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思いの木  作者: 暇したい猫(桜)
本編 思いの木
3/17

チャプター3


 放課後、僕は屋上にいた。そういえば明遅いな、と僕はふと思った。


「確かすぐ来るって言ってたのに……」


 僕は屋上の策に手をかけて辺りを見た。屋上は学校を一望できる絶景の場所だ。


「あれ、教室に誰かいる」

 もう一度目を凝らしてみたが、確かに誰かが教室で何かを探している。


「きっと明がまだ教室にいるんだ。よし迎えに行こう」


 僕は廊下に出た。誰もいない廊下の窓から夕焼けの光が差し込む。まるで廊下が淡いオレンジ色に染まったみたいだ。僕は早速教室に目掛けて走った。誰もいないからぶつかる心配もない。

 教室のドアの前で僕は立ち止まる。教室をのぞくと確かに誰かいたが、なぜだろうよく見えない……光が差し込んでいるはずなのに。

 でも確実に明ではなかった。背丈が大人ぐらいだったからだ。もしかしたら盗んだ犯人かもしれないと僕は思い始めた。そのとき、僕の脳裏に朝礼の後の会話が思い出された。


 ――『翼もやれるんだ』


 その言葉を思い出した瞬間、僕は勇気が出た。


「よし、犯人を捕まえるチャンス……捕まえてやる」


 そして、僕は勇気を振り絞って飛び出した。


「だれだ!」


 案の定、その犯人らしき人は何かを持って逃げようとしていた。


「泥棒だ!」


 僕は大声で叫んだ。犯人が反対側のドアへ走り出す。僕は犯人を追いかけようとしたその瞬間、唖然とした。その犯人は人ではなかった。

 犯人……いや、もう僕の中ではただ物を奪う黒い霧にしか見えない。黒い霧は古校舎のほうに消えていった。僕は唖然としたまま、そこにポツンと立っていた。


「おい! 翼ー」


 その後、明の声で僕は正気にもどった。気付けば明が僕の後を追うように教室に飛び込んでいた。慌てて周りを見渡す。


「犯人いたのか!」

「あ……うん。そこにいたけど逃げられたよ」


 僕はゆっくり指し示しながら言った。途端に明は動揺した。


「おい。そこって翼の席だよな……」


 明が言った。僕は驚いて自分が指差した方を向いた。


「窓側の一番後ろ……まちがいない僕の席だ」


 僕はすぐに席に駆け寄り荷物の確認をした。明も僕につづいてきた。教科書や文房具、かばん、それと……。


「ない」


 僕は思わず言った。


「何がないんだ」


 明が聞いた。僕はためらいながら答えた。


「志穂の写真」


 明は驚いて、静かになった。僕たちはしばらくそのまま硬直したようにじっとしていた。



次の投稿は明日になります。

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