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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
六章・そうだ! これはスカウトだ!
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そうだ! これはスカウトだ!


 三橋亜明は困惑していた!


 一般的に新人冒険者が担当するだろう、くっっっっっっっそどうでも良いクエストに、稀代の英雄と謳われるSランク冒険者様が同行しているばかりか、王の末子ながらも一応の王位継承権を持つお姫様がハンターナイフと皮の盾を装備して、陽気にタケノコを掘り起こしている異様な光景に。


 三橋亜明は後悔していた!


 顔を見たのも数時間前程度の見知らぬ小娘が、恋に破れて走り去った程度の些末な状況下であっても、お兄様が彼女の後を追った時点で自分も同行すべきであったと!

 ハッキリ言って想定外だった!

 知っている事なんて塵芥にも等しく、王族の姫様で偉い人なんだなぁ……と、ぼんやり曖昧に考えられる程度の間柄でしかないと言うのに、それでも好意的な何かを抱かせてしまう結末に向かうなんて全く予想して居なかったのだ。

 亜明からすれば、単なる仕事の依頼人でしかなく、徹頭徹尾興味を抱く必要性がない小娘だった。

 そんな小娘が泣いて逃げたからと言って亜明には全く関係もないし、なんらかの意思を働かせる筋合いだって1ナノもない。

 そこから雄太が彼女を心配する形で追いかけて行った模様だが、お人好しの兄が慰めに行ったのだろう……程度の事しか考えなかった。

 歯牙にもかけない相手が取るにも足らない行動を起こし、興味を持つだけ思考エネルギーの無駄と秒を必要とせずに判断出来る極めて矮小な存在に、これ以上余計な考えを張り巡らすだけ不毛……と、こんな感じの答えに辿り着いた顛末にあったのは実に浅はかであり、早計かつ愚者の選択極まった。

 そうです……そうなのですよ、ええ、旦那様。

 恋とはするものではなく、落ちる物!

 そして、落ちる時なんてのは、時間の概念をガン無視する物なんですよ、ええ! 旦那様!

 果たして、旦那様って一体誰だよ? とか言う、良く分からない謎を残しながらも亜明は途方もない悔恨の念を、暗黒オーラに変えてぐぉぐぉ言わせていた。


 リリア・ナナシノは苦悩していた!


 それはそれは……未だかつてない前人未到の謎を解き明かそうと、未曾有の苦悩に苛まれていた。

 比喩として他の物に例えていうのであれば、某・さから始まる問題児が集まった下宿先の生徒が作ったメイド風ナビゲーションシステムのCVが???になっている謎を解き明かしたい程度の苦悩がそこには存在していた。

 結論からすれば、京ア〇って素晴らしかったよね。

 本当、悲しい限りだ。

 ……閑話休題。

 どこでどんなドラマが展開したのかは、一応……マジでちょっとは聞いているんだけど、そこらを加味した上でも、どうして? なんで? どぉぉぉぉぉぉぉしたら姫とクエストしちゃってんの? いやいや、おかしいだろ? ちょっと常識を六法全書で調べてみろよ!

 果たして、常識の二文字を六法全書で調べるのは間違っているんじゃないのかな?……と言う、実に素朴な疑念を追憶のメモリーに追いやって……ん? 追憶とメモリーは同じかな? うん、ともかくそこはどうでも良い。

 さておき、リリアの観点からして、現状は異端だ。

 そして、どうして良いのかで困窮する事しか出来ない。

 平民のリリアからすれば、至極当然の行動だ。

 相手が王族だと言うのだから、どんな言葉を口にすべきかで四苦36八苦72。

 考えれば考える程、苦悩の倍々ゲームである。

 しかも、この姫様は見事な完璧超人だった。

 眉目秀麗なのは言うに及ばず、姫のクセして運動神経も抜群で、冒険者でもないのに知識もあるんだから笑えない。

 世間知らずのお姫様と言う訳ではなく、ちゃんと一般常識はそれ相応に熟知しており、光魔法によって髪と肌と瞳の色を変色させているからと言うのもあるのだが、誰彼に教え込まれた訳でもないと言うのに、実にナチュラルな形で新人冒険者をしている。

 きっと、冒険者登録をした彼女をお姫様だと思った人間は皆無だったに違いない。

 どうしても湧き出てしまう無尽蔵の気品を隠し切れてない部分こそあれど、粗野で向こう見ずな冒険者の面々にしっかりと態度を合わせている姿はまさに脱帽モノだ。

 一体、この三女はどんだけ浮世慣れしていると言うのだろうか?

 王族と言う観点からすれば、なんとも大概な姫様と言える。

 だって、今でも引き受けたクエストを達成する為に、竹藪のタケノコをスコップで掘り起こしているのだから。 

「雄太ぁ~! 大きいの出たよ~! これなんて報酬の査定に上乗せされるんじゃないかな!」

 そして、程良く大振りの……しかし、絶妙にタケノコをしていた代物をキッチリしっかり掘り返しては、ニッコリ笑顔で雄太に声を掛けているのだから。

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