可能性は高いでしょうね?」

「……なら、そこの愚兄さんとやらには、少々お灸を据えて置く必要がありますね」

 銀髪の少女の言葉を耳にして間もなく、亜明は答えてからパチンと指を鳴らした。

 次の瞬間、ジンの右腕に白銀の腕輪が装着される。

 恐らく……否、間違いなく亜明がはめ込んだ物だ。

「目には目を歯には歯を……って所です。ついでに言うのなら、保険も兼ねて。あなたは「口約束を守るタイプ」ではないでしょう? よって、この亜明様を主とした主従関係を一方的に結びました。正直、あなたの様な下郎と関係を結ぶなんてやりたくもない事柄ではあるのですがね」

 亜明は苦い顔をしたまま口を動かしてから、ジンの右腕を指差してから再び答えた。

「その腕輪は服従の証にして、どれだけ私に従順であるかを示すバロメーターでもあります。私の意思に反する事で腕輪は酸化して腐食して行き、ボロボロになって行きます。最終的にその腕輪が破損して地面へと落ちた時……アナタの命は尽きます」

「……っ!」

 亜明の説明を耳にしたジンは顔を蒼白にした。

 完全なる奴隷宣言を受けたに等しい説明であったからだ。

「ちなみに、どうしてそうなるのか?……理屈を全部説明するのは面倒なのでザックリ言います。アナタの魂を腕輪に移しているからです。魂魄を完全に封入している為、あなたは事実上の不死となっております。首を切られようが心臓を打ち抜かれようが死ぬ事はありません……まぁ、死ぬ事はないと言うだけであって、痛いし苦しいでしょうがね?」

「………」

 更に説明を続けた亜明に、ジンは蒼白のままその場にへたり込んでしまった。

 事実上のアンデッドもどきにされてしまった我が身に、思わず卒倒寸前級のショックを受けていた。

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