チャプター1
夏。
空は蒼く、日が照り行く中人々は歩いていく……。そして、人々が夢中になる中、誰も道端の真ん中にひっそり咲く花に気づかないでいる。おかしいな人間は……雲の上、空の上から覗いていた老人はそう思った。
「あっ!」
けれど、十一歳の小さな男の子が声を発した。 つられて同年代のかっこいい男の子が振り向いた。
「どうした翼?」
どうやら小さい男の子は翼というらしい。
「あそこに花が咲いてる!」
「ほんとだ……」
「あそこにいたら危ないよ。植え替えそう。明」
かっこいい男の子は明というのか。
「わかったよ。手伝う」
そして、二人の男の子は花を公園に植え替えている。二人だけが小さいものを見つけ出した。
ほう、少し興味が湧いた。様子を見ようか。
突如、老人は消えていた。
◇
「翼、お前本当にお人好しだな」
僕は明と一緒に商店街の裏道にいた。 学校に行く途中で、『翼』という名札がついたかばんを持って早歩きをしている。早歩きしているのは始業に遅れそうだからだ。
「わざわざ道端の花を植え替えるなんて。俺は考えないぜ」
「でも、かわいそうだし……自分だったらいやだもん。あんなところで一人とか……」
僕は首を振りながら想像する。
「そっか。まぁ俺はお前のそんなとこが好きだしな」
明が照れくさそうに鼻をこする。それなら僕だって……と言おうとしたが、ちょうどチャイムが鳴り二人とも急いだ。