b1.5 姉からの電話
二人で暮らす事になった経緯の電話。
高校受験…親の再婚もあってどこを受けようなんて迷った挙句に、住む所は首都といえど田舎めいた景色の続く地元の高校ではなく、他県からの生徒も多いと評判の都内中央部の私立高校を受けた。
寒空の下、マフラーに首を埋めて懐にカイロを入れて見上げたのは合格発表だった。私の受験番号o135ーーつまり合格。
「実家から通うのも、遠いでしょう?…下宿でもいいんだけど、今日叶から電話があってね…」
「お姉ちゃん?…ってか今何やってるの?」
姉は最近実家に帰って来ないが母さんは姉と連絡は取っていたらしい。
「叶の所で一緒に住まないかって。詳しくは本人から聞きなさい。」
自室に戻るとスマホの電話帳から大葉叶を探し出す。姉は2コールもしないうちに出た。
「もしもし、お姉ちゃん。ゆめりに何か用?」
ドアにもたれかかって座り込む。懐かしい姉の声がした…そりゃそうかも、姉が実家を出てから電話なんて一度もしてない。
「合格のこと聞いたよ〜おめでとう。
…母さんから聞いたかもしれないけど、同居しない?ウチ広いし。」
「…悪いし、いいよ。」
仲が悪いわけではないけど年の離れた姉妹だ。友達以上家族未満、なんとなく止した方がいいのかな、なんて気分にもなる。
「えぇ〜〜あっ、ゆめちゃん。今母さんいる?」
「居間にいるから代わるよ。」
「待って待って、いない方がいいの。」
姉は声を落として囁いた。
「母さん、今再婚を考えて付き合ってる人いるんでしょう?…もーそろそろ同居もするみたいだし、居心地悪いなら。」
手持ち無沙汰で前髪を触る。長いや、切らないと。そんな事を考えつつも姉の話に耳を傾けた。
「多分、だけど。母さん再婚するよ〜?」
「佐藤さんの事?…私も高校になったら寮か下宿はしたいと思ってた。」
「じゃあ尚更、都会はゆめちゃんが思ってる以上に怖い所だからさ、妹がそんなトコで一人で暮らすなぁ〜んて不安じゃない?
…おいで、ゆめちゃん。」
「うん。」
一度は断ったものの優しい声色の姉の声に自然と同意の言葉が口を突いて出た。
お読みいただきありがとうございます。割り込み投稿初めて使った…失敗してないといいな。
…都会って怖いんだよ、まず駅構内で迷子になる。