超有名な人は腹黒女でした
今回から新しい章に変わります!ドンドンパフパフ
称号ジャンヌ・ダルクと名乗ったその女性は僕をある店へと案内した、ゴツい人ばっかだ・・・
剣を腰につけてる人もいれば背中に斧やハンマーを背負ってる人もいる、さすが異世界、様々な武器で戦うところがまたいい
「席は・・・この変でいいかしら」
そう言って空いている席に腰を下ろす、ここに来る間に質問とかあったら遠慮なく聞いてね?、助けてくれたお礼だからと言っていた、もちろん聞きますとも称号の事とか称号の事とか称号の事とか
「さて、それじゃあ少しお話しましょうか、まず何からしようかしら」
「称号持ちについて」
さっきから気になっててつい反応して聞いてしまった
「そんなに焦らなくても教えるわよ・・・」
呆れた顔でそう言ってくる、なんかすいません
「じゃあ称号持ちについて話すわね、まず──」
と、そこから称号持ちの説明が始まった
異様な力を持った人間を本などに出てくる英雄の名前で呼ぶそうだ、それが称号として扱われる事となり今では称号持ちと呼ばれる・・・らしい、うん異世界っぽい
「で、不思議なのは称号持ちと普通に戦う人との差なの」
「と言うと?」
「例えば称号持ちと普通に戦う人が一騎打ちしたとするでしょ?その場合称号持ちが勝つのよ、普通の人に何もさせずにね」
なるほど、称号持ちはそれほど強力な力があるのか、警戒すべきだな、いい情報でもある
「その原因なのが称号持ちが必ず持ってる能力なの」
能力?そこに僕はすぐに反応した、よくよく考えるとエリザは気づいたら隣にいる、そう気づいたらだ、もしかしたらその能力と何か関係があるかもしれない
「私の場合でいえば右目にその能力の一つがあるの」
「目・・・魔眼ですか?」
「魔眼ではないわね、近いけど」
え?なにそれ?、曖昧な答えをしてきた、ここまでされると気になる、気になりすぎて焦ってくる
「ま、見せるから待ってて、すぐだから」
「はぁ・・・」
ここは待つしかないな、そう思い待つ事にする
対して目の前の女性、ジャンヌは目を閉じ数秒してからまた開ける、右目には青い瞳ではなく蒼紫の目があった
────────
「上手くやってるかしら」
ふとそう呟いてしまう、らしくないわね、魔王である私がこんな事思うなんて、珍しい物でも手に入れた感じだわ、あっ手に入れてるわね
なんて思いながら本棚の整理を顔まで覆う鎧を着た悪魔としている
「魔王様、よろしいのでしょうか?私なのが触って・・・」
「いいのよ別に、他のやつに触らせても発狂したり破裂したりで色々面倒くさくなるし」
「なのに私に手伝えとて頼んだんですね!?」
え?ダメだった?と言わんばかりのキョトンとした顔をして誤魔化す私、我ながらいい演技
「ここにある魔導書は全部禁呪魔法しかないからね、称号持ちじゃないやつが触るとさっき言った通り発狂するか破裂するの」
そう言いつつ本棚にある魔導書の位置を入れ替えていく
「あいかわらず魔王様は何を考えられているのか・・・」
「いい事を教えましょうか?敵に勝ちたければ自分の思考を知られない事よ、常に偽りだけを見せる事、見せた上でその隙を突く」
「そんな事魔王様しか出来ませんよ、自分は斬る事しか出来ませんし」
そう言って鎧を纏った悪魔は腰にある剣を触る、いついかなる時も一緒にいる愛剣だったわね確か
「そう言えば先ほどの言葉・・・上手くやっているかなとは?」
「ん?勇者の事よ、実験のついでに情報集めさせてるの、目立ったら終わりだからそこが心配で」
「なるほど・・・あの異様な強さの少年ですか」
あの実験・・・勇者が最弱である第8師団の教官になった報告は全悪魔に言ってある、信じない者もいるが実際にやれば分かると言うととんでもない速さで手のひらを返し信じる奴がほとんど
武器を握りつぶせるとなると格闘戦だが全力で走っても子供が走ってくる速さくらいに見えるという仮説を付け加えるとようやく全ての悪魔が実験の報告を信じた
「ジャンヌ・ダルクにあってなければいいんだけどね・・・」
「魔王様と戦って生きている人間ですね」
「正確には生かしただけど」
そう、あの女と戦った時ふと思ってしまった、何かに利用出来ると、だが何に利用できる?出来るとしてそれはなんだ?戦ってる最中常にそれが頭を埋めつくしてくる、私は気分が悪くなりジャンヌ・ダルクに動けない程度の傷を負わせ貴方は私に生かされいずれ利用される立場になると言い残した
今だと想像するだけで利用出来るか出来ないかと考えてしまい頭が痛くなる、でもそれは昔、今は慣れて頭痛はしない、気分は悪いけど
「それでそのジャンヌ・ダルクと言う女のどこに不安要素が?」
「能力よ」
そう・・・奴が持ってる能力で勇者がしてる手袋を見られるとまずい、あれには弱体化の魔法を私の力で付与している、勇者が普通に戦えば目立つことくらい分かる、だからこっちでちょっと強い子供に見えるくらいまで弱体化させた、手袋を使って
だが奴の能力で見られると魔王が作った手袋だとバレてしまう
「危険ですね・・・してその名前は?」
「覚えておきなさい、絶対脅威になるわ、名は──」
────────────
「能力眼、これが私の持ってる能力の一つ」
「能力眼・・・ですか」
あまり言いたくないが目じゃない色をしている、青紫など気持ち悪過ぎて見たくない、これじゃまるで────
「その顔が何を言ってるか分かるわ、呪われている目みたいだ、でしょ?」
その問いには黙るしかなかった、動作や口に出して言っていいことではないからだ、たとえ本人が言われ慣れてるとしても
「責任とかは全然思わなくていいからね、言われ慣れてるし」
そう言って瞬きをしたと同時に能力眼が消えた
これは責任とかではない、ただシンプルに申し訳ない、少しでも気持ち悪いと思ってしまった自分が恥ずかしい、これでは・・・
「あいつらとしてる事が一緒じゃないか・・・」
「あいつらって?」
声が震え泣きかけた顔で言ったが興味無さそうな声でそう言われた、あまりの興味無さそうな声に思わず
「腹黒女ボソッ」
「うふふ、いっつも周りから言われるから効きませんよ〜」
なんだろう、なぜか悔しい、この笑顔の奥にある無表情の顔が頭に浮かぶとなんかうぜぇ!あっ今なんか笑ってる顔も思い浮かんだぞ!
チクショォォォォォ!!!!
「こほん、話がそれそうだから話すわね、能力眼の能力についてだけど・・・簡単にいうと見た能力を分析できるわ」
「分析・・・」
「そう、見た能力のあらゆる情報を分析できる、どういった能力かはもちろんの事、作り方、使われた素材や力なども分析できる」
それは強いな・・・分析された上で作戦とか立てられたら魔王でも勝てないんじゃ・・・
「ただ一つ欠点があってね、意味の分からない情報とかも無条件で頭の中に入ってくるから意味わからなくなるのよね」
はぁ・・・と溜息をつきながらそう言った、物理的な考えをすれば見ただけで能力に関する情報が全部頭の中に入ってくるはずだから脳への負担も大きいし酷使すれば疲れても来る、その中には当然意味不明な物も含まれるだろう、そう考えると扱いが難しいと思わさせられる
「ところで一つ聞きたいんだけど・・・」
「何でしょう?」
すると2人の周りの空気だけ違和感がある、周りも静かだ
いや・・・正確には異様な空気の原因は目の前の女性、ジャンヌ・ダルクにある
「右手につけてる手袋・・・それ────」
「やっと見つけたわ!!!」
そう言いかけたジャンヌ・ダルクを前に叫んだのは店の前で立ってるおっさんだった、私服である
それなりの体付き、高そうなブーツ、長いズボン、茶色のジャケット、糸でできた感があるシャツ・・・極めつけはふさふさそうな髭、うんおっさんだ
そのおっさんはこちらに近づいてくる
「何をしているジャンヌ・ダルク!遠征中に急にいなくなりおって!」
「はぁ・・・いつも思うけど早くない?見つけるの」
などと、目の前で会話している、次第に周りからザワザワ声が聞こえてきた
「ジャンヌ・ダルクってあの第3騎士団の!?」
「中央帝国で後方支援騎士隊なのに団長が強過ぎて3番目に強いあの騎士団の団長か!?」
へぇ、この人随分と僕に隠してる事が多いみたいだな、ちょっと今怒ったぞって今中央帝国とか言わなかった?
「あっこのおっさんの紹介まだだったわね、名前はゼノン・フルート、ゼノンは見た目に似合わないのでおっさんって呼べばいいわ」
「適当過ぎだろ!」
目の前でコント見せられてる気分だ、不覚にも少し面白い
「ゼノン、私はこの少年と話しています、しばらくは戻りません」
「何を言っている!お前が戻らないと遠征が────」
ゼノ──おっさんが何か言いかけた時ジャンヌ・ダルクはイスに座りながら両手を組み何かに祈る動作をした、その姿はさながら神を信じるシスターのようだ、そして付け加えるように一言
「神よ・・・隣にいるおっさんに雷にて制裁を下したまえ」
そう言った瞬間どこから来たか分からない雷がおっさんを直撃した
「あばばばばばばばばばば!!!」
見た目からして40強くらいの歳だろう、可愛そうに
そう言って拝むポーズを僕がした、同時に今の出来事をジャンヌが説明してくれる
「今が私のもう一つの能力、神への祈りってやつ」
そこから更にその能力について説明してくれた
神へ祈りを捧げる事により神がジャンヌの言う事を聞く能力だそうだ、祈る量と時間次第で願い事の内容も大きく変わってくる
「ちなみに絶対と必ずに近いお願いは実現されないわ、中立な願い事じゃないと今みたいにすぐ発動しない、あれ以上の効果を望むならもっと祈る量と時間を増やさなきゃ」
なるほど、これまた扱いずらい能力みたいだ、攻撃するという目的で使うとするとさっきみたいに速射性があるのを発動しようとすると数秒の祈りで足りるが大穴を開ける巨大な雷という内容にすると祈る量と時間が増えてくる・・・か
「しかしそれだとつじつまが合わない」
「なんのつじつま?」
「確かに祈るだけで攻撃ができるのは強い、能力眼で敵の能力を見抜くのも強い、しかしそれだけで強過ぎるかと言われればそうじゃない」
能力眼は相手の能力を見抜くだけであって攻撃手段じゃない、神への祈りは攻撃こそ出来るが祈る必要がある、それは狙ってくれと言ってるようなもの、だから不思議だ
「なんで貴方はそんなに強いのか、未だに分からない」
「・・・」
沈黙で返したな、そう思った時
「戦場に出れば嫌でも人を殺すあるいはそうゆう知識が手に入る」
倒れていたおっさんが起き上がりそう言ってきた、結構暗い顔をしている、だがやはり違う
「知識は分かりますが殺すのは何故ですか?後方支援騎士隊のはずですよね?」
さっきのザワザワ声から聞こえたのが正しければ後方支援騎士隊は名前通りなら支援部隊のはず、殺す立場じゃなくて傷を治したり食糧などの管理をするはず、なぜ殺すのと言う単語が出る?
「1度だけだが我が軍は魔王軍に敗退した時があった、その時はとにかくひどい有様だ、逃げる奴もいれば立ち向かうものもいた、だが全員殺された、ジャンヌ・ダルクを除いてな」
「へぇ・・・」
あの怪物とやり合って生きてるのか、そりゃ強いわけだ
「ジャンヌ・ダルクは元々戦闘はできる方だった、だが前衛で通用するかと言うとそうじゃないんだ、でも魔王と戦った後のこいつの身体能力は化け物みたいに違った」
その日から幾多の戦争に参加したが後方支援騎士隊のはずのジャンヌが前衛にとにかく出て敵を壊滅状態に追い込み、前衛担当の騎士団が残りを殲滅するハメになるらしい、能力を一切使わず直接的な攻撃のみで
「本当・・・あの時は上には上がいるってつくづく思う日だった」
震えながらそうジャンヌは言った、それを慰めるようにおっさんはジャンヌの背中を触る
「触んな変態クソおっさん」
「慰めようとしたのになんて言い様なんだ!?」
「うっさいとりあえず触んな」
「嫌われてる!?いっつも笑顔でおっさんとか言われてるけど今日やけに嫌そうな顔でおっさんって言うな!?」
「それ演技だから」
「ぐふっ!」
あっクリーンヒットみたい、会話を聞きながらそう思っていた
この2人仲いいのか悪いのかよく分からない、いや演技とか言ってたし本心か、ドンマイおっさん
「ま、色々あって欲しくない技術が身についたってわけ」
嫌々でやったがいつの間にか潜在能力を引き出していたという事か、人間あるあるってやつだ
「さて、おっさん来たし帰りましょうかね」
「やっとその気になったか!」
ジャンヌが立ち上がりそう言った
てかこのおっさんさっき雷当たったよな?それでこんなピンピンしてんの?怖くね?もしかしてここのおっさんってこんなもん?
「ちなみにここ冒険者ギルドだからついでにとうろくもしといたらどう?」
「は?」
ここ飲食店じゃないの?冒険者ギルドなの?
「なんで言ってくれないんですか・・・」
「忘れてた✩」
テヘペロと言う動作でそう言った、その動作に思わず僕は右手を上げ攻撃準備に入る、威圧力もおまけしとこうか
「ごめんなさい許してください」
超高速で土下座をした、なんか面白いから許そう
そう思い上げた右手を下げつつ威圧感も解いていく
「ふぅ・・・焦った・・・」
?、なんで焦るんだ?
「では私はこれで、またどこか出会いましょマサヤ」
「えぇ、分かりました」
言い方直せ、腹黒女
────────
マサヤと別れゼノンと共に騎士団と合流し周辺を探索する事になった私は服から鎧へ着替える
上は女性専用と言えるだろうが下は何故かドレスっぽくなっている、でも動く事に支障はないので気にしてはいない、専用の馬に乗り騎士団を率いて壁の外に出て指示を出す
「ではこれより中央帝国第3騎士団は遠征を開始します、目的は周囲の索敵です、異常や何か発見した際は私に伝えるように、では出発!」
私の合図とともに騎士団は班ごとに別れそれぞれ別方向に行きました、さて私もこの辺りを少し散策しますかね
(ってやりたい所だけど・・・)
マサヤがしていた手袋・・・あれを能力眼で見た時見覚えのある情報があった、私を攻撃した魔力の情報があった
私が魔法攻撃を食らったことなど魔王のあの攻撃以外まだない、だがあの手袋からはその時の魔力の情報があった、なぜだ、そんなの分かりきってる。それは・・・
「彼は少なくとも魔王と接点がある」
誰にも聞こえない程度の小声でそう呟いた
ジャンヌ・ダルクの設定する我ながらいいと思うんですけどね・・・あっ貴方もそう思いますかそれはよかった(決めつけ)
では次回