そうだ! 世直しをしよう!(12)
当初、セシアはルフレの画策を黙認していた。
やってる事は腐れているのだが、その目的だけは評価していたからだ。
ついでに言うのなら、プラムの街が平和であれば問題ないとさえ考えていた。
総督府の人間は、ルフレがわざわざ腐敗化させるまでもなく、元から傲慢で自分の私腹を肥やす事ばかり考えている連中が過半数を占めていた為、むしろ失墜してくれたら清々するレベルだった。
とどのつまり、セシアもセシアで帝国のやり方には腹を立てていた。
魔王や邪神の復活は、少しやり過ぎとは思ったが、ここもそこまで大きな問題へと発展しないと考えていた。
厳密に言うと、そうであると信じていた。
プラムの街に危機が訪れた時、必ず助けてくれる頼もしい幼馴染がいたからだ。
彼女にとって幼馴染であり、遠い親戚でもあるレーミン公爵家の当主、ナーザス・ルミナ・レーミン公爵。
物心付いた頃からの仲であったナーザスは、これまで幾度となくセシアの危機を救ってくれた。
その中でも一番の思い出は……政略結婚だ。
今から四年前、セシアが16歳の誕生日を迎えた時、帝国の周辺国でもあるリーペと言う小国の王と婚姻を結ぶ羽目になってしまう。
羽目になる……と言うのは他でもない。
16歳の誕生日に開かれたパーティーで、この王様に一目惚れされてしまい、そのまま側室へと迎え入れたいと言う申し出があった。
王家の人間の多くは、16歳から成人扱いとなる為、この16歳の記念パーティーは同時に成人式の様な意味もある。
そしてそれは「大人になった姫様をお嫁さんとして貰ってくれる人はいませんか?」式典でもあった。
そこで名乗りを上げたのが、このリーペ国の王なのだが……セシア的に言うとノーセンキューなエロジジイ。
側室に迎え入れたい……と述べている所からも分かる様に、正妃ではなくて二番目、三番目の妻と言う形で結婚したいと言っている。
個人的にこの部分も余り良い気分ではなかったのだが、年齢も60を超えているクセに性欲だけは二十代に引けを取らないエロジジイで……結婚なんぞした日にはどんな目に遭わされるか分かった物ではない。
ハッキリ言って、慰み者の性奴隷染みた真似をされる可能性が極めて濃厚だ。
更に、そんなエロジジイの血が半分流れている子供なんぞ生まれた日には……愛せると思えない。
極論からして、こんな王様の元になんぞ嫁ぎたくない!
だが、王家にとってプラスになる事は間違いなく……更に言うのであれば、単なる第三王女だったセシアに拒否出来るだけの権利もなかった。
このピンチを救ったのがナーザスであった。
ナーザス公爵は、エロジジイにとって痛手となる交易を次々と潰した挙句、国王の地位を脅かす所か、そのまま失墜にまで追いやった。
実はこのエロジジイ、悪代官染みた事を割と普通にやってたりもする。
簡素に言うと、帝国との癒着がズブズブだった。
もう笑ってしまうまでに酷い物で……悪辣過ぎて、本国のリーペ国民にすら見放されているレベルだった。
その結果、最終的にリーペ国民を奮い立たせてクーデターを促し……遭えなくテーペ王国は滅んで行くのだった。
これら一連の流れを作ったのがナーザスであり、クーデターを起こして新政府が樹立された後も、色々と知恵を貸す等の手助けをしたり、手厚い援助をする事でしっかりと自立した国家へと導いていくのだが……それはまた別のお話である。
閑話休題。
この様な関係もあり、セシア第三王女にとってナーザス公爵は、絶対の信頼を持つ事が出来る最大にして最高のヒーローだった。
そんな彼を慕う事もまた、自然の成り行きと言っても過言ではないだろう。
ここから先、セシアは熱烈に「お嫁にもろ~てぇぇぇっ!」って感じのアタックを掛ける事になって行くのだが……まぁ、ここも人気が出たら話す事にしよう。
まぁ、ないだろうけど。
………。
それはさて置き!
今回のセシアが動く発端となったのは、このナーザス公爵にあった。
ナーザス公爵さんも気付けば御年24歳となり、いい加減世継ぎを残せと周囲に言われまくる。
だけどナーザス公爵的には「24ならまだ全然行けるぜ!」的な事を抜かして、独身ライフを全く捨てない!
しかしながら、そんな彼に婚約話が舞い込んで来る。
この相手が……ルフレ第二王女だった。