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最後のいき

作者: 有機ぱん

30XX年、地球が核に犯されてから50年が過ぎた。

多くの人間が死に、生物も住む場所を無くし全滅していった。

人間は核戦争がおきてようやく分かったのだ。

”核”と言う物質がどんなに恐ろしく、人間の手に負えないかを…。



私は今年で17歳になる。

人間が行った罪を知らず、この放射線で汚れた中で生まれた。

父と母は研究者だった。

母は私を生んですぐに死に、父は私が10歳の時に亡くなった。

私にこの汚れた世界で生きる術を叩き込み、この周辺にいる生きている人間は父と私だけということを言いながら死んだ。そして、私はひとりぼっちになってしまった。


父から外に出てはいけないことを何度も聞かされた。

だから私は厚い鉛で出来たこの建物の中から出たことは無い。

父が語った昔話しに出てくる青い海や空、緑の森や山を一度も見た事が無い。

それを悲しいと思ったことは無かった。だって、私が産まれた時には青い空なんて存在せず、海は枯れ、緑の森や山は戦争によって全て焼かれてしまったのだから。


【…発信ヲ開始イタシマス…】


機械音が部屋にひろがり、私はマイクを取りいつものように話す。

きっと誰か遠くに住んでいる人間がこれを聞いてくれると信じて。

父が毎日毎時間していたように、馬鹿みたいに父が死んでから私も行っている。

朝起きて発信、ご飯後に発信、本を読んでから発信、そして寝る前に受信。

届いているのか分からない行為を何度も機械みたいに毎日過ごす。



………。



でもね、私は気づいているの。

もう何年も、いや、私が生まれる前から受信された言葉なんて無いことを。

もう、この地球には私しか人間がいないということを。

私がこの地球最後の”いき”だってことを。


私はひとりぼっち。






そして私はまた朝を迎える。

寝ている時に出たであろう鼻血の乾いた冷たさと、涙で腫れた瞼の熱さで生きている実感と戦いながら。




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