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金曜日の夜にお電話しませんか?

「な、なにぃ……」

 

「翔さん、テンション低……」

 

「いや、寝てたし。つーか、お前電話すんなよ。俺、電話嫌いって言ったじゃん。確実に盗聴されてるからマジで気持ち悪いの」

 

「ごめんなさい。チャットにします?」

 

「嫌だよ。面倒臭い。書き込み時間が勿体無い」

 

「すみません。お電話大丈夫でしたか?」

 

「だから、寝てたし。俺、綾女従姉さんと5時から屋敷をランニングしてっから、8時には寝てんの」

 

「すみません。お時間貰えますでしょうか?」

 

「まあ、良いよ。ひろき君、何か問題でも起きた? 聞くだけは聞くよ、手は貸さんけど」

 

「ひどっ! いや、手助けして下さいよ。問題が起きたんですから!」

 

「声、デカいよ。アレだろ? 君に帝室行事への参加要請が来たんだろ」

 

「ええ! 何で分かるんですか!」

 

「だから、声デカいって。知ってるよ。俺も参加する予定だったんだから」

 

「翔さんも参加要請あったんですね。まあ、翔さんは貴族だし、当然か」

 

「めちゃくちゃ名誉な帝室行事だから、粗相しないようにしなよ。俺、その日は地区大会の決勝戦と被ったから、御母様が帝室に訴え出て、不参加にして貰った。まあ、不参加とか絶対に無理だったけど、俺は野球してる方が良いって事で特別に免除された。陛下の鶴の一声のおかげ」

 

「参加しなくて大丈夫だったんですか?」

 

「大丈夫じゃないよ。多分、めちゃくちゃ叩かれる。でも、ひろき君も絶対に参加したくないと思う」

 

「ホンマに何すか? 『着初め式』って。僕、お婆ちゃんから白いブリーフ贈られて来たんですけど」

 

「まだマシじゃん。俺なんか、フンドシ、トランクス、ブリーフ、ブーメランパンツやぞ。それらと大胸筋矯正サポーターを身に着けて、帝室、貴族関係者に披露せなアカンかったんやから」

 

「えっ、翔さん? 何でブラしてんの?」

 

「ブラじゃねーよ。大胸筋矯正サポーターだよ」

 

「ぶっ、ちょ、ごめんなさい。それが現実に聞けるとは思わなかったんで……」

 

「俺だって、言いたかねーよ。まあ、御下賜品の赤フンドシで決定やったわ。まあ、ホンマに決勝まで勝ち残れて良かったとつくづく思う」

 

「良かったですね。僕も体調不良で不参加駄目ですかね?」

 

「お前、電話で口にするなよ。盗聴されてんだから。これで仮病は無しになったな」

 

「全力で風邪ひく事にします」

 

「まあ、頑張って。でも、ひろき君って、殿下の事好きじゃなかったけ?」

 

「えっ! 殿下が参加するんですか!」

 

「声、デケぇって。するよ。本来は新成人の為の祝い事だから、参加されるはずだよ。って、君は未成年じゃない。それを理由に断れば?」

 

「いや、参加する事に今決めました」

 

「そうなん。他の女性達も綺麗どころしかいないから、君にとっては御褒美かもね」

 

「翔さん、殿下と対戦したんですよね。殿下どうでしたか?」

 

「殿下? めちゃくちゃ凄かったよ。10回やったら、6、7回は負けるかもしれないね。気まぐれであれだけやられたら、真面目に練習している俺達が馬鹿みたいに思えたくらい」

 

「やっぱ、殿下はすげえっすね」

 

「初回、流石に内角投げるのが怖くてさ。ど真ん中に投げちゃったんだよね。それを見事にホームランにされたわ。あの体型でスタンドに飛ばすとか、想像もしてなかったね」

 

「僕も記事読みましたよ。ショートの安東ひよりさんがフェンス際で見送ったんですよね」

 

「安東先輩の守備範囲と違うぞ。まあ、その最強最高にして、可憐清楚な殿下が参加される訳だ。良かったじゃん」

 

「僕、殿下と結婚とか無理ですかね?」

 

「君、漫画の読み過ぎ、アニメの見過ぎ。殿下は他国の王族クラスと結ばれるの。自由恋愛出来る訳無いやん。まあ、皇配は無理でも愛人なら目指せるかな?」

 

「でも、殿下は翔さんの事好きって、スレやネットで流れてませんでしたか?」

 

「ネットの情報を鵜呑みにする訳無いでしょ。男の分際で調子に乗ってる俺が気に食わなかっただけ。殿下には相応しい男性がきっといるよ」

 

「翔さん、本心じゃないでしょ。盗聴されてるからですか?」

 

「さあ、俺は鈍感だからね。いつまで経っても、女性の心なんか理解出来ないだけ。婚約者の心も分からないんだから、雲の上の御方の御心なんて知る由もない」

 

「良いんですか? 僕が殿下狙いますよ?」

 

「好きにしたら。俺は他人の恋路には興味無い」

 

「マジで殿下の下着姿見たくないんですか? 御目にかかる機会なんて、一生無いかもしれないんですよ。あんなに清楚可憐な女の子の下着姿ですよ」

 

「ちみ、チャラいな〜お前、そんなにがっついてたら、良い女にはモテないぞ。いや、ここではモテるのか? まあ、俺は興味無いかな」

 

「いや、興味無いとか嘘だぁ〜」

 

「あんまりしつこいと怒るよ。自分の価値観だけで他人を見ない。人それぞれに価値観があるんだから」

 

「すみません。調子に乗ってしまいました」

 

「はい、良いよ。君は若いからね、別に怒るつもりは無いから」

 

「翔さん、ありがとうございます。僕は『着初め式』に参加するんで、決勝戦見れないですけれど、頑張って下さいね」

 

「俺達、1回も負けるつもり無いよ。つーか、負けるつもりで試合に臨む高校球女はいないから、みんな強敵」

 

「そうっすね。僕も人生の晴れ舞台に参加して来ます!」

 

「だから、声デカいの。俺も試合に勝って、甲子園出場決めて来るから、ひろき君も殿下の心を射止めて玉の輿決めちゃいなよ」

 

「身分違いの恋って燃えますね。殿下の下着姿楽しみです」

 

「最後のは要らない。殿下も『着初め式』参加は本心では嫌かもしれないんだから。男の前で肌を晒すって、例年に無いんだからね。恥ずかしがる女性には配慮を怠らない事」

 

「勉強になります。翔さん、貴重なお時間頂き、ありがとうございました。お休みなさい」

 

「全くだよ。ひろき君もブラジャー新調しなよ。ノーブラで参加したら、大恥かくぞ」

 

「えっ? ブラっすか?」

 

「当たり前だろ。男性がブラしないで参加して良い訳無いんだから。で、お前何でブラしてんの?」

 

「うわっ! それはマジで嫌です!」

 

「声デカいから。大胸筋矯正サポーター、スポブラ駄目だかんな。ヤバいレベルのブラジャー着けて参加しろよ。ああ、参加しなくて済んでホンマに良かったわ。じゃあ、お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西東京地区大会決勝戦当日!

 雨!

 雨!

 雨!

 まさかの豪雨ー!

 無慈悲の雨!

 まさに土砂降り!

 当然! 試合は中止!

 決勝戦! 持ち越し!

 くやしい。 悔しい!

 くやしい。 悔しい!

 くやしい。 悔しい!

 だが、これで良い!

 

 神原翔! 赤フンドシ! 赤ブラ! 着初めシキー!

 

 立木文彦氏のナレーションを脳内再生して下さい。

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