b2.姉の職場
警察庁→警視庁に変更(2020.5.2)
瞼が重い。重いのにそれに反発して朝日の光がこじ開けながら目に入ってくる。
ベット上の棚を見ると5:30のデジタル時計
「…補習の日かぁ。」
ノロノロと布団から這い出て支度をする。やがて台所に立ってパンをトーストで焼けばこんがり匂いが漂う。
「…朝ごはん?くはぁ〜〜ゆめちゃん朝早いねぇ…どうした、補習?」
大欠伸してるけど…ちゃんと寝たかな。
「うん。お姉ちゃんもご飯食べる?」
「いや、いいよ。要らない。補習私が学生の時もあったなぁ…頑張るんだよ。」
「うん。」
プルル…
「電話…ちょっとゴメン。」
「いいよ。」
「はい、私です。…わかりました。転送して送ってくだされば結構です。はい、では…」
「仕事?」
「まぁ…ってコラ。人の携帯を覗くんじゃないぞー?」
姉の携帯には少しボサッとした男の人がこちらを睨み返していた。
思い違いでなかったら、この人…
「ごめんなさい…。ねぇ、この写真の人お姉ちゃんの知り合い?昨日町で声を掛けられた人に似てるんだけど…?」
「…!ゆめちゃん…」
姉は視線をウロウロとさせ沈黙した後…少し眉を寄せて口を開いた。
「ちょっと、ゆめちゃん支度できたらおいで。…あって欲しい人がいるの。」
「…へ?」
「学校は休みの連絡いれとくから。」
姉に流されるままに朝食を食べ終えて支度し、姉の運転する白の丸っこいデザインの車に乗り込む。内装は広いが、これでも軽型車なんだそうだ。
「ねぇ、どこ向かってるの?」
「私の職場…警視庁だよ。まだゆめちゃんには言ってなかったでしょう。」
「うん…どうして今更教えたの?」
「ゆめちゃんはある事件の重要参考人だから。」
「重要参考人…」
「ゴメンね…変な事に巻き込みたくなかったから今まで仕事の事言ってなかったのに。巻き込んでしまったねぇ…。」
「私が悪いでしょ?…今朝の携帯の中の写真が関係してる。」
「そうだよ。…ついた降りて。」
*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*
「この子が貴方の妹さんで重要参考人?」
「はい。先輩」
「…そうね。地下の方の部屋に行きましょう。」
「はい。では聴取室の鍵取ってきます。すみませんが妹と先に行ってて頂けますか?」
「わかったわ。妹さん、行きましょうか。」
「ねえねえ…お姉ちゃん。」
姉の袖口を引っ張る
「何、ゆめり?」
「いや、なんかお姉ちゃんがちゃんと社会人やってるなぁ〜〜とか思うとなんか感動して。」
「…やめてよ〜もう。どこの授業参観で我が子見て泣き始める親御さんなの〜〜!?」
「ぷっ!姉の立場が泣いてるぞ?大葉。」
「皆川先輩はうるさいです。では行ってきますので。」
「はいはい。ふっ、妹さん任されました。」
コツコツ姉の先輩だという皆川さんのヒールが鳴る。
私達二人はエレベーターに乗った。皆川さんがスーツの懐から青いカードを取り出しカードをスライドして階を選択するタッチパネルを操作する。
「で、妹さんはお姉さんの仕事についてはどれだけの事を知っているの?」
「実の所、殆ど知らないです。今日警視庁で働いてる…って知りました。
あの…姉って警察官…?なんですか?」
「あまり知らない方が身の為よ。
…貴方が大葉のスマホで見た情報は幸運な事に機密情報では無いしね。ただ事件に関わってしまったとなると。」
チーン、地下特別階です
「…ま、盗聴の恐れがあるから詳しくは部屋で聞くわね。」
エレベーターを降りると、長い廊下…無機質な白い壁に重々しい木のドアが何個とも並んでいる。
そのうちの一部屋に入る。部屋は二つに仕切られていてガラス越しにパイプ椅子とテーブルが見えた。
…ここが所謂、聴取室なのか。
「ちょっとここで待ってなさい。」
またまた懐から薄手の黒色の機械を取り出す。
懐から色々出てくるね〜まるでどら○もんの四次元ポケットみたい。
「…無いみたいね。」
…何がないんだろ?
カッカッ…
「先輩、盗聴の恐れはないみたいですね。」
「えぇ、鍵は?」
「ここに」
ガチャー
「入ってーそこに座って。大葉、録音機セット。」
「セット完了です。どうぞ」
姉が、ノートパソコンを取り出しカタカタとやる。
「今から任意事情聴取を始めます。201x.o.o.月曜、8:25
取調べ員、皆川ー記録者、大葉
任意事情聴取者ー大葉…名前聞いてなかったわね。名前は?」
「夢里です。」
「ー貴方が話しかけられたのはこの写真の男で間違い無い?」
「えーっと、はい。」
「なんてはなし掛けられたの?」
…そんな感じで、任意の事情聴取は続けられた。
*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*
「疲れたぁ…」
「大葉もう今日は帰っていいぞ。」
「ですが…」
「…妹さんを送り届けたら直帰で。いっとくがな、これも立派な仕事だ。」
「ゆめちゃんおつかれ〜ねぇ、疲れたなら寝てていいよ?」
「悪いよ…いいって、、、うぅ眠い…」