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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
五章・そうだ! 世直しをしよう!
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そうだ! 世直しをしよう!(16)







 しかし不思議な乗り物だ。

 こんな事を曖昧ながらもぼんやり考えていたのは雄太だ。

 実際不思議と言える。

 プラム駅から電車に揺られている訳なのだが……この電車の仕組みが良く分からない。

 少なからず分かる事は、これが「電車」ではなく「魔力列車」と言う事だろうか?

 蒸気機関で走っている模様なので、厳密には汽車と形容した方がよりベターなのだろう。

 列車の一両目に動力となる機関車があり、排出口なのだろう煙突はあるのだが、黒い煙を吐き出す訳ではなく蒸気だけを噴射していた。

 話しによると、炎系の魔法を使って熱エネルギーを生み出し、その熱量を利用して蒸気を作り上げ、蒸気の圧力で蒸気機関を動かしているらしいのだが……問題は炎をどうやって生み出しているのだろう?……と、言う事だ。

 物を燃やすには、三つの条件が必要となる。

 まず、燃焼させる為の空気……つまりは酸素。

 次に燃焼させる為に必要な温度……つまりは発火点。

 最後に物を燃やす媒体……つまりは着火剤だ。

 この三つの内、一つでも欠けると物は燃えない。

 酸素が無ければ炎は消えるし、温度が低ければ燃えないし、燃える物がなければ燃えようがない。

 ……が、この蒸気機関は燃やす物なんてないのに燃えている。

 もし、燃やす物があったのであれば、排出口からは黒い煙……つまるに一酸化炭素がモクモクと出て来る筈なのだが、出て来るのは蒸気のみだ。

 つまり、燃やす物なんかない……と、こうなる。

 でも、ちゃんと炎は轟々と燃えていて、熱量が生まれて蒸気になってるのだから……なんだろね? これ?

「本当、この世界は俺の知ってる世界とは、根本的に自然の理が違うんだな」

 一見すると大昔の自分達の世界にあった乗り物にも見えなくはないが……その実、やっぱり異質な乗り物でしかない謎の機関車に揺られる事、約十分。

 プラム駅から数えて二駅目にある、プラム王城前駅で下車した雄太達三人は、駅から出てスグの所にあるプラム城へとやって来た。

「ここがプラム城だ。どうだい? 立派だろ?」

「確かに凄い迫力だなぁ……」

 プラム城の入り口となる門までやって来た所で、軽く右手を城に向けて答えたリリアへ、雄太も素直に首を縦に振って見せた。

 洋風の立派なお城は、まるで映画の中にでも入ってしまったかの様な、実に堅牢かつ豪奢な佇まいを無言で雄太達へと見せていた。

「大きくて立派なのは認めますが、居住性には余り優れていない様に見えますねぇ? 無駄に大き過ぎて、移動するのに時間を浪費しそうです」 

 軽く見上げる感じで城を見ていた雄太の隣で、亜明が自分なりの評価を口にする。

 ……まぁ、確かに実用性はなさそうだ。

「城ってのは、攻めて来られた時の事を色々と考えて作られてるからな? 住む事だけを考慮した訳じゃないから、結果的にこうなるんだよ」

「なるほど。そう言う事ですか」

 リリアの説明に雄太は軽く頷きを返した頃、城の入り口付近から声がやって来る。

「リリアさぁ~ん! お久しぶり!」

 軽やかな声を出していたのは、艶やかなブロンドの髪を携えた見目麗しい女性だ。

「セシア王女殿下! まさか御身自らここまで御足労なさったのですか!」

 金髪の美女を見た瞬間、リリアは思い切りビビりながらも声を掛ける。

 Sランク冒険者と言えど、リリアは平民だ。

 貴族でもなければ王族でもない。

 国民平等とか、民主主義とか塵も芥もありはしないプラム国に置いて、カースト制度チックな身分制度が現在も健在である。

 これの何が怖いかと言うと……支配階級の人間は、ある程度の特権が認められている所にある。

 例を挙げるとこんな感じだ。

 平民には投票権なんてないし、居住権がない場合もあるし、理不尽な罰を受ける事すらある……と、こんな調子である。

 貴族でも上位の人間にしか国政を運営する権利がないので投票権はない。

 貴族専用の居住地に平民は住めない……居住権がないからだ。

 貴族に不満を抱いて暴力沙汰になれば10・0で貴族が裁判に勝利するし、王族に至っては不平を口にしただけで国家反逆罪に問われる事だってある。

 口喧嘩しただけで処刑になる可能性があるんだから……もう、会話するだけで神経が磨り減るったらないのだ。

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