チャプター2
二人は先生が教室に入ると同時に入り急いで席に着いた。もともと古い学校なので教室も狭いし、四十人はいたからもっと狭かった。僕は窓側の一番後ろで明はその斜め前の席だった。
「えっと、このまえ藤崎君の私物が取られたそうです」
と先生が言った。
先生はきれいな女の人で、でも年齢を聞くと「秘密」といわれた。明が以前「きっと思っていた歳よりも上なんだぜ」っていってたけど、そのあと先生に知られてきついデコピンをされたらしい……。
「誰か知らない?」
と先生が聞いてきた。皆静まり返る。
「そう」
先生はそれから深く追求せず朝礼が始まった。
何も変わらない日常が始まるはずだった。しかし、しばらくすると明が紙くずを投げてきた。いつもの手紙のやり方だ。もしも先生に見つかってもいいように手紙をぐしゃぐしゃにしてなげる。僕は見つからないようにそれをとって、広げて読んだ。そこにはこう書かれていた。
――『その犯人みつけようぜ』
僕は明の手紙を読んで驚いた。明の正義感がうずいたのだろう。
明の父は四十五歳で警察官だ。それでいて信念がある。そのせいなのか、明にもそれなりの信念があった。目の前で困った人を助けたり、いじめをした奴を先生に言ったりする。なので、クラスの信頼があり、今では委員長になっている。
でも、その裏で、僕は邪魔者に思われている。
この前、教室の隅で女の子が
――「なんで明君は翼君といっしょにいるのかな?」
――「だいたいどうやって明君の友達になったんだろうね」
と言ったのを聞いてしまったからだ。
さすがにその時は怒りたくなったが、勇気が出なかった。 だけど、僕は明と違ってなにもかも普通だから何もできやしない。それは事実だった。だから、僕は犯人を捕まえるのは断ろうと思った。
――あれ? でもいつ明の友達になったんだろう……。
僕がそう思ったときちょうど朝礼が終わった。
◇
朝礼が終わるとすぐに明が僕のところに来た。
「読んだか?」
「読んだけど…どうして捕まえようとか思ったの?」
「…おまえこのごろみんなから嫌な感じに思われているから」
僕は呆気に取られた。
「知ってたの?」
「当たり前だ。だから、犯人を見つけて『翼もやれるんだー!!』ってみせつけてやろうぜ」
と明が言った。たぶん冗談半分だと思うけど、原因は僕だった。断れるはずがない。
「…うん。わかった。捕まえよう」
「よし。それじゃ、今日の放課後、屋上に来いよ」
「え、今日なの!?」
まだ心の準備ができてないのに。だけど、結局明から押し切られてしまった。怪訝そうな表情で僕は、きっと頑固なところもあるんだな、と思った。
次の投稿は明日になります。