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思いの木  作者: 暇したい猫(桜)
本編 思いの木
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チャプター7


 声が震えた。まさか志穂が生き返ったのか……そんな感情が湧き上がる。だが、僕は首を横に振った。


「そんなことがあるわけがない」

「あの……」

「あ、待って」


 女の子の足を見ると、どうやら右足をひねっているようだった。


「僕がおぶって行くよ。家まで案内してくれる?」

「いいです!! 自分で……いっ」

「無理しないで、もっと悪くなるから」

「……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいます」


 こうして僕は女の子の家に行くことになった。


     ◇


 森の中を歩いていると、鳥の声とか、葉っぱが揺れる音とか雑音がよく聞こえる。


「……」


 正直に言うと、すごく話しづらいのである。


「あの……」


 そんな空気に耐えかねたのか、志穂に似た女の子が話しかけてきた。


「あっ、はい!! どうかしましたか?」

「えっと、『しほ』って誰ですか?」

「あー、志穂は僕の友達だよ。なんていうか君に似ていたから。」

「へー、そうなんだ」

「うん。あっ、そういえば君の名前は?」

「私!? え、えっと、し…『シノ』って言うの」

「シノだね。わかったよ」


 また葉っぱが揺れる音が聞こえる。


「……」

「……」


 誰かこの空気をどうにかしてください、と願わずにはいられなかった。


     ◇


「ここが君の住んでいる所…?」


 僕は周りを見渡す。そこはゲームとかに出てきそうな村……家は全部木製で平屋ばかりで、そこはかとなく長閑な空気が漂っていた。


「いいえ、家はこっちのほうです」


 けれど、シノの案内はその空気から離れた場所だった。僕は言われた通りに進んだ。


『ギィィ』


 そして、僕は扉を開ける。確かに案内された通りに進んでいくと家が建っていた。しかし、なぜか村のはずれに建っていたのだ。


「とりあえずそこの椅子に降ろすね」

「あ、はい」


 僕はすぐ近くの椅子にシノを降ろした。


「すみません。重かったですよね」

「いや、ぜんぜん平気…」


 と僕は言いつつも、息を切らしていた。


「それより足は大丈夫?」

「あ、はい!!もう痛みが引いてちょっとだけ動かせますし!!」


 シノは軽く足を動かしてみせる。コンコン……その時ちょうど扉をたたく音が聞こえた。


「お姉ちゃん。いる?」


 扉を開きながら幼稚園生ぐらいの小さな男の子が入ってきた。


「アキラくん!!」


 小さい男の子を見てシノは立ち叫んだ。


「明…?」


 僕は小さな男の子にある疑いを持ったがその考えを直した。


「確かに似てるけど、まさか…ね」

「お姉ちゃんどうしたの!?」


 男の子はシノが右足を引きつっていることに気づいて近づいた。


「ちょっとミスしちゃって、そこのお兄ちゃんに助けてもらったの」

「もう大丈夫なの……?」

「うん、まだちょっと痛いけどね。ほとんど大丈夫だよ」

「そっか、よかった」


 男の子は安心していたように見えた。


「いいなぁ。こういう感じ」


 誰もが幸せでいられる。あたたかい世界。でも、僕にはもうない世界。

 いっそのことこのまま……僕がそんなことを考えていると男の子に声をかけられた。


「お兄ちゃん」

「ん、どうしたの。えっと、アキラくん?」

「あのね、お姉ちゃんを助けてくれてありがとう」


 今、たぶん僕は顔が赤くなってると思う。『ありがとう』を久しぶりに言われた。


「お兄ちゃん、こっち!!」


 アキラ君が僕の手を引っ張る。


「わっ!な、何?」

「お兄ちゃんも一緒に遊ぼ!!」

「……僕も中に入っていいの?」


 はっきり言うと不安になった。また戻っても大丈夫か、僕の失った世界にまた入っていいのか?

 だけど、その気持ちをふっとばすぐらいの満面の笑みでアキラ君がいってくれた。


「もちろん!!」


 いろいろとうれしくなった。だから、僕の返事はもう決まっていた。


「それじゃー、入る!!」



次の投稿は明日になります。

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