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思いの木  作者: 暇したい猫(桜)
本編 思いの木
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チャプター8


 赤いお日様が傾き始めた頃になった。


「それじゃーまたね。お姉ちゃん、お兄ちゃん」


 僕とシノは玄関でアキラ君を見送っていた。


「でも、びっくりしたな。あの子も友達にそっくりだったから」


 僕はアキラ君を見送りながら言った。


「名前も顔もそっくりだったら確かにびっくりするよね」


 シノがやわらかい声で答えた。僕は首を傾けた。


「えっ、何で友達の名前もそっくりってわかるの?」

「あ、えっと、なんとなくです!! なんとなく……それじゃー、家事とかあるんで戻りますね」


 シノは呼び止める暇もなく家の中に戻っていった。


「あ……行っちゃった……」


 村はずれの平野で僕だけがぽかんとしていた。


「……明どうしてるんだろう」


 ――『今ね…手術中だけど、重傷だって』


 だからなのか、お母さんの言葉が頭をよぎる。

 自分こんなことしててよかったのか。他にもできた事があったのではないか、自分にもできることが。

 そう感じると、急につめたいものが手のひらにおちた。


「あれ……なんで涙が…っ……出るんだろ…っ…」


 手で涙を拭きながら近くの壁に寄りかかる。


「そういえば君、せっかくだからご飯食べて……」


 そんな中、家の中から出てきたシノが僕を見て、慌てて駆け寄った。


「どうしたの!? どこか痛いの!?」

「僕……だめだから。なにもしようとしない…っ……から、ダメなんだ」


 やっとわかった。

 できないんじゃなくて、なにもしてないんだ。

 パンッ。その時だった。僕は額を両手で隠す。


「痛っ!!……デコピン?」

「いつまでも泣いてないで顔上げなさい」

「でも……」

「それにそう思うのなら行動しなさい」

「行動……」

「そう!! だから顔上げなさい」


 額が痛い。顔が同じだけの別の人間。わかっているけど、まるで志穂に怒られていた感じだった。


「うん……そうだね。確かに泣いてるだけではダメだよね」


 僕は涙で視界がぼやけているけど、僕もシノも笑顔だったのはわかった。


「そうじゃなー、笑顔はいいものだよな」


 突然シノとは違う方向から声が聞こえた。だけど、聞き覚えがある声でもあった。


「よう、久しぶりじゃな。『そこの人』」


 首をその方向に向けると、そこには見覚えがある占い師の格好をした老人がいた。


「ろ、路地裏のおじいさん!!」


 そう、僕の横にいたのは下校中に出会った老人だった。


「ただいまー」


 老人は元気いっぱいの子供のように言った。


「えっ!!……ということは、ここはおじいさんの家なの!?」


 僕は驚きのあまり口を開けたまま呆けていた。


「おじいちゃん!!」


 シノが甲高い声で怒鳴る。


「今までどこに行ってたの!!どうせまた『思いの木』を使ってどこか行っていたんでしょ」

「ギクッ。そ、それよりこの少年とちょっと話があるから連れてくぞ」


 そうして、老人……いや、おじいさんと呼ぶべき人は僕の手首を強く握って連れて行く。急かしているのはシノが怖いせいだろうか。


「それじゃー、悪いが炊事とかよろしくたのむぞー」

「えっ!! あ、こらー!!」


 僕はシノの怒鳴り声を聞きながら、おじいさんの言うとおりに連れて行かれた。



次の投稿は明日になります。

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