9.オリエンテーションと扉
本日ラストの三本目です。読み逃した方は前かその前のページへどうぞ。
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二日目はオリエンテーションだ。
二日目ということもあって、各自は制服ではなく私服に身を包んでおり、女子の中にはおしゃれな格好をした者もいたことは印象的であった。
まぁそんな話は置いといて、だ。
各地の神社や寺に教師が待機しており、班ごとに配られたカードにスタンプを押してもらうことになっている。
すべてのスタンプを集め終わった班から自由行動となっているのだ。
俺としては楽しいので問題はないがしかし、多くの学生は面倒くさいと嘆いていたのが印象的である。まぁ、俺も彼らのような普通の学生であったなら同意見だっただろう。
「次何処よ? 金閣寺?」
「いや、銀閣の方」
「それより、さっきすれ違った人美人じゃなかった?」
「それな。流石大和撫子」
などという班員の会話が前方で行われているのを耳にしながら、黙々と歩を進める。
どうやらこちらから絡んでいくことがないとわかったからか、彼らも俺をそこにいないものとして見ているらしく、気付けば仲良さげに盛り上がっているようだった。
そして、最終ポイントでもらえるスタンプを手にすると、そこにいた教師から自由行動が許される。
「楽しんでもいいが、羽目を外さないように。明日もあるからな」という言葉を聞き終わらぬうちに、我らが班員はよっしゃ行くかと走り出していた。
まったく、とため息を吐く教師に心の中で合掌しつつ俺も京都散策へと乗り出す。
昨日のガイドと今日のオリエンテーションで散々歩いた京都の町は、前世同様に木造建築が主で美しい景観をしている。何かと騒がしい都会にはない雰囲気だ。
扉の発生による怪物の出現で度々その一部が破壊されることはあるそうだが、補強はしても京都ならではの雰囲気を壊すつもりはないらしく、俺の記憶にあるものと変わりはない。
そんな街中を歩きつつ、昨日今日で目に付いた店を片っ端から回っていく。
まず昼食にと、お腹にたまりそうなものを数品食べ歩き、続いては食後のおやつの感覚でソフトクリームやら焼き菓子を食していく。
荷物になるのでお土産を買うのは最終日で良いだろうと、両手に違う味のソフトクリームを持って歩いていると、まだオリエンテーションの途中なのか白いワンピース姿の安芸城とその班員らしき女子生徒の群れを発見した。
どうやら、俺たちの班は大分早くオリエンテーションを終わっていたようだった。
自由行動という餌を前にした男子中学生のやる気は恐ろしいものである。
すると、あちらも俺の事を見つけたようで一瞬だけ目が合った。
班員の子たちといるため声をかけるのも憚られた俺は、軽く会釈だけしてその場を離れた。昨日の事があって少しばかり俺が気まずいというのもある。いや、自分でそんな話をしておいて何様だと言われるかもしれないが。
まぁ、安芸城からすれば、突然意味の分からないことを聞かれたのだ。変な目で見られるのは当然の事だろう。
両手にソフトクリームから、両手に八つ橋に切り替えて俺は京都観光を続けるのだった。
◇
それの音声が鳴り響いたのは突然の事だった。
『扉発生、扉発生。規模は小。住民の皆様は至急、避難してください』
街中に響き渡るサイレンの音。聞けば、ここからすぐの場所で扉が発生したのだという。
近くにいる住民の避難が促され、周りにいた人々も少し不安そうな顔をしながらも避難を開始した。
扉が発生し始めてすぐの頃、人類は扉への対処に毎回出遅れた。これこそ、初期において人類が多大な犠牲を出した原因と言われており、この問題の解決は急を要した。
そこで目を付けたのが常時発生している扉であった。
人々はこの扉について研究し、そしてついては特殊な磁場が発生していることを突き止めたのだ。今では、この磁場を特定することによって事前に扉の発生を予測できるようになっている。
「避難場所は……近くの大学か」
緊急避難路を確認し、そちらに向かう。
扉から出てくる怪物にはもうすでにフリーの探索者が向かっていることだろう。規模が『小』であるなら、彼らがやられるなんてことはないはずだ。
まぁそれでも、避難指示には従っておくかと地図を見ながら大学へと向かう。
「おい速く! 急げって! 終わっちまうぞ!」
「俺、怪物とか初めてみ見るかもしれねぇ!」
「お、おい、避難しなくても良いのか……」
「何ビビってんだよ! 探索者もいるし、そんな危険じゃねぇよ!」
しかし、その途中で俺とは全くの別方向へと走っていく集団の姿が見えた。
声からしてまだ若い。恐らくは同じくらいだろうと思ってその顔を見てみれば、その顔が俺の班員の学生だということに気づいた。
「……馬鹿なのかよ」
確かに、現代において扉による被害は大幅に減った。
しかし、それによって探索者の怪物退治を見ようとする野次馬が出現するようにもなったのは大きな悩みどころだろう。
そして勘違いしてはいけないのは、あくまでも被害は『減った』だけであって、決してなくなったわけではない。今もなお周辺に被害が出ることもあるし、場合によっては死人が出ることもあるのだ。
「これも若さ故、なのかね……」
恐怖よりも好奇心が勝ってしまう。
その気持ちがわからないわけではない。しかし、万が一にもあの子らがけがを負った場合、それは探索者だけではなく、この修学旅行の監督責任を持つ学校も避難されることになるだろう。
もっといえば、今後の後輩の修学旅行に影響が出かねない。
そう考えた俺は、両手に持っていた八つ橋を一気に口の中に放り込み、班員たちを追ったのだった。
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