表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

money

作者: 清水野 凪

 ある街に、ある伝説をもつ泉がありました。その伝説というのは、泉の前でお金が欲しいと願うと、願った通り、お金が泉の中から現れるというものでした。しかし、街にはそんな伝説を信じる人はいませんでした。

 街にはA氏という男がいました。この男は毎日ギャンブルに明け暮れた生活を送っていました。そんなA氏はある日とうとうギャンブルに負け、財産を全て失ってしまいました。

 A氏は家賃も払えなくなり、パン一切れ買うお金さえ失くしてしまいました。

 途方に暮れていたA氏の頭に、一瞬、泉の伝説が頭をよぎりました。A氏は、あの胡散臭い伝説を信じていた訳ではなかったのですが、藁にもすがる思いで、泉に向かいました。

 泉についたA氏は、泉の前で、

 「お金をくれや。たんまりくれや」

と、泉に向かって叫びました。

 すると、泉の水面が黄金色に輝き始め、中から沢山のお金が出てきました。

 A氏は驚き、喜びました。

 「伝説は本当だったのか!」

 A氏は沢山のお金を持ち帰って、街の人々に伝説は本当だったと伝えて歩きました。勿論、街の人は伝説を信じてはいませんでした。しかし、お金のないあのA氏が大金を持っているという事実を目の前にすると、街の人は、やはり伝説は本当なのかしらん?という風に思えてくるのでした。

 しばらくすると、街には豪邸がずらりと並ぶようになりました。そうです、街の人はみんな、泉に願ってお金持ちになったのです。

 この泉には不思議な点が一つありました。人によって、お金の出る量が違ったのです。しかし、街の人はそんなことを、気にはしていませんでした。お金が手に入ればどうでもよかったのです。

 豪邸が立ち並ぶ街の外れに、一軒だけボロボロの家がありました。ここに住むR氏は、生まれた時から貧乏でした。そのため、人一倍お金持ちに憧れていました。R氏は貧乏生活から抜け出すため、真っ先に泉に願いに行きました。しかし、R氏にだけは何度願ってもお金は出てきませんでした。

 R氏はこんな伝説に頼った自分が恥ずかしくなり、これからは努力してお金を稼ごうと心に決めました。

 そんな訳で、R氏だけはボロボロの家に住んでいるのです。

 こんな街の様子──豪邸が立ち並んでいる街と、その端に一軒立つボロボロの家の風景──も長くは続きませんでした。5年後、街の人は全員がお金を失い、貧乏になりました。街にはR氏の家のような、ボロボロの家だけが並びました。

 また財産を全て失ってしまったA氏は、また泉に向かいました。向かっている途中、A氏はボロボロになっている看板があることに気づきました。

 なぜ今まで気付いていなかったのだろうかと思いながら、何気なく看板を眺めると、「先の泉危険。立ち入り禁止。」と赤い字で書いてありました。そして、その下には黒い字で文が書いてありました。A氏が読んでみると、「泉はお金を生み出すのではない。あなたが将来手にするであろう全てのお金を、願った人に一括で生み出す泉だ。ここで願ってしまうと、将来お金を得ることができなくなります。」

 これを読んだA氏はその場で倒れ込みました。

 この話を聞いたR氏は首を吊りました。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ