そうだ! 助け合おう!(6)
きっと、彼女の知る世界では誰でも知ってるレベルなのだろう。
なんて理不尽な話なのだろうか。
「分かりました。それじゃ、俺はそのゲートとやらを目指す事にします。距離的に結構近いですか? 出来ればコンビニに行く程度の距離だと嬉しいんですが……?」
「こんびに? なんだそれは? 美味いのか?」
そして雄太の中にある常識は、リリアにとっての非日常に値する模様だ。
やっぱり理不尽極まりない。
しかしながら、これで判然とした物がある。
やはりここは……日本なんかじゃない!
果たして、ここまで来ないと日本ではない事に気付く事が出来ないのか?……と、ツッコミを入れたくなる様な確信を果たした雄太は、リリアが答えた方向へと歩き始める。
同時に彼女も歩調を合わせる形で、雄太の真横を歩き始めた。
「案内してくれるんですか?」
「いや、違うよ。私もこっちに用事があるんでね?……って言うか、アンタだって同じなんだろ?」
「そうですか」
にこやかに答えたリリアに、雄太もやんわりと笑みを返してから相槌を打つ。
この時、雄太は思ったのだ。
「貴女も帰り道でしたか。それは奇遇だ」
「アンタって本当に変なヤツだよなぁ?……そのおかしな恰好と言い、言ってる事と言い……まるで、別の世界からやって来た異端者みたいだ」
言い得て妙だが、割と当たっていた。
特に自分の意思でこんな所へと放り込まれてしまった訳ではなかったのだが、確実に異世界の類いである事だけは間違いない。
ここまで常識が違うとなれば尚更だ。
強いて言うのなら、ゲームとかの世界に類似している為、ちゃんと説明さえ受ければ割と柔軟に対応する事が出来るかも知れない……程度だろうか?
どちらにせよ、当面の目的はこの洞窟からサッサとおさらばする事だ。
それなら、彼女が近くに居てくれるのは雄太からすれば有難い限り。
良くは分からないが、彼女はこのダンジョンのアレコレを色々と知っている。
熟知しているかまでは分からないが、確実に雄太の何倍もの知識を保持しているだろう。
幸いにして、目的の方角まで一緒であるのなら、雄太にとって渡りに船。
この調子で彼女と同行する事が出来たのなら、生きてダンジョンからの脱出をする事も、決して夢物語ではないだろう。
「そう言えば、アンタの名前は何って言うんだい?」
暫く洞窟を歩きながら談笑した所で、リリアは雄太へと尋ねてみせる。
そこに来て、雄太はまだ名乗っていない事に気付いた。
「ああ、そうでしたね? 俺の名前は三橋と申します。三橋雄太です」
「ミツバチ・ユウタ? ハチミツでも好きそうな名前だな?」
ミツバチではなくてミツバシだった。
「三橋です。それと、名前は雄太なので、そっちの方で呼んで貰っても結構ですよ?」
「そうか、分かったよハチミツ!」
何を分かったと言うのだろう?