そうだ! 世直しをしよう!(11)
まさに暴挙とも言えるパインのやり口に辟易していたルフレ第二王女は、とある大きな画策を考える。
それは……プラム王朝の復活と、帝王の復権だ。
正確に述べると女帝への道を、自ら切り開こうとした……と言うのが正しい。
自分勝手に富を貪るパインへと鉄槌を下し、腐った帝国を根底から変革する。
これがルフレのやろうとしている……画策だ。
そう……画策だった。
なんでそうなるのか?
女帝へと昇り詰める為に「手段を択ばない」からだ。
一例を挙げると……まず、彼女は第二王女。
プラムの王位継承権は序列三位にあり、一位は長男で二位は長女となっている。
このままでは女帝はおろか、プラム王家の頂点に立つ事すらままならない。
では、どうするのか?
答えは単純明快。
上二人を蹴落とせば良い。
そこでルフレが取った手法が、プラム総督府の腐敗化及び……魔王と邪神の復活だ。
プラム総督府を腐敗させる目的として使用したアイテム……それは、ライドマの魔石である。
この物語を隅々まで見てくれた方ならピンと来た人もいるかも知れない。
この魔石は精神を安定させる目的から制作され、精神を強引に操る事から極めて危険な依存症に陥り、最終的には精神を崩壊させてしまうと言う恐ろしい魔石だ。
一種の麻薬と表現しても良い。
ここまで述べれば分かって貰えたろうか?
雄太やリリア、亜明の三人が禁忌のクエとして行った「盗賊の掃討及び内部調査」にて判明した主な密売は、このプラム総督府の腐敗化を狙っていたのだ。
秘密裏に麻薬をばらまき、総督府の人間を麻薬漬けにする事で、ルフレ第二王女の操り人形へと変貌させていた。
更にこの魔石、使い捨てなのもポイントだ。
依存症になってしまうと、どうしても使いたくなる。
手元になければ、多少価格が高くても購入してしまう。
気付けば自分の財産にまで手を出し……そして、金が無くなる。
そうなれば……不正を働いてでも金が欲しくなる。
賄賂や横領、着服などなど……まぁ、良い感じで汚職まみれにしてくれる訳で。
こんなふざけた役所なんぞ、国民の目からすればアホの巣窟に見えて仕方ない。
厳密に言うと、そう言う風に仕立て上げた。
そこで登場するのが「魔王の復活」だ。
総督府を骨抜きにし、腐敗化した状態で危機を演出した。
すると、どうなるだろう?
ちゃんと機能している総督府ならば、冷静に対処して魔王討伐の手順を適切に踏んで行くのだろうが、完全に麻痺状態の総督府にその様な能力はない。
結果、総督府は失墜し……その責任問題へと発展する。
普通に考えれば、責任は総督府の上位組織である帝国が取るのが筋……と、こうなるのだが、至極当然の様に責任を押し付けて来る。
では、誰が責任を負うのかと言うと……白羽の矢が立つのはプラム王家だ。
現国王には引責辞任して貰い、次期国王を早急に「選んで欲しい」……と、言う形を「総督府にルフレがお願いする」流れを作っていた。
プラムは属国なので、実は総督府の方が高い権力を持っていたりもする。
地位の上では王家の方が高いのだが……あくまでも実権は持って居ない為、総督府が次の王座を決める権利を事実上持っていたのだ。
既にルフレ王女の手中にあったプラム総督府が、誰を女王にするのかなど予想するまでもないだろう。
かくして、ルフレ第二王女は女帝になる為の一歩を踏み出した……と、こうなる予定だった。
しかし、そうならなかった。
理由は簡単。
プラムは平和だったからだ。
魔王は復活した物の……偶発的に玄関からやって来た雄太によってアッサリ倒されてしまう。
プラムの危機にはならないし、プラム王が責任を取る必要もない。
そこで邪神を復活させてみる。
実は邪神の方が本命であり、前々からゼルスに目を付けて一年程度の年月を浪費した結果、首尾良く生贄になってくれた。
……が、出て来た邪神は自称妹で、プラムに危機が訪れる筈もなく……プラムの街並は普段通りの日常を平穏無事に見せていた。
こうなってしまうとルフレ王女が女王になる理由が無くなってしまう。
なんとも歯痒い限りではあったのだが……そこに、更なる伏兵がやって来る事になろうとは、ルフレ王女も予想する事が出来なかった。
この思わぬ伏兵こそが、某国の三女ことセシア・ロードル・プラム第三王女、その人であった。