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5.野次馬と田中君

本日二話目です。見逃した方は前のページへどうぞ。


本日は後一話更新します。

 検診の翌日、校内は昨日の検診の話でもちきりだった。

 

 中でも生徒たちの興味をかっさらっていったのは、予想通り安芸城の件だった。


 学内初の異能レベル5ともなれば、当然だと言えるだろう。

 何せ異能レベル5なんてなかなか目にすることは無いのだ。世界人口の約七割が異能レベル3以下であり、残りの三割も二割以上が異能レベル4とされている。異能レベル5なんて数%のみだ。


 そんな記録をたたき出した安芸城は現在、多くの生徒の注目の的となっていた。

 隣のクラスの事だというのに、彼女を一目見ようと多くの生徒が隣の教室の外に集まっていた。三年生から一年生まで選り取り見取りだ。

 本日の授業が全て終わり、あとはHRを待つだけであるが、今日一日の休み時間も似たようなありさまだった。


 しかし、そんな注目を浴びている彼女の周りには誰も集まっていないという話だ。恐らくまた近寄りづらい雰囲気なのだろう。

 第三者から見ればその様はまるで初めて日本にパンダがやってきた時もこんな感じだったのではないだろうか。


「さっさと自分の教室に戻れ!!」


 始業のチャイムと共にやってきた担任は、未だに残っていた生徒達を追い払う。

 ようやっと教室の外が落ち着いたところで、担任は「もうすぐ修学旅行だ」ときりだした。


「行き先は京都だ。万が一、(ゲート)が開いた場合に備えて、B級の探索者も同行するので安心してくれ。では、修学旅行のしおりを配るぞ」


 今この世界では、突然どこかに(ゲート)、つまり異界からの道が繋がるかわからない。そのため、こうした行事での旅行の際に探索者を雇うことは義務付けられている。

 クラスメイト達は誰が来るのか、有名な人かな、などと同行する探索者の予想を始めていた。


 ついでに、(ゲート)について補足しておこう。

 現在において(ゲート)には二種類存在する。


 一つは先ほども言った通り、突発的に発生する扉。

 これは規模は様々で小型、中型、大型の三種類があり、その規模によって出てくる怪物(モンスター)の数や強さが変化する。

 どこに発生するかはわからないが、発生すれば政府の異界探索機関がこれを感知し、近くにいる探索者へ怪物の撃退を要請することになっているのだ。

 

 そしてもう一つは常時存在している(ゲート)だ。


 突発的に発生するものと大きく違うのはそのでかさだろう。分類的には超大型とされている。

 その名の通り、常時開いている扉の事を指しているのだが、これが世界各地でいくつか確認されているのだ。

 そしてそのうちの一つが、関東地方から十数キロ離れた先の太平洋上にあるのだ。


 現在では、その扉からモンスターが溢れ出さないように海を埋め立てて【異界島(いかいじま)】と呼ばれる人工島を作り、政府所属の探索者たちが管理/監視しているのだとか。

 しかし、いつどこで発生するかわからない扉よりも常時開いている扉を使う方が良いと言うことで、その島には多くの企業が支部を作って遠征などを行っているとのこと。

 決して安全とは言えないが、異界についての研究では間違いなくトップを行く場所である。


 

 さて、そんな常識をつらつらと頭の中で語っていると、教壇の担任が悪魔のような命令を出したのだ。


「好きな奴と班を組め」


 俺はこの担任を絶対に許さない。





 結局、人数が足りていない班に加わることになった。

 仲の良い人たちで集まっていたのだろう。俺が来るまで楽しげに話していたのに、来てからは遠慮して話さなくなってしまった。

 気にせずしゃべり続ける奴もいるというのに、気を使ってくれるだけの優しがあるのだろう。その優しさが本当に心に痛い。

 

 なんかごめん、と心の中で申し訳なく思いながら話し合いに加わった。

 基本的にここで組んだ班は京都の神社や寺を巡るオリエンテーションや部屋を共にすることになるのだ。


 なので、自由時間等はできるだけ単独行動をとろうと思う。せめてその間だけでも楽しんでもらえるようにだ。

 一人なんて慣れたものだ。


 担任から当日の集合場所や集合時間、持ち物の確認などの軽い説明を受けてそのまま解散となった。


 教室を出ると、先にHRを終えていた生徒たちが再び隣の教室に集まっていた。


「飽きないのかねぇ……」


 精神も若い若者の熱量というのはすさまじいものである。

 すると、先ほどまで教室の中を眺めていた生徒たちがばらばらと教室前から去り始め、最後の方の奴なんかは慌てたように走り去っていった。


 どうしたのかと思ったのも束の間、教室からその注目の的となった噂の人物、安芸城が出てきたのだ。

 逃げたのは鉢合わせしないようになのだろう。


 その行動は人としてどうなのかと思ったが、近寄り難い相手に何か文句を言われるかもしれないと考えれば逃げたくなるのかもしれない。

 そもそもの話、そうやって遠巻きに見なければいいと思うのだが。


「あら?」


 小さい歩幅で優雅に歩く安芸城であったが、彼女は教室を出たと同時に近くにいた俺と目が合った。


「あなたは……」


 昨日話したのを覚えていたのだろうか。

 彼女は俺の顔を見て何か言いたげだったが、言葉が続かなかったため俺は会釈だけしてその場を去った。


 少なくとも、あれで他の失礼な野次馬よりは良識的だと思われているはずである。

 今の彼女の境遇は何かと大変そうだなとは思うが、あと半年もすれば受験だ。それまで頑張ってもらいたいものだ。

 





「……おかしい」



 休み時間、俺は一人机に突っ伏しながら呟いた。

 すでに授業は三限目を終え、そろそろ腹が減ってくる時間だ。中には早弁する奴なんかも出てくるだろう。

 もしかしたら、俺も腹が減りすぎて厳格でも見えているのかもしれないと考えたが、チラリと腕の隙間から教室の入り口を見てみると、そこには変わらず特徴的な金髪ドリルを持つそいつがいた。


「なぜ、安芸城が俺の方を見ているのだ……!」


 もしかしたら他の奴かもしれないと思ったが、俺の席は窓際最前列。教壇近くの入り口からは一直線で、その間には誰もいないのである。


 すでにこれで一、二限目の休み時間も同じ行動をとっていたのだ。

 彼女自身、何気ない様子で教室の入り口から俺の見える場所に立っているのだが、不自然すぎて目立っている。

 すると、その様子を見ていたうちのクラスの男子が彼女の前へと立った。


「やぁ、安芸城さん。うちのクラス……ひいては、僕に何か用かな?」


 田中君だった。

 ていうか君、うちのクラスだったんだね。


 「田中が行ったぞ」「あの田中ならもしかしたら」「田中、頑張れよ…」「リベンジなるか」なんて声が教室内の男子の間で交わされている。

 あと、田中君って名前の割に話し方の癖が強かったんだな……初めて知ったぜ。


 ふふん、と然も自信ありげな様子で安芸城に話しかけた田中君。しかし、そんな彼に対して彼女はたった一言。


「あなたじゃありません。お退きなさい」


 哀れ田中君……


「なん……だと……!」


 真正面から衝撃を受けたかのように教室内に吹き飛んでくる田中君。そして、それに駆け寄っていくクラスメイトの男子たち。


「おい田中! しっかりしろ!」


「くそっ……! いったい誰が田中をこんな目に……!」


「田中でも、あの人には届かないのか……」


「男子の希望が……途絶えたっ」


 ……ギャグかな?


「ふ、ふ……君たち、なかなか言ってくれるじゃないか……」


「田中! 無理をするな!」


「ふっ……この僕に靡かない女の子もいる。世界はこんなにも広いのか……面白れぇ女、だぜ……ガクッ」


「「「「田中ぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!」」」」


 意識でも失ったかのように力なく倒れる田中君と、それをみて叫び出す男子生徒たち。


 ちなみに、四限目の授業の教師にうるさいと言われて田中君は復活。あの飛ばされたのも自分でやった演技らしい。

 


 そしてそんな田中君のキャラが濃すぎたのか、次の休み時間から安芸城が入り口付近にやってくることは無かったのだった。


 


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