そうだ! 助け合おう!(5)
パチパチパチ……。
何処からともなく拍手の音がした。
なんだろう?……他に人間が居たのか?
思い、雄太は拍手の音がする方向へと顔を向ける。
その先にいたのは、美人なおねーさんだった。
真っ白空間で会った謎の美女とは色々と毛色が違う美人ではあったが、こちらも綺麗と言う表現が十二分に出来る端整な顔立ちと言えた。
思わず雄太の頬が上気する。
いい歳こいてるのに、なんだか自分でも恥ずかしくなるまでに胸が高鳴るのが分かった。
「貴女は?」
拍手をして来た女性に、雄太は短く尋ねてみる。
外見からして外人だろうか?
赤い髪を短く纏めた妙齢の女性に見える。
実年齢は分からないが、外見に忠実であるのなら二十代前半と言った所だろうか?
「名前?……私はリリアって言うんだけど、そう言うアンタは? 見た感じだと妙ちくりんな恰好をしているみたいだけど、何処のチームに所属してる冒険者? こんな所まで来てる位なんだから、かなり有名なヤツなんだろ?」
「……へ?」
にこやかに答えて来た赤髪ショートの女性に、雄太は面食らう事しか出来なかった。
その反面で、ホッとしている所もある。
初めて言葉が通じた相手と出会えた。
どうやら、日本語でも全然大丈夫らしい。
「有名な冒険者とか分かりませんが……その、ちょっと迷子になってしまいまして……良かったら、帰り道とかを教えて貰えると嬉しいのですが」
言葉が通じるのであれば、後は色々と打開策を練る事が可能だろう。
「はぁ?……迷子? ここを何処だと思ってるんだ? 高レベルダンジョンの最下層だぞ?」
それはなんの冗談ですか?
「私だって、ここまで来るのに三日掛かってるんだぞ? 今から最上層まで戻るってなったら、この先のゲートを潜って地上に出た方が全然早いだろ?」
呆れ半分のまま口を動かして行く赤髪の女性……リリアの言う事が正しいのであれば、割と絶望的な環境下である事が良く分かった。
彼女の言う事に嘘がないとするのなら、ここは危険なダンジョンの最下層で……上から地道に降りて来ると、三日を必要とする。
つまり、玄関からお手軽に行ける様な場所ではなかった。
何より、食料も何もない状態で三日もダンジョンを彷徨うとなったら、もはや死ねと遠まわしに言われている様な物。
「どうしよう、俺マジで死ぬかも知れない……」
リリアの言葉を耳にし、雄太はその場でしゃがんで考える人のポーズを取ってから天を仰いだ。
悲壮感漂う四十過ぎの残念なオッサンを原寸大で披露していた頃、リリアは更に呆れた顔になって声を返して来た。
「私の話を聞いてなかったのかい? この先のゲートを潜った方が早い……って、言ってるじゃないか」
言うなり、リリアは洞窟の先を指さした。
「ゲート?」
「なんだい? アンタはそんな事も知らないでこんな所まで潜り込んでた訳? こんな事、駆け出しの冒険者だって知ってる常識だろう?」
至極当然を全面的に押し出して言うリリア。
どうやら、彼女の中では常識らしい。