そうだ! 世直しをしよう!(15)
そこで強硬策に出たルフレ第二王女様。
ツンデレ王女は、ナーザス公爵へと密売組織の主人がアナタである事をバラすぞと脅迫して来た。
これにはナーザスも焦る。
実を言うと、この魔石密売組織は、ルフレ第二王女に頼まれて作った物だった。
だから彼女が知らない筈もなく、共犯者のクセしていけしゃあしゃあと脅迫する事も可能だった。
……まぁ、共犯者の時点でバラせば自爆なんだけどね。
しかしながら、ナーザス公爵がこうもあからさまな犯罪組織を、単に頼まれたからと言う理由でホイホイ作るかと言えば、当然そんな訳もなく、相応の理由があったからに他ならない。
セシアの政略結婚・破談作戦にルフレ第二王女が加担してくれた見返りとして、密売組織を作る事になったからだ。
政略結婚が決まった日……即日お持ち帰りされる所を止めてくれたのがルフレ第二王女である。
エロジジイは、姫をテイクアウトして早速味見するつもりだった。
流石に可哀想と思えたのかも知れないが、そこから更にアレコレ理由を付けては、エロジジイのお持ち帰りの時間稼ぎをしてくれた。
この時間稼ぎのお陰で、セシアは傷物の中古品になる事もなく、ピカピカの新品で居られたのだ。
ナーザス公爵としては、この上無く有難い。
同時に大きな貸しを作ってしまった。
世の中タダより高い物はなく、借りた物は返さなければ何が起こるか分からないのが世の常と言う物。
結局、返せる時に返しとかないと、どんな無理難題を言って来るか分からないよ、あのツンデレ王女……と言う結論に至ったナーザス公爵は、渋々ながらも密売組織を秘密裏に作った。
裏も表も、酸いも甘いも知ってるナーザス公爵だけに、シンジケートを見付ける事は容易く……密売組織の立ち上げ自体はそこまで苦労しなかった。
……が、しかぁ~し!
まさか「結婚してくんなきゃ、密売組織の主人だって事をバラす!」とか言って来るとは思わなかった!
ナーザス公爵は蒼白である。
もうさぁ、どんだけ馬鹿なの? あのツンデレ王女……オツム残念過ぎて泣けるんですけど? って感じの気持ちで一杯だった。
これをやれば……恐らくルフレ第二王女の一人負け。
ナーザス公爵の場合、周囲の人間が死ぬ程味方してくれるし、帝都で裁判になっても楽勝で勝てる自信がある。
帝国はナーザス公爵だけは敵に回さない事を心に決めてるからだ。
むしろ、これを貸しにする形で、帝都に都合の良い何かを求めて来る程度で終わる。
簡素に言うのなら、失脚すると言う事はないのだ。
他方のルフレ第二王女は確実に王家から弾き出されるだろう。
これはこれで後味が悪い。
そして何より、質が悪い。
そう……質が悪い!
ルフレ第二王女は知ってるのだ!
彼女が失脚する様な暴挙を、ナーザス公爵が「させない」と言う事を!
ルフレ第二王女とセシア第三王女の二人とは、気心の知れた幼馴染。
お互い小さな時から知っている仲で、ナーザス公爵の中ではトップクラスの親友だった。
愛とか恋とかではなかったかも知れないが、放ってはおけない……可愛い可愛い妹の様な存在だった。
彼女達を絶対に泣かせないし、泣かせたくないお兄ちゃんとして存在していた。
……だからこそ、この凶悪な暴露は笑えない。
泣かせたくないのだ、妹の様な幼馴染を。
果たして。
どう考えても自爆行為に等しい脅迫に……ナーザス公爵は屈する事となるのだった。
この一件によって、セシアは行動に出た。
ルフレ第二王女に愛しのナーザス様をすっぱ抜かれた事は、セシアにとっての宣戦布告にも等しい!
女王になりたいのなら好きにやれば良いし、腐った帝国の社会を根底からぶっ潰したいのなら、むしろ応援してあげる。
けど……でも、だけど!
ナーザスはあげません!
……かくして。
旧国内に在籍する王族によって旧プラム王国が滅茶苦茶になってしまうので助けてリリア様!……って感じの建前を引っ提げ、セシアはお忍びでリリアと接触し……この物語の二章目冒頭へと続いて行くのであった。