20.エピローグ
本日もこの一話のみの投稿です。
第一章エピローグ。ここまでの物語は楽しんでいただけましたか?
やがて、無事に出口を見つけて脱出できた俺たちであったが、予想に反してその外には警察やら特異能隊の方々の姿があった。
どうやってここを見つけたのか聞いてみたかったが、あいにく俺にはその体力が残っていなかったらしく、安心すると同時に寝落ちしてしまったそうだ。
犯行グループであった河東や木水、その他の手下達はあの広い部屋(過去に使われていた模擬戦闘施設らしい)で気絶しているところを軒並み逮捕されたとのこと。
そして安芸城は、学校のクラスメイトと合流することなくそのまま家へと帰されたそうだ。
んで、俺はと言うと……
◇
「やぁ! 名都君。大変な目にあってたみたいだね」
病院の一室で暇つぶしにマンガを読んでいると、見た目や言動、行動が派手で奇抜な割に普通の名前の田中君がやって来た。
彼のあいさつに、「そいつはどーも」とだけ返して再び視線を漫画に落とす。
そう、なんだかよくわからないが数日とは言え俺は入院することになったらしい。あれだな、最後に寝てしまったのがいけなかった。
安芸城がそれで変に騒いでいたらしく、今現在入院となってしまったのだ。
「……で? 何しに来たんだ?」
「? 怪我をしたクラスメイトのお見舞いに来たんだけど?」
「いや、まぁそうだけどさ」
そもそも、俺と君ってそこまで接点なかっただろうに。少なくとも、お見舞いに来るような仲ではなかったはずだ。
それを伝えると、彼は「何だそんなことか」と笑っていた。
「僕は君じゃなくてもお見舞いには行くさ。なんせ大切なクラスメイトだしね」
「バナナ持ってきたけど食べる?」と聞かれたのだが、俺はそれを断った。俺の背後のテーブルを親指で指し示すと、彼は納得がいったように苦笑した。
そこにあったのは、一目で高い奴だとわかるようなフルーツの数々。中にはこれ日本で栽培してないよね? みたいなものもある。
わかる? これ全部安芸城からなんだぜ?
「彼女ならやりそうだね」
「食いきれないんだよ。田中も食べてくれ」
「いいのかい?」と聞いてくる田中に頷いてリンゴを何個か差し出した。
なんで同じ奴を複数個持ってくるのかねあの子は。
「そういえば、知ってるかい?」
「ん? 何が?」
フルーツを二人で食していると、ふと思い出したように田中がそういった。
「君と安芸城さんが関わった事件、ニュースになってるよ」
「……はぁ!?」
「ちょっと待ってね」とインターネットに繋がる端末を取り出して操作を始めた田中は、やがてその画面を俺に差し出してくる。
慌ててその端末を奪い取り、よくよく見てみれば、そこにあったのは大きく強調された文字
『大手柄! 中学生、指名手配犯確保!!』
そこに書かれていたのは、確かに先日の京都で起きた事件だった。
内容は逃走中だった死刑囚、河東延治を修学旅行に来ていた中学生が発見し、これを確保したという内容。
正確には確保ではなく気絶させただけで、後の処理は特異能隊がやったものであるが、世間的にはこういった方が影響が出るのだろう。
安芸城の名前と、彼女が安芸城グループの一人娘であることも記事に書かれていた。
俺? 安芸城に救出された男子中学生って載っていますが何か?
「今学校じゃ、みんなその話でもちきりだよ。君も、復帰したら覚悟しておいた方が良いかもしれないよ?」
「お、おう。肝に銘じておくよ……」
戻った時の事を想像して思わず頬が引き攣ってしまう。
そんな俺の様子に、頑張ってねと一言だけ告げた田中君だった。
「それじゃ、僕は帰るよ。バナナ、置いておくね」
「いや、もういらないんだが?」
「まぁそういわずに。僕もせっかく買ったからね」
「それじゃあ、また学校で」と言い残して去っていった田中君は、病室の扉を開けて誰かと会ったのだろう。
少しだけ驚いたようで体が弾んだが、その出会った人に軽く挨拶をして今度こそ病室から出て行った。
で、田中君が出会った人物だが……
「名都さん、お元気ですか?」
「暇すぎて死にそうなんだが?」
田中君と入れ替わるように病室に入ってきたのはご存知安芸城。
これで俺が入院してから毎日ここに来ていることになる。
そんな彼女は、いつもと同じようにベッドのすぐ横にあった席に腰を下ろした。
「田中さんが来ていらしてたんですね。何をお話されていたんですか?」
「普通にお見舞いに来てくれたんだと。バナナくれた。あぁ、それとあの件についても」
ついでに、先ほど田中君に教えてもらった記事について話を振ってみた。
すると彼女は、「あら、もう読んでいたんですか?」と笑っていた。
「安心してくださいまし。名都さんが寝てしまった後で事情聴取を受けましたが、あなたに関わることは何一つお話していませんわ」
「そうなのか……ありがとうな」
「ええ、もっと感謝してもらっても構いませんわよ? まぁ、私一人の手柄、見たいになってしまったことは申し訳ないのですが」
「そんなことないよ。約束、守ってくれたんだろ。感謝はしても、文句何て一つもないさ」
――だから、ありがとう
そう彼女に伝えると、目の前の少女は嬉しそうに笑ってくれたのだった。
こうして一人の女の子を守りきれたのだ。俺自身、もっと自分の力を誇りに思ってもいいだろうか。
よくわからない存在に力を与えられて転生し、その異端な力を持ってしまった自分が怖いと思うことも多々あった。
そんな力を、人の為に、この少女の笑顔の為に振るうことができたのだ。
「――ああ、よかった」
「? 何かおっしゃられましたか?」
「いや、何も。それより、ここで約束をはたしておこうか」
そういうと、彼女はその約束に覚えがないのか首をかしげていた。
そんな彼女の様子に俺は苦笑してしまう。
まぁ、それでも約束は約束だ。彼女が覚えていなくても、話しているうちに思い出すだろう。
そう思い、俺は夕日の射す病室の仲、自分語りを始めるのだった。
第一章の完結です。
ここまでの物語はいかがでしたでしょうか。実のところ、第二書の書き溜めが心もとないため次の更新は未定です。ある程度でき次第、毎日……は無理なので、週一程度の更新になると思われます。
二章は中学生編の続きとなる予定です。
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あ、番外編は明日投稿しますね。




