表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
133/178

そうだ! これはスカウトだ!(14)

 現状……海を隔てて東西にある大陸の戦力差は極めて大きい。

 これは、考え様によっては「あってはならない事」であった。

 東西の戦力差がどちらかに傾いてしまう。

 片方が大きく有利になってしまうと言う事は、世界の覇権図が変わる事にもなりかねないからだ。

 世界の覇権図が変わる……つまり、それは世界大戦の始まりを意味する。

 かつての歴史に刻まれたであろう数々の戦争とは戦いの規模が違う……まさに最大最悪の戦いが。

 未だかつて誰も体験した事のない……最大規模の戦いが。

 ……そう。

 この世界では、まだ世界大戦が勃発した事はなかった。

 これまでは、海を隔てていたと言う事も相まって、東西大陸で激しい戦いが勃発しなかったのだ。

 しかし、世界大戦が勃発しなかった一番のポイントは互いの「実力が拮抗していた」と言う事だ。

 厳密に言うのであれば「世間一般でそうだった」と言う事だろう。

 ここは最も重要なポイントだ。

 本当は西側なり東側に、帝王と名乗れるだけの指導者や英雄がいたとしても、世俗の中に埋没してしまったのなら世界は動かない。

 つまり、世界大戦なんて絶望的に物騒な代物には発展しない。

 だが、しかし。

 ここに来て、広く世間を騒がせてしまった存在がいる。

 魔王を撃ち滅ぼし、邪神をも配下に置いてしまった冒険者……赤髪の英雄・リリアの存在だ。

 元から美人で可愛い、戦うアイドルの様な存在であったが故に、その武功は広く世界に轟いてしまった。

 また、この世界にあった東の覇権構造が微妙に変わって来ている事もまた……西側にとって不気味であった。

 少し前……ナーザス公爵によってショーチクプラム帝国の派閥が一掃され、皇帝派一強状態となった事で事実上の政権交代が行われた事により、帝国内及び周辺諸国の情勢が一新された。

 かつて暴君とさえ言われた皇帝は、変革にも等しい政策を打ち立てた事により、名君とさえ称えられる様になった。

 結論からして、東大陸はショーチクプラム帝国を中軸にして、しっかりと纏まって来た。

 まだまだ遠い未来ではあるだろうが……この調子で行けば、合衆国の様な物が誕生し、東大陸が一つとなる日が到来するかも知れない。

 実際どうなるか分からないが、可能性は十二分に出て来たと西側は考えている。

 問題は次だ。

 東側をまとめる切っ掛けとなった一連の中に……リリアも関わっていたと言う事だ。

 あくまでも秘匿性の高い部分で行われた事なので、世間一般的にリリアの名前が出て来た訳ではなかったのだが、表立って公表されなかったとしても、それなりの噂と言う物は否が応でも発生する。

 火のない所に煙は立たぬとは良く言った物で……多少は関わっていると言う部分は、冒険者協会の上層部に位置する者ならちょっと調べればスグ分かるレベルの代物だった。

 つまるに、リリアの関与を肯定する情報は、それなりに噂になる程度なら何処からとなく出現する要素が存在していたのだ。

 結果……広く世間で語られる様になってしまうのである。

 東側には、絶対的な力を持つ、最強の冒険者が存在している……と。

 全く以て面倒なのは、世俗的な情報だ。

 独り歩きする噂を無造作にまき散らすのが、世界の噂であったのだから。

 果たして。

 東西を隔てる事なく……広く世間で囁かれる様になった、独り歩きの噂が……赤髪の英雄を筆頭とした新しい時代が来ると言う物だった。

 これが酷く面倒な話と言える。

 どう面倒か?

 そう言う事にして置けば「本人が居なくても」世界の覇権が変わる可能性があるからだ。

 正確に言うと、本人が直接戦わなくても戦争が成立してしまう。

 ここが面倒な話だった。

 戦争に置いて大切な要素の中に「相手への優位性を保つ」と言う物がある。

 ここは説明するまでもない要素だろう。

 要は、こっちが有利だから勝てる!……と言う事になれば味方の戦意も上昇し、士気も大きく高まるからだ。

 よって、仮に海を挟んだ東西大陸による世界大戦が勃発した時「こっちには赤髪の英雄様がいるから西側になんぞ負けない!」って事にして置けば、これだけで東側の士気が上がり、西側は逆に恐怖を抱いて士気を下げてしまう。

 更に東側で起こった政変が赤髪の英雄様による物……って感じの噂を西側に流せば、西側の士気は殊更大きく低下してしまうだろう。

 なんでか?

 これまでは大概と言えた東帝国のふざけた政治体系は、それだけやって西帝国とドッコイであったからだ。

 つまるに、西帝国も大概だった。

 我儘な政治を勝手し放題にやりたいだけやって……これで東西の均等が取れていた訳である。

 なんとも腐り切った話だった。

 だが、この均衡は崩れつつある。

 赤髪の英雄様……リリア・ナナシノによって。  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ