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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(7)






「何が起こっているんだ……これは?」

 茂みの奥にある、比較的大きな木の陰にしゃがみ込み、あたかも人外を見たかの様な面持ちで、口だけを動かしている青年が一人。

 銀髪を程良く纏めた好青年風味の男性だったが……今は残念男子も甚だしい顔を、みっともなく曝け出していた。

 理由は、間もなく彼の隣にいた同じく銀髪の女性にあった。

 外見的な年齢は、恐らく二人共同じ程度だろうか?

 見る限りだと、どちらも十代後半程度に見える。

 厳密に言うのなら、男性の方は二十歳越えであっても、あるいは納得出来る程度の風格が漂っているのだが、女性の方は確実にその限りではない。

 頑張って高校生だ。

 中学生料金のある映画館だったら、その金額で中に入れる様な風貌と言えた。

「分からない……分からないけど、サーベルタイガーとレッド・ドラゴンが攻撃する事も出来ずに三枚おろし……ううん、ミンチになってる結果は分かったよ」

 外見的には中学生以外の何者でもない銀髪の少女は、顔を真っ青にしたまま隣でワナワナと身体を震わせている銀髪の青年へと声を吐き出していた。

「それは分かるんだよ……分からないのは、どうしてそうなっちまうか? だ! なんだあれは? 新手の魔法か? 魔法なのか! もしそうだとしても、魔導式を発動する仕草はあったか? 魔力を感じたか? 何もなかったじゃないか!」

 銀髪の青年は憤然と喚き散らす。

 厳密には、近くに雄太達が居た兼ね合いで声のトーンを大きく下げていた模様だったのだが。

 どうやら、この二人は雄太達から隠れてサーベルタイガーとレッドドラゴンの二体を召喚していた模様だ。

 物凄い嫌がらせをする物である。

 では? この二人は何故にタケノコ狩りをしてるだけの面々に対し、凶悪なモンスターをわざわざ召喚までして、嫌がらせをしていると言うのか?

 無駄に相対性理論もどきな謎講釈をしてしまったので、ここはズバリ言ってしまおう。

 二人は、雄太達をテストしていたのだ。

 正確に言うと、雄太達御一行様の中にいるリリアの実力を見極める為に、わざわざ隠れて凶悪なモンスターを仕向けていた。

 果たして。

「これは合格と言うべきなんだろうな」

 銀髪の青年は言う。

「合格なんてレベルじゃないよ……ジン兄さん。これは確実にウチへと来てくれないと……マジで笑えないかも……?」

 青年の言葉に、銀髪の見た目中学生で、胸元関東平野の少女は神妙な顔付きのまま相づちを打った。

「ああ、そうだなライカ。最初は流石に大袈裟だとばかり思ってたけど……俺達の国の命運を賭けて、交渉する必要性は確実にある」

 銀髪の青年は、そうと呟いてから……木陰の向こうでタケノコ狩りをしていた四人の元へと歩き出した。

 







 そろそろタケノコ狩りも良いかな? 今日は結構採れたね! やっぱり四人で来たから量も沢山だヒャッハー!……でも、四人で来たから報酬も四分割だよピエンツァ!……とか、なんとか雄太が考えていた頃、木陰の向こう側から銀髪の青年がゆっくりとこちらへと歩いて来た。

「……? 誰?」

 雄太は眉を寄せ、頭の上に大きなハテナマークを作る。

 程なくして、最後のタケノコ掘りをしていた他の面々へと顔を向ける。

「誰でしょう? 私は分かりません」

 開口一番に声を返したのは亜明。

 亜明は背景文字にも「初対面の人です」と、わざわざ文字にしなくて良い様な物までデカデカと書きながら雄太に返答していた。

「あたしも知らん。誰だ? この銀髪野郎?」

 少し遅れてリリアも声を返す。

 顔でもやっぱり不思議そうな顔になっていた。

 そうなると、セシアの知人なのだろうか?……そんな事を考えつつ、雄太はセシアへと顔を向けたのだが、当の本人は肩をすくめて「全然分かりません」って感じのジェスチャーを取るのみだった。

 ついでに口でも言っている。

「雰囲気からして、何処かの貴族の様に見えるけど……私が分かるのはこの程度だね。ただ確実なのは帝国領土の貴族じゃないよ。それなら確実に一度は会ってる筈だから」

 余談だが、セシアは一度見た顔を忘れない。

 特異体質と言うべきか? とかく記憶力は抜群に良い。

 社交性を損なわない為にも、姫として貴族達の顔を忘れない様にしているのだった。

 そこを加味するのであれば、遠い他国の貴族っぽい人。

 総体的に見て雄太が出した結論はこうだ。

「遠い貴族の人が、タケノコ狩りに来た?」

 誰に言う訳でもなく呟いてから、雄太は眉を捻った。

 きっとタケノコ狩りには来てないと思うぞ?

「失礼……僕はタケノコ狩りに来た訳ではないんだ。ちょっと、君達のパーティーにいるリリア・ナナシノさんに用事があってね」

 頓珍漢な結論を口から吐き出す雄太がいた頃、眼前まで歩み寄っていた銀髪の青年は、爽やかな笑みをゆるりと作りながらも口を開いて来た。

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