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思いの木  作者: 暇したい猫(桜)
番外編 もう一つの思いの木
14/17

EX チャプター1


 まるで海のように真っ青な青空がそこにはあった。


「……先生」


 青空を窓から覗き見るほどあの時の空と比べてしまう。


「あの……深海先生?」

「あっ、はい!!」


 呼ばれていたことにやっと気づく。机の脇に立っていたのは副担任の青井先生だった。


「どうなさったのですか? ずーと空を眺めて。何かあるのですか?」


 青井先生が興味本位できょろきょろと見回す。


「いえ、何でもありません。それより何か用事でも?」

「そうでした、昨日ありました漢字のテストの採点が終わりましたので届けに来ました」


 そう言うと青井先生は両手で抱えていた四十人分のテスト用紙を差し出した。そう、今の私は小学校の先生を生業としている。


「早いですね。いつも助かります」

「いえ、これも仕事ですから」


 テスト用紙を受け取ったことを確認すると青井先生は自分の机へと戻っていった。私の机には四十人分の丸付けを終えた用紙と四十人分の国語のテスト用紙が残った。


「仕事をしないとね」


 赤ペンを片手に紙をこする音が響き渡る。

 シュ、シュ、シュ……紙をこする音が響くたび、記憶がどんどん遡る感じがした。

 その時、ある用紙をみつける。


「三十八点」


 それはとても成績が悪いテスト用紙だった。そういえば、彼と会ったのもこんな感じにテストの成績が悪い日のことだったよね。


     ◇


「小さな木」


 高校二年、夏。

 その頃の私は成績や進学ばかり気にする両親が嫌で家を飛び出した。

 もちろん行く当てもない。とにかく遠くに行こうとして、無我夢中で道路を歩き回っていた。そして、ここに来た。丘の上に立っている一本の木の前に。

 でも、まだその木は小さい。私の背丈と同じぐらいだったから百六十七センチぐらいかな。人差し指でちょこっと押すと、目の前で葉が揺れてそれがすごくかわいかった。


「かわいい」


 私はその木の根元に腰をかけるように座る。風がさわさわと音を立てて、子守唄を唄う。


「そういえば、もう足が疲れて……」


 安心したせいか、いつの間にか全身の力が抜けて私はその場で眠っていた。


「ありゃ、先客か?」


 寝ている間に彼が来ているとも知らずに。


次の投稿は明日になります。

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