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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(11)

「………はぁ。全く仕方ありませんね。元来ならリリアが何処に行こうと一向に構わない話しではあるのですが、きっとここで私が一肌脱がないとお兄様が死にます」

 丁重に招き入れる態度を取るジンに対し、素直に従う形で歩き出したリリアがいた所で亜明が口を開く。

 これにリリアは口をへの字にしてみせた。

「何?……アンタには関係のない話でしょう?」

「そうですよ、麗しいお嬢さん……君の様な愛狂わしい女性であるのであれば、リリアさんの御供として我がリル家にご招待するのもやぶさかでない……うぐっ!」

 直後、調子良くジンも口を開いたが……言葉は途中で止まった。

 喋っていた口が、急に動かなくなってしまったからだ。

「ぐぅっ! うぅぅぅ! うごはぼぉうっ!」

 自分の意思でしっかりと口を動かす事が出来なくなってしまったジンは、間もなく慌てふためきながらも、必死で口を動かそうとするも……ちゃんとした発音を口にする事が出来なかった。

 その直後。

「……黙れ小童」

 ジンの眼前にまでやって来た亜明が、とんでもない睨みを利かせて言う。

 一見すると小柄な少女でしかない筈の亜明が……大悪魔にも匹敵する程の殺気を放っている様に感じた。

 だからと言うのも変な話だが、そこでジンは押し黙る。

 確たる裏付けがあった訳ではないのだが……しかし、彼は感じたのだ。

 従わなければ……死ぬ、と。

 生命に関わる程の脅威がそこに存在する……と。

 木陰から、銀髪の少女が飛び出て来たのは、そこから間もなくの事だった。

「兄さん!」

 銀髪の少女は、素早くジンの前までやって来ると、彼の前に立ちはだかる様な態度を取り……頭の中で魔道式を発動しようとする。

 発動しようとしてたのは……空間転移だ。

 どうやら、木陰に隠れていたのは緊急避難が必要だった時に、いつでも逃げる準備をしていた模様だ。

 ……否、違う。

 あらかじめ用意していたのは逃げる準備だけではなかった。

 空間転移を素早く発動させつつ……催眠魔法まで発動するつもりだった。

 厳密に言うと、催眠魔法も空間転移と同時発動させていた。

 銀髪の少女が木陰から飛び出た瞬間、ジンが催眠魔法をリリアに発動。

 前触れのない不意打ちの魔法である為、催眠魔法をレジスト出来ずにリリアが意識を喪失。

 同時に、少女がリリアとジンの二人と一緒に空間転移で逃げる……と、こう言う算段だった。

 だが、しかし。

「……この程度の魔導力で、私から逃げる事が出来ると思っていたのですか? 無謀も、ここまで来ればただの滑稽にしか映りませんね?」

 魔法は一切発動しなかった。

 ジンが発動しようとしたリリアへの催眠魔法も。

 銀髪少女が発動しようとした、逃げの空間転移魔法も。

「………う、嘘でしょ?」

 銀髪少女は愕然となった。

 ちゃんと魔法は発動する筈だった。

 頭の中で魔導式を練り上げる事は出来たし、発動する手順を間違えた……なんて、イージーミスをした覚えもない。

 しかし、実際に魔法が発動する事はなかった。

 これは……一体、どう言う事だと言うのか?

「まぁ、確かに? あなた達二人の魔導力が高い事は認めます。それは、リリアの姿をちゃんと見抜けていた所からしても容易に察する事が出来ますから」

 そう答えたのは亜明だ。

 亜明はコロコロと軽やかな笑みのまま声を吐き出していた。

 実際問題、ここにいるリリアとセシアの二人には亜明の光魔法が付与されており、赤髪の英雄様の髪は青いロングヘアーの女性に見える筈だった。

 しかしジンはさも当然の様にリリアを見抜いていた。

 つまり、亜明が発動させている光魔法をしっかり見破っていた訳だ。

「この私が発動させた幻術をしっかり見抜いた事は褒めてあげましょう。人間にしては上出来です。うん、敢闘賞!」

 亜明は、答えてからうんうんと何度となく頷いてみせた……が、しかし。

「だからと言って、本気を出した私に魔導力で勝とうと思っているのなら……片腹痛い! 魔導力だけならお兄様にすら負けないのが、この三橋亜明! まさに魔導特化型と言って差し支えない存在なのがこの私、三橋亜明! 次から私の事は魔法少女アミンちゃんと呼んで下さっても結構です!」

 きっと、誰も呼びたがらないと思う。

 微妙に意味不明な言葉を口にしている亜明ではあったが……要は、ジンと銀髪少女の二人が発動していた魔法を意図的に打ち消す事なんて簡単だ……そう言いたい模様だ。

「……さて、アナタ達とは少しお話をする必要性がある模様です。そこの銀髪の男は私の精神衛生上、あまり会話をしたいとは思えない性質を持っている様ですから、変わりに銀髪の少年……あなたが私とお話なさい」

 亜明は、答えて間もなくジンの前に立ったままだった銀髪少女へと声を向ける。

 果たして銀髪少女は眉を寄せて返答する。

「……少年って、もしかして私の事か?」

「あなた以外に誰がいらっしゃると言うの?」

「良く見ろ! 私は女だ!」

 銀髪少女は憤然と叫んだ。

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