二話 獣人の国(改稿前)
前回を投稿したのがいつだったのか忘れました。
なんやかんやで獣人の国に到着した。
馬車に乗ってから丸一日かけて来なければならないほど遠く離れた国家であり、旅の途中からは全員が寝息をたてていた。
「おぉ……」
「綺麗……!」
景観は想像通り、いや、想像を遥かに超えていた。
和風な印象を受ける、屋根瓦を冠る朱塗りの建物群と、等間隔で植えられた銀杏の木々によるコントラストは、筆舌に尽くし難い美しさと言えよう。
例を挙げるのなら、京都にある観光名所だろうか。リンは中学生の頃に修学旅行で一度行ったきりだが、正直その美しさを超えていると言っても過言ではないかもしれない。
見惚れること数分、ようやく目的地となる城へ歩みを進めた。
「あの旗、どこかで見たことがある気が……どこでしたっけ?」
歩がわずかに遅れていたイズミが、とある一点を見つめていた。
視線の先には旗が掛けられていた。
桜の花をベースに、獣の耳とそれを覆う鎖が描かれ、中心部には小さな黒い歯車の意匠がある。
何を意味しているのかは分からないが、旗の本数は多いため、これが住人らにとって特別なものだということは間違いない。
イズミが感じた既視感の正体は何なのか、リンは歩きながら考えてみたが、悪い予感がしたため考えるのを止めた。
いよいよ城の根元へ着いた。これまた日本でよく見られる構造をしていた。歴史的建造物的なアレである。
城門の前には二人の女性がいた。朱と白の巫女服を着た、垂れ耳と尻尾をもつ獣人。おそらく犬系の種族だろう。二人は瓜二つの容姿をしており、判別は難しい。
「勇者様、ようこそいらっしゃいました」
「獣人一同、勇者様の来訪を歓迎致します」
容姿だけでなく、声までそっくりだった。
「こんにちは。そんなに堅苦しくしないでください。みんなここに来るのを楽しみにしていたので」
ハルキが落ち着いて返事をするが、彼自身も緊張しているように見える。心做しか肩が強ばっているようだ。
「長旅でお疲れでしょう。皆様の分のお部屋がございます」
「そこでしっかり休んで、旅の疲労をお取りくださいまし」
二人の使用人が提案をしてくる。と言うよりは、事前に準備していたのだろう。
「ありがとう、だけど俺たちは急いでいるから……」
「そうなんだ! それじゃあ、一旦荷物を運んでから、ここの観光しようよ!」
ナノカがハルキの話を遮る。どこか棒読みで、無理やりだったような気がするが、この話そのものに異論は無かった。
「良いですね! こんな綺麗なところ、見ずに帰るなんて勿体ないですよ、ハルキ先輩!」
イズミも同じような調子でハルキを誘う。一方彼はというと、バツが悪そうな顔をしながらこちらを見てくる。
「先輩も賛成しているから、休憩がてら見学しましょうか」
助けを求める視線を向けてきたハルキに、リンがトドメをさした。
「かしこまりました。では此方へ」
「例のお部屋へ案内致します」
困惑するハルキを完全に無視して、獣人の使用人が城の門を開け案内を始める。
「馬車の中ではほとんど座りっぱなしでしたし、休憩の意味を込めて観光するのは良い事だと思いますよ。貴方はマジメすぎるんですよ、いい加減休むことを覚えてください」
「あ、あぁ……ごめん」
リンから静かな説教を受け、ハルキも渋々観光に同行することとなった。
本来予定には無かったが、こうなることを踏まえた荷物を持って来ておいて正解だった。きっとナノカが、ハルキの気を引くためにアクションを起こすと読んでいた。
客室は四つと、人数分準備されていたが、リンとイズミは一緒の部屋で過ごした。幼なじみと近くにいると、とてもホッとする。しかし、同じ部屋に女二人で滞在するのは、何かそういう噂をたてられないか心配になる。どうでもいいことだが。
少し休んだ後は、自由行動ということになった。ということなので、ナノカとハルキは一緒に出かけていった。手でも繋ぎたかったのか、そわそわしたような後ろ姿が印象的だった。
リンとイズミも、適当なところへ散歩に行った。茶房へ訪れ、茶と茶菓子を味わったり、屋台で串焼きを買い食いしたりと、間延びした休息を楽しんだ。
城の客室へ戻ったとき、案内してくれた使用人たちが再び訪れてきた。
「勇者様方、ご休息は楽しまれましたか」
「勇者様方、陛下がお話を。此方へ」
案内されたのは長い回廊だった。脇には見事な枯山水や、人工的な川の流れがあった。さながら日本庭園のような光景で、僅かに見惚れてしまった。
回廊の終わり、徐に使用人が襖を開ける。
その先に、彼女らの言う”陛下”が座していた。
「良く来てくれたの、勇者様」
そこには、老人のような口調とは裏腹に、幼い少女の姿をした獣人がいた。
この小説を投稿する直前に油ギトギトのラーメンを食べました。胃もたれが苦しいです。食べなければよかったと後悔しています。
追記「誤字をやらかしたので変種しました」