表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思いの木  作者: 暇したい猫(桜)
本編 思いの木
4/17

チャプター4


 志穂はショートヘアーがかわいい女の子だった。僕とは幼稚園の頃からの幼馴染で、明とは小学校からだから、どっちかというと志穂の方が僕を知っていると思う。そして、僕たちは小学校で出会って、いつも三人でいた。とても楽しい時間だった。

 そして三年後、僕たちはいつもと変わらない日々を暮らしていた。ただ違ったのは放課後、明と志穂が喧嘩したくらいだった。

 僕はすぐ仲直りすると思っていた。でもちょっとした不注意で明が道路に出てしまって……


「危ない!!」


 志穂は明をかばって交通事故にあって、息を引き取ってしまった。

 明はそれから一ヶ月は学校に来なかった。やっと学校に来た時、明は笑っていた。クラスのみんなは大丈夫そうに見えただろうけど、僕には無理に笑っているように見えた。だから、僕はもうあまり志穂の話はしないようにした、それが明のためだと思って……。


     ◇


 写真が盗まれた後、僕たちは先生にこのことを伝えた。先生は僕らをそっと見た後、「わかったわ」と一言だけ告げて僕たちを帰らせた。僕は明と別れて路地裏をとぼとぼと歩く。


「写真も心配だけど、明も心配だなぁ」


 僕はため息をつきながら言った。

 あの時から数年経って、明はやっと平穏な日常に戻ってきたのに、志穂の言葉を聞いたとたん明の表情が変わった。冷静な様子が一変して、何かを恐れているように肩を落とした。きっと志穂のことを思い出したに違いない。


「あー!! 何であの時言葉に出しちゃたんだー。もう口に出さないつもりだったのに!!!」


 僕は自分自身に八つ当たりをして、振り返った。


「やっぱり明の後を追って励まそう」


 僕がそう思ったとき、後ろから引っ張られるように声がした。


「そこの人どうかなされたのかな?」


 声がしたほうを向くとそこには老人が立っていた。その老人は長いひげを生やしていて、どこかの漫画に出てくる占い師のような姿をしている。


「あ…いえ。友達のところに行こうと思って……」


 僕は明のもとに急ごうとする焦りと急に呼び止められた驚きで、つい返事をしてしまった。老人は近くにあったさびれたベンチに腰を掛けると


「よければこの老いぼれに話してくれませんか」


 と満面の笑みで言った。どうやら無視していけそうにないみたいだ。しょうがなく僕はこれまでのことを簡単に話した。すると、


「なるほど、それなら今日は追うのをやめておきなさい」


 と老人が言った。


「なぜですか?」


 僕は不思議そうに聞いた。


「人には一人で考える時間も必要ということだ」


 老人の言葉はわけがわからないけど、僕は落ち込んだ。結局僕には何もできないと言われた気がした。


「ついてきなさい」


 その様子を見た老人はベンチから立ってそう言った。僕はどうしようか困ったが、振り向いてきたので、とにかく行ってみることにした。


「こんな道があったんだ」


 この通りはもともと石畳で入り組んでいたが、僕は近道とかでいつも通っていたのでほとんどわかっていた。

 でも、老人が通る道は見渡す限り始めてのみる風景ばかりだった。しかも、キラキラと光っているように見える。水晶でできた道を歩いているかのようだ。

 しかし、そんなことを考えられるのは一瞬だけだった。周囲を見渡している間に老人はすたこらと先に行くからである。僕はついていくのに必死になった。



次の投稿は明日になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ