チャプター4
志穂はショートヘアーがかわいい女の子だった。僕とは幼稚園の頃からの幼馴染で、明とは小学校からだから、どっちかというと志穂の方が僕を知っていると思う。そして、僕たちは小学校で出会って、いつも三人でいた。とても楽しい時間だった。
そして三年後、僕たちはいつもと変わらない日々を暮らしていた。ただ違ったのは放課後、明と志穂が喧嘩したくらいだった。
僕はすぐ仲直りすると思っていた。でもちょっとした不注意で明が道路に出てしまって……
「危ない!!」
志穂は明をかばって交通事故にあって、息を引き取ってしまった。
明はそれから一ヶ月は学校に来なかった。やっと学校に来た時、明は笑っていた。クラスのみんなは大丈夫そうに見えただろうけど、僕には無理に笑っているように見えた。だから、僕はもうあまり志穂の話はしないようにした、それが明のためだと思って……。
◇
写真が盗まれた後、僕たちは先生にこのことを伝えた。先生は僕らをそっと見た後、「わかったわ」と一言だけ告げて僕たちを帰らせた。僕は明と別れて路地裏をとぼとぼと歩く。
「写真も心配だけど、明も心配だなぁ」
僕はため息をつきながら言った。
あの時から数年経って、明はやっと平穏な日常に戻ってきたのに、志穂の言葉を聞いたとたん明の表情が変わった。冷静な様子が一変して、何かを恐れているように肩を落とした。きっと志穂のことを思い出したに違いない。
「あー!! 何であの時言葉に出しちゃたんだー。もう口に出さないつもりだったのに!!!」
僕は自分自身に八つ当たりをして、振り返った。
「やっぱり明の後を追って励まそう」
僕がそう思ったとき、後ろから引っ張られるように声がした。
「そこの人どうかなされたのかな?」
声がしたほうを向くとそこには老人が立っていた。その老人は長いひげを生やしていて、どこかの漫画に出てくる占い師のような姿をしている。
「あ…いえ。友達のところに行こうと思って……」
僕は明のもとに急ごうとする焦りと急に呼び止められた驚きで、つい返事をしてしまった。老人は近くにあったさびれたベンチに腰を掛けると
「よければこの老いぼれに話してくれませんか」
と満面の笑みで言った。どうやら無視していけそうにないみたいだ。しょうがなく僕はこれまでのことを簡単に話した。すると、
「なるほど、それなら今日は追うのをやめておきなさい」
と老人が言った。
「なぜですか?」
僕は不思議そうに聞いた。
「人には一人で考える時間も必要ということだ」
老人の言葉はわけがわからないけど、僕は落ち込んだ。結局僕には何もできないと言われた気がした。
「ついてきなさい」
その様子を見た老人はベンチから立ってそう言った。僕はどうしようか困ったが、振り向いてきたので、とにかく行ってみることにした。
「こんな道があったんだ」
この通りはもともと石畳で入り組んでいたが、僕は近道とかでいつも通っていたのでほとんどわかっていた。
でも、老人が通る道は見渡す限り始めてのみる風景ばかりだった。しかも、キラキラと光っているように見える。水晶でできた道を歩いているかのようだ。
しかし、そんなことを考えられるのは一瞬だけだった。周囲を見渡している間に老人はすたこらと先に行くからである。僕はついていくのに必死になった。
次の投稿は明日になります。