そうだ! これはスカウトだ!(12)
「……え! 私も男だと思ってた!」
直後、近くにいたセシアが素で驚き、
「あ、あたしはちゃんと女の子だって、分かってたよ!……う、うん!」
リリアがそれとなくフォローめいた声を吐き出した後、
「みんな、ちょっと失礼だと思うぞ? ほら、なんて言うか……ちょっと幼児体系と言うか……顔立ちが中性的と言うか……胸とかも未発達で、シャツにジーパン姿だと男にも見える様な体躯ではあるけど、髪とか綺麗で長いし? ちゃんと見れば女の子だって分かると思うんだ!」
雄太も全力で銀髪の少女をフォローしていた。
当然、全くフォローになってなかった。
「お前ら……私の事をなんだと思ってるんだ……」
銀髪の少女はワナワナと身体を震わせ、顔を真っ赤にしながら額に巨大怒りマークを作ってみせる。
今にも暴れてしまいそうな勢いだった中……亜明が高飛車な笑みを色濃く作りながらも声を吐き出した。
「あら、失礼? お兄様ではありませんが、あなたの平坦な胸元を見ていると……つい、同性であるとは思えない魅力を感じてしまいましたの。悪意はありませんよ? ええ、他意もございません」
絶対に悪意も他意もある台詞だったけど、そら惚ける形で亜明は答えていた。
「うるさい! そもそも、そう言うアンタだって、大した物を持ってないだろ?……他の二人だって……」
銀髪の少女は、いかめしい顔のまま亜明へと叫び、更にその周囲にいたリリアとセシアの二人に話を飛び火させる形で、威勢よくがなり声を上げてみせるが……その言葉は途中で止まる。
そこまで啖呵を切った所で気付いた。
リリアとセシアの二人は、相応に女性的な体躯を保持していた事実に。
果たして、リリアは答えた。
「……こう見えて、アタシは91のDだぞ? お前の様なお子ちゃま体系と一緒にしてないでくれないか?」
「ぐはぁぁっっ!」
苦い顔になって言うリリアに、銀髪の少女は血反吐でも吐きそうな勢いで断末魔の叫びを上げていた。
「私はこう見えてEカップさ! トップは85で負けるかも知れないけど、アンダーが65だから、リリアさんよりも大きいのさ! そこは負けてない! そう! 勝ってるんだよ、雄太!」
「いや、俺に言われても!」
直後、セシアが胸を強調する形で豪語して来る。
さりげなぁ~く雄太に近付いて女性の魅力をアピールしていたけど、亜明とリリアの二人に妨害された。
「そして、最後にこの私……三橋亜明! 亜明さんのブラのサイズは……特注になりますが、55のF! トップは78センチしかありませんが、アンダーが他の二人と違って細い! 身体が筋肉で出来てるリリアみたいにアンダー70オーバーなゴリラとは違いますし、なんだかんだでアンダー65はあるだろうセシアの様なおデブとは違って、とってもスレンダー!」
亜明はさもありなんと言わんばかりに高らかと宣言していた。
余談だが、アンダー65は十分スレンダーである。
なんならモデル体型と言っても過言ではないだろう。
「ちょっと亜明! 私の何処がデブだって言うの!」
だからと言うのも変な話だが、間もなくセシアが不本意極まりないと言わんばかりに反論して来た。
「そうだそうだ! それに、バストのトップはあたしが一番だぞ! 悔しかったらトップ90を超えてみろやっ!」
直後、リリアも反論して見せるのだが、
「いや、それ……アンダーが大きいだけだし」
セシアが目をミミズにして素早く正論染みた台詞を口にし、
「私は身体が太いですと、自分から暴露してる様な物じゃないの?……悔しかったら、アンダー70を切って来るのですね?」
程なくして亜明にまで小馬鹿にされてしまう。
特に亜明の態度は強烈で、含み笑いのまま「ぷ~! くすくすっ!」って感じで、明らかな嘲笑までして来る始末。
女性にとって大事なのは、トップよりアンダーだった。
いや、まぁ……厳密には、アンダーも大事と述べた方がより正確なのかも知れないけどさぁ。
「くっ! お前ら……覚えとけよぉぉぉぉっっ!」
反論する事が出来なかったリリアが半べそ状態になって、悔し紛れに叫んでみせる。
程なくして雄太に泣きついていた。
取り敢えず、雄太は頭を撫でておいた。
閑話休題。
「55のFって事は、この三人の中で一番大きいんです、乳だけ!」
亜明は思い切りドヤ顔で銀髪の少女へと言い放つ。
しかしながら、銀髪の少女もここには物申す!
「そんな事言って……外見的には、そこまで大きくは見えないじゃないか!」
銀髪の少女は眉を大きく捩って叫んでみせた。
すると、亜明はいつになく「くわわっ!」っと強い意志を見せながら声を返した。
「それは私の胸がFだからです!……いいですか? Fって結構面倒なんですよ? 高低差約23センチの胸って言うのはですね? 高低差12.5センチ程度であるBカップの約2倍! そこらの女子中学生の約二倍ですよ! もうね? たわわに実ってるです! 恥ずかしいんですよ、これでも! 普通にしてると揺れるし、自分の身体に合わせたシャツだとパツパツだし、重いし肩こるし……他に上げるとキリがないレベルなんです!」
右手コブシをギュギュっと握り……眉を釣り上げながらも自分なりの苦悩を口にする亜明。
……なんでこんな話をしてるんだろうね。