a2.火事の後日談
パートaの話です。
「美紅…」
それが妹だと、今は言ってやれない…私の大切な人だった。
思い出すのはあの日…。
もっと上手く立ち回っていたら…何度目かもわからなく、、そう考えて苦笑いした。
…変える事などできない。
「大丈夫だよ。」
妹の美紅にそう言ったのは確信してたから。ーまあ、まさかその確信に裏切られるとは思わなかったし。
私は両親がただ者ではない事は知っていた。…私は記憶力が人並み以上にあるのが原因か。
元某国諜報機関の私達。
母はそういった。
幼い…1歳の頃の記憶、母が電話越しに言った事をベビーベットに座っていた事を私は覚えていた。
父も母も緊急事態にどう動けば良いかなんてわかってる筈。そういう事に職業柄慣れていると思っていたし、だからこそ私たちは部屋に戻る事より、避難する事にした。
…結果的に母と父は焼死したのだと。
それが事実だと、火事の中で出会ってそのまま私の上司になった男は話した。だが、私の上司…は事実を伝える、それだけで終わるような優しい性格では無かった。事実昔も今もきっとこれからも彼は鬼畜なんだろうなと遠い目になる。ホントやめて。
あろうことか彼は、これからは死体も見る事もよくある事になるかもしれないから慣れときなさい。そう言って両親の焼死死体を見せられた時は、泣き崩れた。親を亡くし姉妹と半永久的に生き別れになったばかりの子供には我慢ならなかった。
だが、あの時心底この事実を、残酷な両親の焼死の証拠を見せられるのがあの可愛い妹でなくてよかったと思った。
「僕のことは…ミスタとでも呼べば良い。」
そういう感情面にミスタは付き合うことなく冷静に話をするので私も心配だった事を聞いたのだ。
「…ミスタ、妹は、どうなるの?親戚はいないから、やっぱり施設になるの。」
「まぁ、そこは心配しなくていいよ、お嬢さん。…今確認したら海外に母親の妹がいてね、引き取ってくれるそうだよ。君の事は事情で話せないし、妹には行方不明としといて欲しいと通達したしね。」
「そう…よかった。」
よかった事なんてあの火事以来あっただろうか。…わからないけどよかったと思えるように、思いたいからそう呟いた。
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