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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
五章・そうだ! 世直しをしよう!
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そうだ! 世直しをしよう!(23)

「ナーザス! あなた、いきなり何を言い出すの! 私がそこまで予測していた?……ふん! 馬鹿馬鹿しい! セシアの様な能天気で何も考えてない、国の行く末すら「三女の私にはど~でも良いですから~?」……みたいな事を本気で言い出す怠惰の集合体みたいな愚直娘が、わざわざ私の行動を察知する為に本気で動くなんて夢にも思う物ですか!」

 直後、口火を切ったかの様にルフレが騒ぎ立てた。

 この瞬間、セシアは顔を真っ赤にし、更に怒りマークを作ってから頭上に湯気をまき散らす形で怒り捲ってたんだけど、ナーザスに抑え込まれてしまった。

 何気に口も抑えられてしまったので、何も言う事も出来ない。

「いい加減にしとけ、ルフレ……いや、違うな」

 自分の胸元で「むぅぅぅ! むぅぅぅっっっ!」とか叫びながら、半べそになってジタバタ藻掻くセシアが居る中、ナーザスは神妙な顔になって口を開き……再び声高に叫ぶ。

「いい加減、素直になれよ!」

 ナーザスの声は、プラム王城の中庭一面にこだました。

「……っ!」

 この言葉に、ルフレ王女も息を飲む。

 目を大きく見開かれ……そして、強く激しく動揺した。

 狼狽するルフレを前に、しかしナーザスは真剣な顔そのままで言葉を続けた。

「お前は自分以外の人間に気を遣い過ぎなんだよ! どうしても自分を優先出来ないんだよ!……どうして……どうして、お前は自分の事を大切に出来ないんだよ!」

「………」

「国民が……周辺国が、パイン帝都以外の国や地域の人間が苦しむのを見て、お前は女帝になろうとしたんだろ? この馬鹿げた世界を変えたかった……だけど、それってさ? 本当にお前がやりたかった事なのか? 限りなく黒に近い白……グレーな行為をしれっとやってまでして……だ? 違うだろ! 本当はこんな事、最初からやりたくなかった! でも、やるしかなかった! お前は人が苦しむのを死ぬ程嫌うからだ! 苦しむ姿を見るぐらいなら、自分が悪党と罵られた方がマシだった!」

 その結果、密売組織を作ったり、魔石を使って総督府を手玉に取った。

 汚名を被っても、悪い噂が立っても……尚、国民の幸せを優先した。

「そしてお前は、セシアの幸せを誰よりも願った! あの腐れジジイにセシアが嫁として嫁ぐ事になろうとした時、誰よりも必死で婚姻を破談にさせたかったのはお前だ! ルフレ!」

「……っ!」

 声高に叫ぶナーザスの言葉に息を飲んだのは、セシアだ。

 彼女が16歳の時……政略結婚から、気持ち悪い事この上ないジジイの嫁になる寸前だった所を、ナーザスによって助けられた事を思い出した。

 同時に……気付かされた。

 お持ち帰りされる寸前だった所を、あの手この手と言葉巧みに切り返し、どうにか王家からセシアを出す事なく済んでいた事実を。

「そして、今回の件! 女帝になる野望は本気だった……だから俺も騙されていたんだが、同時にお前はセシアの気持ちを優先した! 女帝になった時……権力が全てお前の物になった時、お前はセシアに命じる筈だった「私の右腕となって帝国の礎となれ! その見返りとしてナーザス公爵との婚姻を結ぶお膳立てをしてやろう!」……ってな!」

「………」

 ナーザスの言葉にルフレは無言だ。

 反論する気になれば、出す言葉もあったに違いないが……口が動かなかった。

 この時点でルフレは気付いたのだ。

 きっと、どんな反論を口にしても焼け石に水だ……と。

 他方のセシアは、一気に静かになってしまった。

 ここに来て、ようやく気付いたのだ。

 もし、ルフレの野望が叶った日には、その権限を使ってナーザスと結ばれるシナリオを用意してくれた。

 そして……ルフレの野望が潰えた時は……。

 今の様な暴挙に出て、全ての責任をルフレが背負う事でピリオドを打つ。

 ナーザスだけであるのなら、全力で隠蔽しようと策を練ってしまい……結局は不問と言う形になるか、曖昧な何かを適当に作り出し、そこを落としどころにしてしまう。

 しかし、セシアまで加わればどうだろう?

 確実に本気でルフレを弾劾する為にアレコレと動き出すだろう。

 キッチリ証拠となる物まで用意して、ルフレが言い逃れ出来ない状態まで追い込んで来るだろう。

 ……そう。

 全てはルフレの計算通りであったのだ。

「お前は弾劾され、失脚し……国家反逆罪で処刑される。その遺言に、お前はこう答えるつもりだった「妹を必ず幸せにして下さい」……と!」

「お姉ちゃん!」

 ここまでナーザスが叫んだ所で、セシアが叫んだ。

 ナーザスに抑え込まれていた彼女だったが、暴れるのを止めて静かになっていた辺りで、捕縛されていた両腕から解放されていた。 

 セシアの瞳に涙が溢れた。

 どうして気付けなかったのだろう?

 同時に気付いた。

 自分の事しか考えていなかった……馬鹿な自分が居たと言う事実に。

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