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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!(2)

 更に雄太との関係は、リリアの見立て上では良好だ。

「おお! これは立派な物ですねぇ! タケノコの知識は良く分かりませんが、とっても立派なタケノコです! ロードル姫!」

「そうでしょう雄太? ふふん! 任せて! このタケノコ女王のセシアが……そう、セシアさんが一肌脱げば、この程度のクエストなんて朝飯前さ! そう! ロードル姫ではなく冒険者のセシアさんが!」

 名前の呼び方と態度で、若干姫様の眉がヒクヒクしてたけど、それ以外は実に友好的な関係を既に築き上げている。

 リリアからすれば、やっぱり面白くない。

「ああ、言われて見ればそうでしたね。俺の呪いの関係でロードル姫の部分は伏せて置く必要がありましたか……いやはや感服致します姫! こんな、周囲に自分達しか居ない状況であっても尚、冒険者を演じて頂けるとは!」

「違う! それは違うよ雄太! セシアはもうセシアなんだ! そう、セシアはセシアでしかなく、セシアと言う呼び名以外は未来永劫あり得ない! 分かった? 雄太?」

「分かりました! 冒険者のロードル姫!」

「よし分かったよ雄太! 死亡届と婚姻届のどちらかを選択するんだね!」

 言うなりセシアは、頭に怒りマークを作ってから、死亡届と婚姻届を両手に握りしめていた。

「姫様! 死亡届と婚姻届の二択は、ちょっと選択の幅としておかしいですよ!……そもそも、どうして、この二択と言う結論に至ったと言うのですか!」

「ふふん、良い質問だ雄太! まず、死亡届と言う悲しい決断に至った経緯から先に述べる事としよう。これは君が私に対して愚行を犯してしまったからに他ならない……このセシア・ロードル・プラムが不快に感じた事、それその物が不敬罪! よって死罪を求刑する!」

 だから死亡届。

「あのぅ……滅茶苦茶理不尽なのは気のせいですか?」

 雄太は目がテンになってしまった。

 そもそも、冒険者をすると言ってたのに、こんな時だけ姫様に戻るのはどうかと思った。

「次に婚姻届なのだが? 君は私の事を「ロードル姫」と呼称したね?」

「はい、そうですね? 今も姫として不敬罪を俺に言い渡そうとしてましたし」

「そうだろう? そうだろう!……これは極めて由々しき問題だ……早急に改善策を講じ得るべき難問だ! そこで私は考えた!」

 言うなり、セシアは快活に笑みを浮かべながらも右手を握りしめた。

 そこから颯爽と高らかに公言する。

「あなたもロードルになれば、私をロードルの名で呼ぶ事はないと!」

「そんな理由で婚姻届を!」

「そう! つまり、これはプロポーズさ!」

「死亡届とセットのプロポーズなんて斬新過ぎませんか!」

 どこまで本気で言っているのか分からないけど、躍起になって叫びまくるセシアを前に、雄太は思い切りツッコミを入れてしまった。

 ……と、まぁ。

 なんだか良く分からない、謎の空気が微妙に出来上がっているのだが、そろそろ現況を説明して置こう。

 現在の雄太達は、新米冒険者が主に担当する納品クエストをやっている。

 内容は、プラムの街から徒歩半日程度の所にある竹藪で取れるプラム・タケノコの納品だ。

 元々はプラムの旧隣国であるバンブー国の竹が、色々な紆余曲折を踏んでプラムにも根を下ろした代物だったのだが、既に数百年程度の時間が経過している為、現在では独自の品種として定着している。

 このプラム・タケノコは、程良く寒暖差があって肥沃な大地でもあったプラムの土地とは相性が良かったらしく、プラム国内では割とポピュラーな竹だ。

 これはプラムのみならず、旧隣国のバンブーでも同じなのだが、大規模な火山プレートが存在している関係上、頻繫に地震が発生する地帯だったりもする。

 この地震に対応する生活の知恵として竹藪が普及した。

 竹は根の張り方が他の植物とは異なり、地面を固める様な根の張り方をする。

 地震が起きたら竹藪に逃げろ……なんて言う風習をおじいちゃんやおばあちゃんに聞いた人は居ないだろうか?

 竹藪は自然と地盤が固くなる為、自ずと地震に強い環境が生まれるのだ。

 ここらの関係もあり、プラムには自然の避難所として竹藪がアチコチにあったりもする。

 同時に美味しいタケノコが採れたりもした。

 今回のクエストは、プラムの街から少し離れた所にあるプラムの名産品、プラム・タケノコを採取すると言う、お使いクエストを引き受けていた。

 受注メンバーは三橋雄太(ランクF)と、三橋亜明(同F)の二名。

 二人は、自分のランクで受注可能なクエストを、とっても地味に消化する目的からプラム・タケノコの採取クエを引き受けていた。

 正直、もっと実入りの良いクエストをド派手に引き受けたい気持ちで一杯なのだが、いかんせん有名になると死んでしまう呪いが嫌でも足を引っ張ってしまう為、結局は地味で目立たない仕事を、誰の興味を持たれる事なく静かにこなして行く事しか出来なかった。

 ついでに言うのなら、例え大金を手にしたとしても、派手な暮らしなんかした日には、それだけで妙に有名になって悪目立ちする可能性もあって……それが原因で呪いが発動して死ぬ可能性だってある。

 これら諸々を加味するのであれば、結局やっぱり隠者の様な生活をじみぃぃぃぃぃぃにやるしかない。

 一国を滅ぼしてしまえるまでの能力を誇示しておきながら、実際にやってるのはタケノコ掘りと言う、なんとも悲しい元・万年平社員の雄太は……しかし、それでも楽しい冒険者ライフを送っていた。

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