BEAUTIFUL HEART
ほのかの話です。
彼女は後半で仲間になる子で、後輩ということもあり本編ではなかなか絡ませることが出来なかったのでここで補足出来たらと思っています。
ほのかは中学生の時に、咲中と婚約をした。何度か一緒に出掛け、彼に恋心を抱いた。
しかし、高校生になって咲中が社員を使い捨てる酷い人であることを知った。そして自分と婚約したのは、財力のためだということも。それでも、ほのかは咲中が好きだった。
黒ネコと出会ったのは、本当に偶然だった。首輪をつけており、飼い猫だろうと思っていると突然周囲が歪んだ。
そこは宇宙基地だった。そして、不思議な生物――どうやら先程の黒ネコらしい――に説明を受け、ほのかはアルターを覚醒させた。
黒ネコを連れ帰り、世話をする。どうやら、怪盗団の中でいろいろとあって家出したらしい。
デザイアに入ると、怪盗団と出会った。黒髪の少女は少しやつれているように見える。ヨッシーは逃げるように去ってしまった。
数日後、アザーワールドリィであの黒髪の少女――蓮以外の人達が出てきた。そして、言われた。
蓮は、ヨッシーがいなくなってから精神的に不安定になってしまっていると。そのせいで何日も起きていない。
それを聞いたヨッシーは俯き、走り去った。ほのかはそれを追いかける。
その後、怪盗団が仲直りし、咲中のデザイアを攻略しようと決まった。ほのかも、怪盗団の一員になった。
「ほのか、本当に大丈夫か?」
蓮はいつも、そうやって気を遣ってくれた。婚約者を改心させるのだ、相当な負担だろうと。
「……怪盗業に、絶対という言葉はない。失敗してしまっても、後戻りは出来ないんだ。それを、理解していてくれ」
そう言って、蓮は寂しそうな表情を浮かべていた。
――思えば、蓮は未来が見えていたのだろう。そうでなければ、一度でも「やめないか」と言うことはなかった。
廃人化してしまった時、蓮は何度も「すまない……」と謝っていた。しかし、彼女は止めようとしていたのだ。それを無理やり進めたのは自分達だ。
評判が下がり、士気が下がっていく怪盗団を蓮は必死に励まし続けた。
「皆、気持ちは分かるがここで立ち止まってはいられない。何か策を立てないと」
「なんでお前はこの状況で前を向けんだよ」
良希にそんなことを言われるが、「ここで信念を曲げたら、それこそ相手の思うつぼだ」と答えた。
ある日、帰ろうとすると蓮が公園のベンチに座っていることに気付いた。
「蓮、どうしたの?」
「ん?あぁ、ほのかか」
蓮の表情は疲れているように見えた。
「どうした?勉強を教えてほしいのか?」
しかし、いつも通りに接する彼女の瞳には「絶望」というものはなかった。この逆境を絶対に乗り越えてやるという、強い力を感じた。
あぁ、こんな人が率いるこの怪盗団が、人殺しなんてするハズない。
――彼女の美しく強い心に、私は惹かれました。