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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(3)

 今日も今日とて、のんべんだらりんとテキトーにタケノコを採ったら、妹と二人でおてて繋いでプラムの街に帰ろうと言う、怠惰の二文字が見え隠れするプランを真剣に考えていた所だ。

 まぁ、実際にはその限りではなかったのだが。

 普通に考えれば絶対に引き受ける筈もないだろう赤髪の英雄ことリリアが、自分の姿を偽装した挙句、ありもしない新人冒険者としての立場を強引に作り上げては、なんちゃって新人としてタケノコ狩りに参加した。

 これには雄太としても心情的に苦しい物がある。

 ハッキリ言って二束三文のショボいクエストを、最高ランクの冒険者が担当するのは前代未聞の珍事以外の何物でもない。

 言い換えれば、これは大手企業の敏腕エリートが、何を血迷ったのか? 自分の仕事をほっぽり出して、いきなり日雇いのバイトを始めてしまった様な物だ。

 本来振わなければならない辣腕は竹藪の筍を掘り起こすと言う、あなたがやらなくても良いでしょうが!……と、協会支部でリリアを担当するミルが怒り心頭状態で喚き散らす程度の天外風味な奇天烈現象を発生させていた。

 当然ながら雄太もリリアを説得して欲しいと言う感じの話を、ミルから小一時間程度は打診されたのだが……いかんせん当の本人であるリリアが頑として首を縦に振ってはくれなかった。

 結果的に二人で受けた筈のクエストにまで強引に参加して来たリリアは、こうして一緒にタケノコ狩りをする事と相成ったのだが……しかし、問題はこれだけではない。

 更に姫様まで色々と偽装して新人冒険者になっていた。

 用意周到な事に、偽装戸籍まで用意していたセシア姫は、名前をセシア・三橋と改名した上で冒険者組合に新規登録。

 現在は新人冒険者として、陽気にタケノコ狩りに参加している。

 こっちもこっちで、雄太からすれば大事件だった。

 改名された名前が「三橋セシア」だった時点で色々とツッコんでやりたい気持ちがあるのだが、名前は百歩譲ったとしても、王族稼業をほっぽり出して新人冒険者してるんだから、こっちの方が大問題である。

 言い換えれば、昨日まで皇族してた人が、箪笥に頭でもぶつけたのか? いきなりコンビニのバイトを始めた様な物だ。

 単刀直入に言うのなら、荒唐無稽と言う単語すらも表現として不十分なんじゃないのかと言いたくなる様な非常識さだ。

 もちろん雄太としても、こんな馬鹿みたいな事をやらせる訳には行かないと思ってはいたのだが……こちらもこちらで頑として首を縦には振ってくれず、結果として今日に至る。

 英雄と姫様の二人が、仲良くタケノコを掘り起こすと言う……何処でどんな奇跡と間違いが起こったのだろうと悩んでしまいそうな珍百景に……だ。

 果たして、必要もない気苦労を胸に秘め、無意識に嘆息する雄太がいる中……それとは別の理由で嘆息交じりに不平を顔に出す少女が一人いる。

 亜明だ。

 リリアとセシアの二人とは違い、亜明は極々普通の冒険者であり、雄太と一緒に冒険者となった正真正銘の新人だ。

 その正体は、戦略兵器の百倍は恐ろしい邪神の類いではあったのだが、広く世間にその名が轟いている訳ではないので、結果的に雄太と二人三脚で生活費を生み出す事が出来る。

 極論からして、雄太の相棒は亜明だけ……と言うのが、亜明なりの考えだった。

 そして、これは雄太も納得している。

 おおよそ血縁関係があるとは思えないが、一応は妹らしいので気兼ねする相手ではないし、いつも傍にいて困る相手でもない。

 むしろ、寝食を共にするパートナーとしては、これ以上ないまでにベストな相手とも言えた。

 食事中は自分の隣に座ったり、抱っこを求めて来る事も多々あるが……それで気分を害す事はないし、慣れると特に気にならなくなってしまう。

 それこそ小さな妹をあやしている様な感覚だ。

 自分の娘を抱っこする父親にも等しい為、異性に感じる気恥ずかしい感覚は全く生まれない。

 これと同じ要領で、一緒に寝ていても特に緊張する事もなく、起きたら抱きしめ合っていた……なんて事も珍しくない。

 どうやら亜明には抱き癖があるらしく、一人で寝ている時ですら、無意識に布団を丸めて抱きしめて寝ていたりもする。

 冬だと風邪を引いてしまいそうだ。

 ここらの関係から、起きたら抱きしめられていた事など日常茶飯事であり、かくいう今日も起きたら雄太の胸元に収まっては、可愛い寝息を規則的に吐き出していた。

 これが器用な事に、しっかりキッチリピタッ!……と、胸元に収まって来るんだから驚きだ。

 狙ってやっているのかと思いきや、実際は寝ている間に自然と無自覚でやってたりする。

 意識はなく、ノンレム睡眠状態でゆっくり静かに、ちょっとずつ身体を動かして……一時間もすればベストポジションである雄太の胸元へと吸い付く様に収まっているのだ。

 もはや一種の才能と言えるだろう。

 こんな才能なんて要らないだろうけど。

 ……閑話休題。

 最初はかなり驚いた物だが……慣れと言うのは怖い物で、最近では目覚めとセットで亜明の人肌がやって来る事が当たり前になってしまった。

 こんな感じで、文字通り四六時中一緒にいる亜明としては、セシアとリリアの存在が邪魔で邪魔で仕方ない。

 そもそも? 冒険者としての仕事をねじ込む様にして強引に二人から四人にした時点で気に食わないと言うのに、プライベートでも顔を合わせる事がある。

 ここが、亜明からすればストレスでしかなかった。

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