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立場

1話です!!

どうぞ!!!


六時半を過ぎているのに一向にアイツは部屋から出てこない。

…まぁ、いつものことなのだけれど。

ハァと、溜め息をついた後、俺はアイツの部屋まで行く。

ドアをノック、応答無し。

ドアを開け、ダンゴムシのように丸まっている布団の前に座る。

「おい…」

応答無し。

「起きてる?」

応答無し。

ダンゴムシを叩く。

モゾモゾ動く。

よし、応答あり。

「朝だぞ、早く起きろ」

耳があるであろうダンゴムシの前の方に口を近付け声をかける。

すると、ひょっこりとダンゴムシから顔が現れた。

「眠い」

「でも、今日、学校」

「めんどくせぇ」

ソイツはウゲッと吐く真似をする。

ムッとなってソイツから布団を引き剥がす。

「うわっ!?」

ソイツは盛大にベッドから滑り落ちて、頭を抱えている。

それによって、肩まで伸びた夜空のような色の髪が乱れる。

「起きろ」

「イッテェ…」

ソイツは頭をさすりなから起き上がる。

「痛いんだよ。もうちょっと優しくしてよ。美来」

「早く起きないからだ。さっ、飯はもうできてるから。着替えて降りてこいよ。晴歌」

「…分かったよ」

まだ、何か言いたそうな顔をしているのを無視して、俺は部屋から出た。



「行ってきます!!」

「行ってきま~す…」

誰もいない家に声をかけてから、俺達は学校へ向かった。

「めんどくせぇ~」

「仕方ないだろ?高校に行かなくちゃ、内申下がるだろ?」

「分かってるけど…」

口々に学校の文句を言っているのは、遠野(とおの) 晴歌(はるか)

そして、その話を聞いて溜め息をついている俺は、遠野(とおの) 美来(みらい)

一応、同い年で義理の兄弟、だと思う。

思う、と言ってるのはそう言っていいのかどうか分からないから。

晴歌は俺の顔を覗く。

「何だよ?」

「いや、首と指に父さんの薬、塗ったかなって、思って」

「ちゃんと、塗ってある」

「そっか」

晴歌は小さく安堵のため息をもらす。

ん?薬って何のことだよって?

まぁ、それはいずれ話すこととして…。

俺は人間であって、人間ではない存在だ。

意味わかんねぇ、と言う奴もいるだろうから、説明をした方がいいかな…。

まず、俺は人間の理に反している。

人間の最大の理。

死。

そう、俺はいわゆる不死身なんだ。

理由は詳しく分からない。

死んだことは何度もある。

…いや、死ぬようなことを何度もされたことがある、と言えばいいだろうか。

例を出すと、心臓を銃弾で、貫く。

毒薬を飲まされる。身体をバラバラに切る…、などなど。

まぁ、全て言っていると長くなるからこのぐらいにしておこう。

他にも色々されるがままにやっていた。

だが、時間が経つと傷跡や痛みが綺麗に消えて元の身体に戻る。

そんな不死身の俺に興味を持った大人達は、俺に傷を付けたがった。

そのお陰でご丁寧に傷が残り、髪を金髪と黒髪の二色にしてくれた。

酷いもんだよ。

今は晴歌の父親である友仁朗(ゆうじろう)さんに引き取られ、普通の高校生活を送っている。

…いや、一般的には最悪な高校生活、かな。

学校の校門に近付いた所でいつものメンバーが見えてきた。

すると、晴歌もそれに気付き俺を隠すように俺の前に出る。

「どうした?晴歌」

「惚けんなっ!!アイツ等にお前、拉致されんの分かってんだろ?」

「拉致じゃない。同行だ」

「っ!!アイツ等の何処が、拉致じゃないって言うんだっ!?」

晴歌は俺の方に向いて、怒鳴り散らす。

本当に優しい。

俺は晴歌に笑顔を見せる。

「…俺が、積極的に行ってんじゃん」

「っ!?」

晴歌は何か言い返そうと口を動かしているが、上手く動いてくれないらしく、晴歌の声は俺には聞こえなかった。

俺は晴歌が何を言おうとしているのかは、よく分かっている。

多分、なんであんなことを美来がされなくちゃいけないだ、とでも言いたいんだと思う。

けれど、これは約束したことだから守らなければいけない。

俺は晴歌をおいてソイツ等のところに足を運んだ。



学校の屋上。

そこでは俺を取り囲んで楽しんでいる輩たちがいる。

そんな奴等の一人の脚が俺の脇腹にめり込み、嘔吐してしまう。

「うわっ。キメェ」

ケタケタ笑う声が耳に谺する。

俺はグッと髪を引っ張られ、顔を無理矢理合わせられる。

「お前が、これ、処理しろよ?」

コイツ等のリーダーである、羽村(はむら)はニヤニヤしながら言う。

「……」

「オイオイ、無視すんなよ?」

羽村は機嫌悪そうに舌打ちをして、俺を投げ飛ばす。

人間なのになんて馬鹿力だよ。

そう感心してしまうほど、俺は冷静だった。

…もう慣れてしまったからだ。

「あのなぁ、バケモン。オレを無視すっとどうなんのか、分かってるよなぁ?」

そう言って羽村は俺に近付く。

俺はなるべく下を向いて、何も言わない。

俺はこれが最善策だと思ってるから。

どうせ、怯えたら面白がってもっと殴られるし、刃向かっても倍に返されるだけだ。

なら、黙ってこのまま飽きてもらうのを待つ方がよっぽどいい。

「オイ、バケモン?聞いてんのか?ついに死んだのかぁ?あぁ?」

そう言って俺の顔を覗く。

俺はなるべく気絶しているように目を瞑っていると、羽村は最後の蹴りをいれて何処かに行ってしまった。

やっと、終わった…。

俺は最後に蹴られた所を手でおさえながらゆっくり立ち上がる。

まだ痛みはあるが、どうせすぐに痛みは消える。

俺は溜め息をつきながら、ゆっくり歩く。

どうせ助けなんて来ない。

自分でこの場所を始末して、自分で戻らないといけない。

晴歌と数人の奴等以外、俺を怖がって近付かない。

先生や大人達も、だ。

そりゃ、大怪我していたにも関わらず、数時間後には元に戻っているのだから、不気味で近づかないのも無理もない。

他にも理由はあるのだけれど…。

まぁ、要するに俺は怖がられているから皆の俺の呼び名は『バケモン』。

そして、羽村達は苛めても誰にも怒られないし何度も怪我をさせてもすぐに怪我が治る俺を標的にして、楽しんでいる。

フッと溜め息をつく。

校庭の方に目を向け、俺は時計を見る。

授業はもう二時限目に入るだろうから、三時限目から授業を受けた方がいいだろう。

今日は、結構キツかったし…。

じゃあ、まだ片付けなくていっか…。

そう思って、座ろうとしたがすぐに立ち上がって、スッと横に避ける。

ドテンッ

横で思いっきり滑って転んだ音がする。

下を見ると、ピクピクしている晴歌がいた。

「晴歌?大丈夫か?」

晴歌はガバッと起きて、俺を睨む。

「お前が、避けるからだよっ!!」

「仕方ないだろ?今、お前に抱きつかれたら俺が死ぬほど苦しくなる。身体中が痛いんで」

そう言うと、俺の状況を理解している筈の晴歌は忘れてたと言わんばかりに情けない顔を俺に向ける。

…本当にコイツは馬鹿だ。

「わ、悪い…。つい、見付かったから、嬉しくて…」

晴歌は急にシュンと、落ち込んでボソボソ言い訳を言い出した。

俺は思わず大きな溜め息をつく。

「わかった、わかった。俺も急に避けて悪かったよ。でも、俺は足音があんまり好きじゃないから癖で避けちまうんだよ」

晴歌はそのことも知っていたのでますます落ち込んで、俯いてしまった。

どうしたものか…。

俺が少し困っていると、また足音が聞こえた。

「あっ!!良かった~、見付かったんだ!!」

振り返ると、安堵の顔を浮かべながら永咲(ながさき) 真琴(まこと)が俺達に近寄る。

真琴は俺と晴歌の幼馴染みで、俺の数少ない友達だ。

「真琴も、俺のこと探してたのかよ?…すまん」

俺は申し訳なく思って謝る。

すると、真琴は俺の方に目を向けフッと笑う。

「美来を探してたのも、あるけど…」

真琴はそう言って、晴歌に視線を向ける。

俺は、あぁと頷く。

そう言うことか。

「色々、すまん…」

「構わないよ。俺の友達だからな」

ニッと笑う真琴。

俺も真琴につられて、笑顔をつくった。

「…で、晴歌?お前、何してる訳?」

真琴は縮こまっている晴歌を片方の眉をあげ、ニヤニヤしながら見る。

晴歌は黙りこくっている。

真琴は溜め息をつく。

「…晴歌、もう授業始まってるよ?」

「マ、マジっ!?」

晴歌は真琴の言葉を聞いてガバッと顔を上げ、タラタラ汗を掻いている。

俺と真琴は顔を合わせて思わず吹き出してしまった。

そんなことも気付かず晴歌は、ヤベェ、どうしよ…と目を泳がせている。

その行動にもまた俺達は笑ってしまった。

「美来達、何で笑ってんだよ?授業、サボったら怒られる…」

やっと俺達が笑ってるのに気付いた晴歌はソワソワしながらそんなことを言う。

こういうことは何故か真面目な晴歌。

今朝なんて、学校行くのが面倒だ

なんて言っていたのに。

笑いすぎて、腹が痛い。

まだ蹴られた腹が痛いというのに。

「…もういっそ、サボっちゃおうぜ」

少し笑いが収まった真琴は涙目になりながら言う。

因みに、俺はまだ笑いが止まらない。

晴歌は心配そうに頭を掻く。

「どうせ美来はこの状態じゃ、動くのは辛いだろうし、別に一時間サボっても、成績に俺達は影響されないし…」

しかも、と真琴が付け足す。

「こうゆうのも、偶にはいいと思うぜ」

真琴はその場で寝そべる。

俺もやっと笑いが収まって、真琴の隣にゆっくり座る。

未だにソワソワしている晴歌に、俺が手招きすると渋々隣に座る。

涙目で見上げた空は、薄い青色で綺麗だった。



その後、一緒に後始末をして教室に戻った晴歌と真琴は案の定、先生に散々叱られていた。

俺は何も言われなかった。

そりゃ、当たり前。

いつも羽村達のせいでサボっているし、バケモン扱いだし。

そんなこんなしているうちに、太陽が西に沈みかけ、生徒は下校を合図する鐘を聞いて、帰り始めていた頃。

俺は授業をサボったため、罰として掃除をやらされていた。

こうゆうことは都合よく押し付けられる。

「美来ぃ~。まだ~」

「…待ってなくていいからな」

俺は箒で床を掃きながら、言う。

晴歌は椅子に座って脚をブラブラしながら頬杖をついている。

「だって、俺もサボったし…」

「なら、手伝え」

「嫌だ。めんどくせぇ」

晴歌は首を横に振る。

俺は少し肩を竦めながらも、せっせっと掃除をする。

真面目なのか、不真面目なのか…。

そんなことを考えて、思わず苦笑してしまった。

「何、笑ってんだよ?」

俺が笑っているのに気付いた晴歌は首を傾げながら問いかけてくる。

「…別に」

「えぇ~。なんだよ、その意味ありげな言い方」

なんだよ、なぁ~と結構気になるのか何かと問い詰めてくる。

特に意味もないわけで、どう答えればいいか困る。

それを笑いながら受け流す。

晴歌とそんなことをしていると、教室の向こうから足音が聞こえてきた。

聞き覚えのある足音に俺はドアの方に視線を向けた。

するとガラッとドアが開き、教室の中にある人が入ってきた。

黒井(くろい)先生…」

「ハラグロじゃん!!」

晴歌が椅子から立ち上がって、黒井先生に駆け寄る。

黒井先生はボサボサの髪を掻きながら苦笑する。

「お願いだから、そのニックネーム、やめてくれない…?」

「だって、腹黒じゃん」

晴歌はそう言って、ニヤニヤと笑う。

「だっていつもニヤニヤしてるし、理科室でいつも変な実験してるし…」

「いや、君が知らないだけで普通の実験をしてるだけだからな?勘違いはよしてくれ」

黒井先生は呆れ果てた表情をする。

晴歌はそんな黒井先生を面白そうに見ている。

「黒井先生。今日は、どうしてこの教室に?」

俺が質問すると、黒井先生は俺に目を向ける。

ちなみに、黒井先生も俺と話せる人の一人。

「あぁ…お前に用があったんだ」

黒井先生は、そう言って俺に近付く。

そして、俺の耳元まで口を近付け、

「悪霊の話だ」

と、囁いた。

俺は息を詰まらせたが、晴歌の方に向いた時はなるべく笑顔に見えるように口を頬の両端に広げた。

「晴歌、悪いんだけど先に帰っといて」

俺がそう言うと、晴歌がこちらを見る。

「なんで…?」

「黒井先生と話すから」

「別に、待ってていいじゃん」

「話が長引きそうだからさ」

「でも…」

「帰って」

俺は晴歌の言葉を遮り、なるべく冷たく言い放った。

晴歌は肩を震わせ、俺をジッと見つめる。

「なんで、美来、そんなに怒って…」

「先に帰って!!」

俺が声を荒げてそう言った後、ハッと我に返る。

パッと顔を上げると、悲しそうに俺を見る晴歌がいた。

「…そんなに怒るなよ」

「っ!!ごめん…そんなつもりじゃ…」

「何が?先に帰るよ」

泥水を吐く様に晴歌がそう言った後、鞄を荒々しく取り、教室から出ていってしまった。

「待っ…」

俺は引き止めようと走ろうとしたが、ある言葉が頭によぎり、その脚を止め、黒井先生の方に振り返る。

「黒井先生…。いえ、黒井 博士(・・)。話は手短くお願いします」

「はーい。了解だよ…じゃあ、話そうか『悪霊』の話を…」

これからがファンタジーチックになって行くと思います…多分。

正直、終わる気がしない!!!

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