そうだ! 世直しをしよう!(29)
はてさて、この章もようやくこれで最後となる。
なしてこんなに長くなったんだろう? いや、もうマジなトコ、二章分ぐらい書いちゃったよこんにゃろうぅぅぅ! とか思う気持ちを棚上げして本題に入ると……結論からして、レーミン公爵の元へとルフレ第二王女が嫁いだ事で、帝国と周辺国の情勢は一転した。
どう変わったのか?
まず、帝都に政変が起こった。
帝国宰相がいきなり隠居すると言い出したからだ。
ここに関して詳しく述べると、またくっっっそ長くなってしまうので、とりあえず宰相が交代した物だと思ってくれたら嬉しい。
そして、時をほぼ同じくして帝国・国防部の最高長官が謎の失踪を遂げた。
実際の所は分からないが、国境を跨いでスグの小国へと亡命した……と言う噂もあるのだが、その詳細は誰も分からず、その姿を目撃した者すら居ない。
一つ事実として分かる事は、ある日を境に忽然と姿を消してしまった事だ。
彼が姿を消す動機はなく、理由も見付からないのだが……しかし、煙の様に消えてしまった。
暗殺と言う可能性もあるにはあるのだが、彼の死体は見付かっておらず……全ては謎の失踪として全てが終わろうとしていた。
………と、まぁ。
この様な形で、帝国の中でも最高権力を誇示していた二人が突如として社会の表舞台から姿を消した事で、帝国の政治が大きな変革を迎える切っ掛けとなった。
どうしてか?
今までの帝国……もっと言うのであれば、腐りに腐った世の中を生み出した諸悪の根源こそが、この二人であったからだ。
厳密に言うのであれば、この二人を筆頭とした派閥がそうさせていた。
帝都を平定させていたのは皇帝だけではなく……色々な派閥争いがあって、様々な思惑や野望、より自分達の都合に合わせた生き方が出来る為の争いが起こっていたのだ。
帝国を牛耳る三大派閥が皇帝派と宰相派、最後に将軍派の三つだった。
この三派閥が帝国と周辺国を好き勝手に食い漁っていたのだが……その内の二つがいきなり衰退したと言う事になる。
そうなると、一気に上向きになるのが皇帝派。
二つの派閥が倒れそうな現状は、皇帝派からすればまたとない大チャンスだ。
もちろん、こんなチャンスを見逃す筈もなく、一気に三つ巴状態から一強状態へと突き進む事となる。
結果、そこまで時間を必要とせずに皇帝派が巨大な一派として君臨する事になるだが……この皇帝派によって、世の中は大きく鞍替えして行く事になるのだ。
実を言うと、この皇帝。
根はかなり真面目である。
周辺国に対して卑劣極まりない行為を取っていたのも、幼少期から帝王学と称して周囲の学者から教え込まれてしまった末にある物だった。
実際問題、これで皆が幸せになると信じていた程だ。
なんとも世間知らずな皇帝である。
しかしながら、そんな世間知らずもどうにか世知辛い……と言うか、痛烈に悲惨な周辺国及び周辺地域の実態を知る事となってしまう。
その現状を知る切っ掛けを作ったのはナーザスであった。
ナーザスと皇帝は、密かに旧知の仲だったりもする。
同時にナーザスが帝国を滅ぼさなかった理由でもあった。
ルフレ第二王女ではないが、やっぱり帝国はやり過ぎだとナーザスも思っていたし、この腐れた世の中を変えようとも思っていた。
けれど、帝都を亡ぼすにしても単純に武力で解決……と、言う訳にも行かない。
武力で解決って事は戦争になると言う事になるし、そうなると多くの戦死者が生まれる。
戦場が街であった場合、街が焼け野原になってしまう。
多くの犠牲と住処を追われ……更なる惨劇と悲劇を生み出す事だってあるだろう。
住処を追われた人間が夜盗になってしまったら、その人間によって新しい悲劇を生み出してしまうだろうし、敗残兵が街へと逃げ込んで、略奪や強盗……殺人を繰り返す可能性だってある。
善人が悪事を働かないと生きて行く事が出来ない世の中ほど悲しい社会はない。
その典型とも言える状態にしてしまうのが戦争なのだ。
戦争特需によって経済的に潤う人間が居る反面、戦火に撒かれ……追われ、生きる事で精一杯になる人間もまた、尋常ではない数になってしまう。
故に、これは武力行使ではなく会議を発足して話し合いで解決しなければならない物だと考えた。
ここで登場するのが、帝国内三派閥の一つである皇帝派だ。
さっきも述べたが、皇帝とナーザスは旧知の仲であり……ちゃんと話せば分かる唯一無二の存在でもあった。
そこでナーザスは、まず皇帝をテーブルへと引きずり出す為、周辺国家や地域の人間と相互関係を結び、強い信頼関係を築いて行った。
様々な投資や援助をする事で、互いの信頼関係を強固にして行ったのだ。
その上で、三つ巴だった二大派閥を衰退させ、事実上の一強状態にし……そして、会談の場を作ったのである。